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歯科医師国家試験からみる摂食嚥下障害

今年度の歯科医師国家試験も合格発表が終わり本日、言語聴覚士国家試験結果が発表になった。 歯科医師は受験者3321名で合格者2366名。合格率は71.2%であり、 言語聴覚士は受験者2381名で合格者1621名。合格率は68.1%である。 なお、本日発表のあった歯科衛生士は受験者6064名で合格者5832名。合格率は96.2%である。 この言語聴覚士合格者数が今のニーズとマッチしているかは不明だが、昨年の理学療法士国家試験(受験者数11,956,合格者数9,850,合格率82.4%)や作業療法士国家試験(受験者数5,821,合格者数4,637,合格率79.7% )に比べるとやはり少ない印象を受ける。 今後も引き続き言語聴覚士の社会的重要性が認知され、養成校増加につながればと思う。 本題に戻すと、歯科医師国家試験でも摂食・嚥下障害に関する問題は継続して出題されており、しかも解説書によると年々専門的になっているとある。摂食・嚥下障害はチームアプローチであるため、専門職の専門的な知識をできるだけ共有することが重要と言える。 以下は実際に出題された例である。 102回歯科医師国家試験 嚥下機能が障害される頻度が高いのはどれか。 2つ選べ。 a  唾石症 b  脳血管障害 c  三叉神経痛 d  筋筋膜疼痛症候群 e  筋委縮性側索硬化症 100回歯科医師国家試験 70歳の男性。脳血管障害の後遺症で鼻音化が認められる。構音の改善に有効なのはどれか。 a  栓塞子 b  舌接触補助床 c  スピーチエイド d  軟口蓋拳上装置 e  スタビリゼーションスプリント ※スタビリゼーションスプリントとは、マウスピースのようなもので咬合面を覆い、均等な咬合接触を付与することで下顎の安静を得るものである。 高齢化の進展に伴い、今後も歯科従事者にとり摂食・嚥下障害に関する知識は必須と思われた。  

失語症デイサービスのアウトカム評価

自分の住んでいる地域で失語症専門デイサービス開設の案内があったが、失語症デイサービスの具体的な内容については、知らなかったため調べてみた。 コミュニケーション障害学 に「 失語症 デイサービス のアウトカム評価 」 (阪野雄一, 中村光, 28: 159-165, 2011.)が掲載されている。 要旨は「失語症者専用デイサービス「ことのは」に通所している利用者の各種検査値の経時的変化から, 失語症デイサービスの効果について検討した. 対象は「ことのは」を1年以上継続して利用した失語症者14名. 初回利用時, およびその後は1年に1回, 言語機能(SLTAで測定), コミュニケーション機能(CADLおよびCADL質問紙で測定), 介護負担感(COM-Bで測定)に関する評価を実施した. その結果, 1年後の再検査が実施できた14名の中では, 利用開始時に比べSLTAは11名, CADLは12名, CADL質問紙は11名で成績が向上した. 2年後の再検査が実施できた8名の中では, 利用開始時に比べSLTAは7名, CADLは8名, CADL質問紙は6名で成績が向上した. 1年目から2年目の間でも, SLTAは6名, CADLは4名で成績が向上した. 失語症デイサービス は, 慢性期失語症者の言語・コミュニケーション機能の回復にとって有効な環境 の一つであると考えた. 」と述べている。   ここのデイサービスの特徴は毎週日曜日(週1回)に失語症リハビリを実施している点である。 早期退院の傾向から退院後のリハビリの充実が求められるが、デイサービスに所属している言語聴覚士はまだ少ないと考えられる。(もともとセラピスト自体も少ない可能性) このことから、週に曜日を設定し失語症リハビリを実施する内容はとても有効だと思われた。 また、デイサービスに通所している摂食・嚥下障害残存利用者についても今後、月1回からでも、医師、歯科医師が出張し摂食・嚥下障害の評価(VE、咳テスト等)をして摂食・嚥下のアドバイスをすることでデイサービス利用者の生活向上につながると考えられた。

胸部大動脈手術は嚥下障害リスクを高める

心臓リハビリテーションに「 なぜ開心術後に嚥下障害は起こりやすいのか ?―嚥下障害の要因分析とその改善度の検討―」( 玉田雅美, 小林平, 後藤優佳,  他, 18: 79-82, 2013.)が掲載されている。 要旨は「開心術後の嚥下障害発症要因と, 言語聴覚士(以下, ST)介入前後で嚥下障害の改善について検討した. 【対象】2009年4月~2011年1月, 開心術施行した105例. 平均年齢71.5±10.7歳, 男性66例, 緊急手術31例(30%). 【方法】藤島グレード(以下, Gr)において8以下の嚥下障害を認めた者を嚥下障害あり群, その他を嚥下障害なし群とし, 比較検討を行った. また嚥下障害あり群の初回評価時と訓練終了時のGrについて比較検討を行った. 【結果】嚥下障害あり群は20例(19%). 手術時間・挿管時間・ICU滞在日数が嚥下障害あり群で有意に長く, 脳血管疾患既往・胸部大動脈手術が嚥下障害あり群で有意に多かった. 嚥下障害あり群の初回評価時のGrは中央値4, 訓練終了後中央値10で有意に改善していた(p<0.0001). 【考察】開心術後の嚥下障害のリスク因子と改善度について検討した. 長期挿管などの影響で術後一時的に嚥下障害を呈することがあるが, 術直後よりSTが介入し, 嚥下訓練を進めていくことで, 安全に経口摂取を進めることができ, 合併症予防につながった. 」と述べている。 本文中では、開心術者を嚥下障害有無で2群間に分けて分析している。それによれば、2群間で特に顕著に有意差があったのは「胸部大動脈手術」と「挿管時間」であった。 手術時間が長引くほど、挿管時間が延長し結果として廃用による嚥下機能低下をもたらすことが予想できる。また、挿管による影響等で気息性嗄声を呈し、誤嚥につながる例も以前みられた。 以前も述べたが、心臓手術終了後の嚥下障害者は経口摂取が可能レベルにあっても、意欲の低下により経口摂取が進まない場合がある。そのため、経管栄養が長期化してしまい嚥下障害になる例もある。 そのため、適切な時期に適切な食事を検討するといったマネジメント能力が心臓疾患患者の摂食・嚥下リハビリに必要だと思われた。

CGA簡易評価「Dr.SUPERMAN」

Geriatric Medicine に「 医療現場における高齢者総合的機能評価(CGA)簡易版「 Dr . SUPERMAN 」の有用性の検討 」(岩本俊彦, 清水聰一郎, 金高秀和, 小山俊一, 櫻井博文, 馬原孝彦, 羽生春夫 50: 1070-1075, 2012.)が掲載されている 要旨は、「長寿高齢社会を迎えたわが国の医療現場は高齢者で溢れ返っている, 一般に, 高齢者の多くは老化や疾病が様々な形で組み合わされた個体である. その結果, 単に臓器・器官の障害ばかりではなく, 生活機能に支障を来している者も少なくない. しかし, このような生活機能の障害が従来の医療で深く認識されることはなかったといっても過言ではない. また, 自立した生活が困難になりつつあるか, 既に困難に陥っているにもかかわらず, 家族や社会から気づかれないまま生活に耐えている高齢者も増加している. このように複雑多岐にわたる問題が高齢者を悩まし, QOLを著しく損ねているのが現状である. したがって, この現状に少しでも早く気づき, 高齢者を救済しようとする意識や行動がわが国の医療現場に求められる. この点で高齢者総合的機能評価( Comprehensive Geriatric Assessment:CGA )は不可欠である. 」と述べられている。 筆者らは、その簡易版として「 Dr . SUPERMAN 」を開発している。 それぞれ「Dr.」は「医師による身体診察」       「S:sensation」は知覚       「U:understanding of speech(communication)」は言語理解       「PER」は服薬状況(pharlnacy)および介護者(key person),       「M」は老年症候群である、精神(mentality),運動(mobility),排尿(micturition)       「A」はADL(activities of daily living)       「N」は栄養(nutrition)       である。 以前から、高齢者のADL評価としてFIMやBIは知っていたが、CGAについては名前のみであった。CGA評価をみると、高齢

韓国での高齢者嚥下障害者におけるVF検査の有効性

  Ann Rehabil Medに 「 Use of Videofluoroscopic Swallowing Study in Patients with Aspiration Pneumonia 」(Park S, Lee JY, Jung H, Koh SE, Lee IS, Yoo KH, Lee SA, Lee J. 36:785-90, 2012)が掲載されている。 Abstruct Objective To investigate the clinical characteristics of dysphagic elderly Korean patients diagnosed with aspiration pneumonia as well as to examine the necessity of performing a videofluoroscopic swallowing study (VFSS) in order to confirm the presence of dysphagia in such patients. Method The medical records of dysphagic elderly Korean subjects diagnosed with aspiration pneumonia were retrospectively reviewed for demographic and clinical characteristics as well as for VFSS findings. Results In total, medical records of 105 elderly patients (81 men and 24 women) were reviewed in this study. Of the 105 patients, 82.9% (n=87) were admitted via the emergency department, and 41.0% (n=43) were confined to a bed. Eighty percent (n=84) of the 105 patients were diagnosed with brain disor

嚥下運動における運動学習の重要性

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Dysphagiaに「 Human Hyolaryngeal Movements Show Adaptive Motor Learning During Swallowing 」(Humbert IA, Christopherson H, Lokhande A, German R, Gonzalez-Fernandez M, Celnik P. 2012)が掲載されている。 Abstruct The hyoid bone and larynx elevate to protect the airway during swallowing. However, it is unknown whether hyolaryngeal movements during swallowing can adjust and adapt to predict the presence of a persistent perturbation in a feed-forward manner (adaptive motor learning). We investigated adaptive motor learning in nine healthy adults. Electrical stimulation was administered to the anterior neck to reduce hyolaryngeal elevation, requiring more strength to swallow during the perturbation period of this study. We assessed peak hyoid bone and laryngeal movements using videofluoroscopy across thirty-five 5-ml water swallows. Evidence of adaptive motor learning of hyolaryngeal movements was found when (1) participants showed systematic gradual increases in elevation against the force of electri

頭頚部がん患者におけるステント留置による嚥下機能改善

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Dysphagiaに「 Radiological Image-Guided Placement of Covered Niti-S Stent for Palliation of Dysphagia in Patients with Cervical Esophageal Cancer 」( Takeshi Fujita, Masahiro Tanabe, Kensaku Shimizu, Etsushi Iida, 2013)が掲載されている。   Abstract The aim of this study was to evaluate the clinical effectiveness of covered Niti-S stent placement under multidetector CT and fluoroscopy guidance for the palliation of dysphagia in patients with cervical esophageal cancer. Under radiological imaging guidance using axial and sagittal CT scans, and fluoroscopy, Niti-S esophageal stents were placed in ten consecutive patients with complete obstruction caused by cervical esophageal cancer (9 men and 1 woman; age range = 54–79 years; mean age = 68.1 years) between February 2010 and December 2011. The procedure time and technical success rate were evaluated. Swallowing improvement was assessed by the following items: ability to eat and/or swallow (graded as follows: 3 = ability to eat normal

二軸嚥下加速度計使用による嚥下機能計測

Noninvasive Detection of Thin-Liquid Aspiration Using Dual-Axis Swallowing Accelerometry 以前、ニューロリハ医のメモリーノートで紹介されていた文献です。  ずっと、文献読む機会もなかったのですが、ようやく春休みになり読んでみました。 加速度計は10kHzでサンプリングし、バンドパスフィルタは0.1Hzから3kHzとあります。 読んでいて興味深かったのは、頸部聴診法はexperienced speech-language pathologists (62 % sensitivity, 66 % specificity)とあり、プロのSTでも感度、特異度は60%台と述べられていることでした。現在、加速度計を使用した嚥下評価があることを知って勉強になりました。これから国内での発表も検索していきます。 Abstract Aspiration (the entry of foreign contents into the upper airway) is a serious concern for individuals with dysphagia and can lead to pneumonia. However, overt signs of aspiration, such as cough, are not always present, making noninstrumental diagnosis challenging. Valid, reliable tools for detecting aspiration during clinical screening and assessment are needed. In this study we investigated the validity of a noninvasive accelerometry signal-processing classifier for detecting aspiration. Dual-axis cervical accelerometry signals were collected from 40 adults on thin-liquid swa