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人工呼吸とモニタリング

呼吸器ケア に「 人工呼吸中のモニタリングと患者の観察 」(浅霧和子, 7(4) : 368-375, 2009)が掲載されている。  パルスオキシオメーター、カプノメーターやグラフィックモニターについて記載されている。 パルスオキシオメーター観察上のポイントとして『SpO2:90%⇔ PaO2:60mmHg(酸素療法開始の基準)』『SpO2:75%⇔ PaO2:40mmHg(混合静脈血の値)』『SpO2:50%⇔ PaO2:27mmHg(組織への障害が出現する)』。  カプノメーターは呼気に含まれる二酸化炭素分圧を測定し, 呼気終末二酸化炭素濃度 (PETCO2)を測定し.PETCO2 は血中炭酸ガス濃度(PaCO2)と強い相関関係があるとい われている。一般的には,PaCO2 よりも0~ 3mmHg 低い値が表示される。 カプノメーターは,パルスオキシメーターよりも人工呼吸管理中の異常を早期に発見でき 、カプノメーターの波形を見ることで患者の呼吸の状態を観察が可能になる。  他にも グラフィックモニターで気道内圧-換気量の波形 が掲載されており分かりやすい内容になっている。  現場では、嚥下機能評価の際、パルスオキシオメーターが使用されているが、人工呼吸下の嚥下障害患者には、様々な指標が出現するため、介入に際は指標の意味をよく理解し見落としをなくする必要がある。

脳卒中後の嚥下障害における咽頭送込みと声門閉鎖

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dysphagia http://www.springer.com/medicine/otorhinolaryngology/journal/455 に、「 Stage Transition and Laryngeal Closure in Poststroke Patientswith Dysphagia 」(Elizabeth Rachel Oommen • Youngsun Kim •Gary McCullough,Volume 26 / 2011)が掲載されている。 この論文はMAがファーストオーサーであり、セカンド、サードオーサーがCCC-SLPなのも興味深い。いずれテーマを見つけて自分も論文執筆したいものである。 Abstract   Timely hyolaryngeal excursion and laryngeal closure are essential for safe transfer of the bolus during the pharyngeal swallow. The temporal measures stage transition duration (STD) and laryngeal closure duration (LCD) represent these physiological events. The purpose of this investigation was to determine whether small changes in bolus consistency and volume affect these temporal measures in poststroke patients who aspirate, poststroke patients who do not aspirate, and nonneurologically impaired control subjects. STD and LCD were obtained by frame-by-frame analysis of the videofluoroscopic examinations of 5 and 10 ml thin and nectar thick liquids. Using a thr

理学療法と摂食嚥下障害

理学療法京都に 「 摂食・嚥下障害と誤嚥性肺炎に対する理学療法アプローチ 」 (神津玲, (39) : 41-48, 2010)が掲載されている。  要旨として、「摂食・嚥下障害における理学療法の意義は、直接練習の効果をいかに高めるか、 安全な直接練習の展開をいかにサポート するかといった付加的、支持的な部分に集約される。 また誤嚥性肺炎を合併した際にもその早期改善を目指した管理にも貢献すべきである。  摂食・嚥下機能を意識した理学療法介入は①嚥下運動の促通・強化、②嚥下運動阻害因子の軽減・除去、③不顕性誤嚥のコントロール、④誤嚥物および貯留する気道分泌物の排出除去に大別でき、適切な適応に基づいて行うことでその効果が期待できる。」と述べられている。  よく、呼吸理学療法アプローチについて記載された内容は多いが、ここでは「誤嚥性肺炎を起こすと理学療法を一定期間中止せざるを得ない状況が生じる」と述べられている。  ここで考えるべきことは、 誤嚥性肺炎はリハビリテーションを停滞させる要因 であるため、嚥下訓練と併せ理学療法士による理学療法アプローチも並行して実施することが摂食嚥下訓練効率化と入院期間の短縮につながり大切であると考える。

災害時の運動療法

糖尿病ケア http://www.medica.co.jp/magazine/subscribe?id=16 に 「災害避難生活での運動療法 理学療法士による緊急災害時の運動療法」 (星野武彦, 朝倉俊成, 5(10) : 997-999, 2008)が掲載されている。  概要として、「災害時の運動指導のポイントは、運動の目的や効果と併せて、災害に直面したときの運動の捉え方について説明しておくことが重要」であり、「 災害に直面したときの生活は、通常の生活よりも体力が必要になることが考えられる 」と述べている。「特に倒壊した家屋からの生活用品の運び出しなどは、通常の糖尿病運動療法における運動量や運動強度よりもはるかに大きい」と述べており、 体力は「にわか運動」では向上しないことを 説明している。  そのため、「 糖尿病運動療法の継続が、災害時に必要な体力をカバーしてくれることも、指導しておくことが大切 」と述べている。  また、これとは反対に一時的な避難所生活を余儀なくされた場合では、「活動量の低下が予想 される」と述べ、からだが動かないことが原因として考えられる疾患に、エコノミー症候群(静脈血 栓塞栓症)や廃用症候群があることを説明している。解決策として、「これらの症候群については、運動不足がもたらす弊害として、日ごろから指導しておくことが重要」と述べている。  災害時における理学療法士の活動は長期活動量低下による廃用症候群予防と考えがちであるが、この論文で述べられているように、日ごろから災害時の運動量低下も想定し運動療法継続・指導も理学療法士の重要な役目であることを再確認することができた。  また、セラピスト全体的には平時からの使用部屋、物品の防災対応、災害を想定したアプローチを常時念頭に置くこともセラピストの役割であると言える。

注意障害とセラピスト

The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine, http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjrmc/-char/ja/ に 「 注意障害におけるdivided attentionの「選択的」障害の症例を通して 」 (豊倉穣, 笹尾ゆう, 48(1) : 68, 2011)が掲載されている。  掲載内容は分割的注意であるdivided attention(DA)障害患者に対し、視覚課題, 聴覚課題を同時に行うdual task(DT)を脳損傷例2例に施行し評価したものである。結果は 2例とも標準注意検査法, WAIS-IIIなどは正常範囲であったが, DTでは低成績を示した。一方, DTが正常の別の1例では, 全く問題なく就労が達成できていた。  著者らは「 認知機能としての「注意」のコンポーネントの中で, 複数の課題や入力情報の操作を同時に行う については臨床現場での評価対象としてあまり着目されていなかった.」と述べている。  ここで考えることは、注意障害患者に対するアプローチでただ、無視・注意不十分側に注意をむけさせるだけでなく、患者がどの様な思考過程をしているかを考えることである。その上で患者自身が自分で注意不足を自覚し、改善するための思考過程を組み立てることと思う。    

AD患者に対する内服ゼリー

雑誌、新薬と臨牀 http://www.iyaku.info/journals/jnrc_latest.html に「 ドネペジル塩酸塩内服ゼリーに関する医師, コ・メディカル, 患者家族のニーズおよび評価 」(羽生春夫, 藤谷順子 59(3) : 349-355, 2010) が掲載されている。   内容は、AD(アルツハイマー病)の薬物療法は,日本ではドネペジル塩酸塩(製品名:アリセプト(R))による進行抑制療法が,現在保険適応を有する唯一の手段である。ドネペジル塩酸塩には,①フィルムコート錠②口腔内崩壊錠および③細粒の3種類の剤形がある。  しかし、与薬困難なAD患者は存在するため、他の与薬と,服薬継続によりドネペジル塩酸塩が有する症状の進行抑制効果を最大限に引き出すことを目的に 内服ゼリー が設計された。と記載されている。  結果は上位から順にメリット:①薬剤の選択性が増える②食事の一環として投与できる③デザート感覚で服用できる。であり、デメリットとして①保管管理が必要②薬剤管理を行うマンパワーが必要③与薬を複数回に分ける必要があるとのことであった。  ADに限らず、高次脳機能障害を呈した患者が自宅復帰する際、薬の自己管理が必要なケースもある。その際、薬管理といった視点だけでなく、特定ゼリーの摂食といった、別な視点からの自己管理も一つの可能性ではないかと思う。  他にも工夫次第で摂食・嚥下障害改善のアプローチとして、メリットにあったデザート感覚で認知症ではなく摂食・嚥下障害を改善する可能性も考えられ、参考になる一論文であったと思う。    

脳卒中に関連した肺炎

雑誌「脳卒中」 http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jstroke/-char/ja/ に「 脳卒中に関連した肺炎 」(前島伸一郎他,52-58,2011)に関する論文が記載されている。筆者らは結論に「経過中の肺炎が予後を悪化させるため、摂食管理には十分な注意が必要である.」と述べている。  実施方法は、嚥下機能評価をJCS0~1桁台の患者にRSSTとMWSTを実施しRSST2回以下/30秒またはMWST3点以下,あるいはその両者の場合に“嚥下スクリーニング異常”としている。 その後異常群に対しVFを実施し、食形態調整を実施している。  また、肺炎発症に関しては入院後72時間以内に肺炎を発症したものを「早期群」とし,72時間以降の発症で,経口摂取を行っていなかった「非経口群」,摂食嚥下療法介入前に経口摂取が開始されていた「未介入摂食群」,摂食嚥下療法介入後に肺炎を発症した「介入摂食群」に分類し,他に4群と肺炎を発症しなかった「肺炎なし群」を加えた5群で比較検討している。  結果は肺炎は504例中91例(1&1%)にみられ、早期群38例,非経口群39例,未介入摂食群5例,介入摂食群9例であり、経過中肺炎を起こさなかった群と肺炎発症群の比較では,年齢神経症候,認知機能,在院日数退院時ADLに差を認めたと述べている。  ここで考えさせられたことはVFを適切に実施していても、肺炎リスクは残存している状況を踏まえ、VF・VEを実施していない病院や施設では肺炎を起こしている割合はもっと多いことが予想できる。  私たち摂食・嚥下リハビリテーションに携わる人は、肺炎リスクを常に考慮する必要がある。特に食形態の変更に際しては、性急な形態向上は避け段階的に食形態を変更することで、訓練・誤嚥リスクしいては肺炎リスクの軽減につながると考えられる。

Age and Sex Differences in Orofacial Strength(年齢・性別による口腔顔面筋力差)

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嚥下関連の学会誌として「dysphagia」(2009.IF1.577)がある。 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 にリンクされているためご存じの先生方も多いと思う。 今回dysphagiaより「 Age and Sex Differences in Orofacial Strength 」(Ben Hanson • Mark T.O’Leary • Christina H. Smith)より読んでみた。 Abstract This study explored age- and sex-related differences in orofacial strength. Healthy adult men ( N  = 88) and women ( N  = 83) participated in the study. Strength measures were obtained using the Iowa Oral Performance Instrument (IOPI). Anterior and posterior tongue elevation strength measures were obtained using a standard method. Tongue protrusion and lateralization, cheek compression, and lip compression measures utilized adaptors allowing the participant to exert pressure against the bulb in different orientations. Lip and cheek strength measures were greater for men than women, but tongue strength did not differ between sex groups. Strong correlations between age and strength were not observed. However, group comparisons revealed lower tongue protrusion and lateral

災害と摂食嚥下障害

この度、東北大地震で被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。  震災と嚥下に関して検索したところ、 第15回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会で発表された、中久木康一らによる「歯科における大規模災害時の摂食・嚥下障害者に対する準備状況」が検索された。 「 災害時に歯科医師が摂食・嚥下障害に対してできる支援としては, 摂食・嚥下機能の判定, 食事指導, 口腔ケア 」があるとした一方で「対応の優先順位の検討が必要」, 「摂食・嚥下障害は歯科のみで対応するものではない」, 「摂食・嚥下機能の判定が可能でも, 食事の提供との連携が必要」といった意見が述べられていた。  災害時の摂食嚥下アプローチとしては、被災者にあった食形態の調整アドバイスが重要と考える。これは、嚥下障害者に食糧が支給されても乾パンのような物では、誤嚥リスクが高いと言える。 摂食・嚥下障害を歯科だけでなく、リハビリテーション職種が関わることで、災害時の誤嚥性肺炎リスクを軽減できるのではと考える。  被災者の摂食嚥下障害軽減のため何かしらの形で協力したいものである。  

セラピストと顔面神経検査2

再び「 耳鼻咽喉科検査マニュアル 」に記載されている。顔面表情の検査について触れたい。 嚥下評価で顔面神経検査を実施する時は、口角からの涎や摂食時の食塊残渣について評価することが多い。以前gross systemとregional systemについて、触れたが、顔全体の評価法であるgross systemを再度確認したいと思う。gross systemは1955年、Botmanらにより提唱された評価法である。 1 0度:顔面表情運動正常 2 1度:軽度麻痺(静止時異常なし。運動時軽い麻痺が出現。閉眼可能) 3 2度:中等度麻痺(静止時には顔面の非対称はなく、会話のとき、笑ったときに顔面の非対称が         目立つ。閉眼可能) 4 3度:静止時にも顔面の非対称があり、表情運動の機能不全は高度である。 5 4度:完全麻痺(顔面の緊張はなく、顔面表情運動の機能もない) 以上の5段階評価である。 現在は、改良版である6段階(House-Brackmann法)で使用されることが多い。 耳鼻科領域では聴神経腫瘍手術後の麻痺評価に使用されることが多いとのことであるが、摂食嚥下評価では、大まかな顔面神経麻痺の有無で使用されていると考えられる。

言語聴覚士と慢性呼吸疾患

「他職種との連携」 日本医事新報 http://www.jmedj.co.jp/index.jsp , (4266) : 45-48, 2006.に医師からみた慢性呼吸疾患アプローチ,「他職種との連携」について記載されている。  ここで重要な概念として 「コンプライアンス」から「アドヒアランス」 への転換が述べられている。 「コンプライアンス」とはどれだけ患者が従順に従っているかであり、「アドヒアランス」とは治療者、患者の相互目標の従順さである。  また、興味深い連携として、在宅機器業者との連携が記載されている。在宅呼吸療法における酸素業者は患者、家族とコミュニケーションをとらなくてはならないと述べられている。言語聴覚士だから酸素業者と関わる機会がないとは言えないため、参考になった。 今回は具体的なアプローチ方法は記載していないが、「アドヒアランス」の言葉を通じ、自分のアプローチを押し付けていないか?また、自分のアプローチを信じて疑ってないか?と見直す機会ができた。

セラピストと感性

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マイセン 展画 セラピストは365日リハビリテーションを実施していたり、休日も研修に出たりと多忙な日々を送っている。そのため、ゆとりの時間がなかなか作れないと思われる。 今日は、特に予定もなかったためサントリー美術館 http://www.suntory.co.jp/sma/ でマイセン磁器展覧会に行ってきた。 マイセンは高級品であるが、今回展覧会に行きなぜ高級品足りえるのか 少し理解できたと思う。 ポイントは「感性」と「信頼」であり、300年の歴史の中で常に感性を磨いてきた職人達がいて、現在のブランドを形成していると思われた。 今回展覧会に行き、感じたことは「感性」を磨くことであり、周囲からの「信頼」を得ることで自分自身のブランドを形成できると思った。

セラピストによる顔面神経検査

顔面神経麻痺のリハビリテーションについて記載がされている。 http://www.zenniti.com/f/b/show/b01/343/zc01/3.html セラピストもリハビリテーション実施にあたり評価を先に実施するが、 顔面神経麻痺の評価法には大きく分けて2つあることが、「 耳鼻咽喉科検査マニュアル 」に 記載されている。 1つは顔面全体の印象を概括的に捉えて麻痺程度を評価する方法(gross system)。 もう一つは顔面をいくつかの単位に分け、個別に評価しその合計で評価する顔面部位別評価法 (regional system)である。 この章でも述べられているが、顔面神経麻痺の評価は主観によるところが大きく、客観的基準はまだ少ないのが現状のようである。 セラピストが評価する際はまだ主観的基準による評価が多いと考えられるため、文献等や実際の臨床で観察力を普段から向上させる努力が必要と考えられる。