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がん化学療法時の口腔粘膜炎に対する専門的口腔ケアの有用性

日本歯科衛生学会雑誌に「 がん化学療法時の口腔粘膜炎に対する専門的 口腔ケア の有用性 」 黒川英雄, 木村ひとみ, 諌山美鈴, 高藤千鶴, 中道敦子 6(2): 18-24, 2012.)が掲載されている。               要旨は「  がん化学療法 における口腔有害事象のうち 口腔粘膜炎の発生率は40% と報告されている. とくに, 口腔粘膜炎による疼痛や摂食・嚥下障害などで栄養状態の低下や免疫能の低下が問題とされている. そこで, 2009年8月から2010年10月までに, がん化学療法前後に専門的口腔ケア依頼のあった39名を対象として. その取り組みと有用性について検討した. 1. がん化学療法開始前の患者に 専門的口腔ケアを行うことにより, PCR値は有意に減少した . 2. 口腔粘膜炎発症後の患者に専門的口腔ケアを行うことにより, PCR値に有意差を認めなかったが, 減少傾向により口腔粘膜炎のグレードの明らかな低下が認められた. 3. 口腔粘膜炎発症後の患者に専門的口腔ケアを行うことにより, 口腔粘膜炎による疼痛が有意に減少し, 疼痛コントロールが可能であった . 以上のことから, がん化学療法患者に専門的口腔ケアを実施することは, 口腔粘膜炎やその疼痛の重篤化の予防とコントロールに寄与することが示唆された. 」と述べている。  粘膜炎を呈した患者へ口腔ケアを実施すると疼痛発生が起こるが、文中では、専門的口腔ケア介入前後における口腔粘膜炎の疼痛の変化をVAS値で判定している。実際、専門的口腔ケア介入前のVAS値が平均4.2±2.3であったのに対し、専門的ロ腔ケア介入後では2.6±2.9と有意に低下し ていた(p=0.0086)と有意に低下していたことを報告している。  文中でも述べられているが、がん治療により口腔粘膜炎を呈し経口摂食困難になるとQOL低下を招く。そのため、口腔粘膜炎を予防し経口摂食意欲・機能を高めることが重要になる。歯科がない病院でも、今後は地元の歯科医師会等を通じ適切な口腔アセスメントから口腔ケアにつなげられればと思う。

口腔アセスメント(ROAG)について

以前、OAGアセスメントについて述べたが、その改良版であるROAGの紹介である。 Andersson P, Hallberg IR, Renvert S.Spec Care Dentist.;22:181-6. 2002に  「 Inter-rater reliability of an oral assessment guide for elderly patients residing in a rehabilitation ward .」が掲載されている。 http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1754-4505.2002.tb00268.x/pdf  要旨は The aim of this study was to test the inter-rater reliability of a revised oral assessment guide (ROAG) for patients residing in a geriatric rehabilitation ward. A consecutive sample of 140 patients was recruited for the study. Oral assessments were performed for 133 newly admitted patients by one registered nurse (RN) during a period of six months. A dental hygienist (DH) carried out 103 oral assessments during the same half-year. For 66 patients, the RN and the DH performed independent assessments. There was an agreement between the RN and the DH in the majority of the independent assessments, except for tongue and teeth/dentures. The percentage agreement exceeded 80 p

言語聴覚士解剖学考察

日大口腔科学 に「 上顎骨ペーパー・クラフトと形態の理解 」(佐竹隆, 今井重孝37: 43-47, 2011. )が掲載されている。 要旨は「上顎骨の形態を理解するための上顎骨ペーパー・クラフトを考案した. ペーパー・クラフトには上顎骨の八つの形質(上顎体(corpus maxillae), 上顎洞(sinus maxillaries), 口蓋突起(processus palatinus), 歯槽突起(processus alveolaris), 前頭突起(processus frontalis), 頬骨突起(processus zygomaticus), 歯槽孔(foramina alveolaria), 上顎洞裂孔(hiatus maxillaries))があり, 身近に立体構造が確認できる. ペーパー・クラフトの有用性と形態を三次元的に理解することについて考えた. 医療系の学生は ヒトの身体を理解する(分かる)必要がある. そのための基礎を作る教科が人体解剖学の講義と実習 である. 学生は人体解剖学の講義を受け, 実習で身体をつぶさに観察し, その形態や構造を理解する.  」と述べている。 私も現在、解剖学実習が始まり感じるとは、「実習」(自分で実施する)と「見学」は大きく違うことである。表層にある神経から一つずつ確認し剖出することで理解の定着につながると感じた。 現在、コ・メディカルでも自分で剖出可能な養成校が増えていると他の文献に掲載されていた。言語聴覚士の業務領域は頭蓋、喉咽頭であり、解剖見学(実習)を実施させていただいても、脳や喉咽頭付近に限られる可能性がある。しかし、現在、言語聴覚士業務における摂食・嚥下リハの割合は高齢化に伴い増加すると思われ、可能であれば言語聴覚士も、喉咽頭の形態のみならず、近隣の大学と提携し顔面領域の神経、血管、筋肉について解剖見学(実習)し理解を深めることが重要と考えられた。 今回の論文はペーパークラフトがあり、ダウンロードして作成することで理解向上に役立つと思われた。