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8月, 2015の投稿を表示しています

身体活動・運動と循環器疾患

心臓 に「 身体活動・運動と循環器疾患 」 (福島教照, 井上茂47(1): 9-16, 2015.)が掲載されている。   要旨は「近年のわが国における身体活動・運動をめぐる動向としては, 2013年に身体活動に関する指針が改定されたこと, 健康日本21 (第二次) が策定され, 国民の身体活動の新目標値が示されたことがあげられる. 本稿では, 身体活動・運動が総死亡および循環器疾患へ及ぼす効果を解説し, 国内外の身体活動の現状を確認し, 生活習慣病・循環器疾患予防に向けた今後の身体活動推進対策について述べる. また, 最後に身体活動をめぐる最近の話題として, 座位行動 (Sedentary behavior) に関する情報を提供する. 「身体活動・運動の効果」身体活動・運動が循環器疾患や癌などの非感染性慢性疾患 (Noncommunicable disease ; NCD) の発症リスクおよび総死亡率を低下させることは, 多くの疫学研究により実証されている. 米国身体活動諮問委員会が実施した大規模レビューの最終的な結論では, 活動的な生活習慣 (週150分以上, 中強度以上の身体活動) を実施する者は心血管疾患の罹患率, 死亡率が20~30%程度低いとされている. 」と述べられている。    今回、関心を持った文章に座位行動(Sedentary behavior)がある。特に、筆者らが述べている、運動療法等以外の時間をずっと座位で過ごしていれば、全体の運動量は不足になるということについては、その通りだと思う。  では、立位の時間をどのように確保するかが課題であり、病院であれば、リハビリ以外の時間に立位姿勢の機会を持つというのが望ましいがマンパワーの問題等が考えられる。  今後は座位活動を少しでも短くするための取り組みが報告されると思われ、注目していきたいと考える。    

要介護と残存歯に関する疫学研究

日本老年医学会雑誌 に「 要介護と残存歯に関する疫学研究 」(馬場 みちえ, 畝 博 42 . 3 p 353-359 2005.)が掲載されている。 要旨は、「対象は福岡県Y町の住民で, 介護保険の要介護度4と5に認定されている高齢者62人を要介護者群とした. 要介護者群と性・年齢 (±1歳以内) をマッチさせて, 1:1の割合で要介護認定を受けていない高齢者から無作為に62人を抽出し対照者群とした. 調査方法は, 保健師が面接方式で聞き取り調査を行った. 調査内容は要介護状態になった原因疾患, 治療歴, 生活習慣, 要介護期間, 残存歯数であった. 残存歯数については保健師が高齢者の口腔内観察を行い確認した. 平均残存歯数は, 要介護者群が3.7本, 対照者群が9.1本で有意差がみられた. 多変量解析の結果, 要介護に対するオッズ比は, 残存歯数が20本以上の者を reference とした時, 10~19本の者では7.03 (95%信頼区間1.15~42.85), 1~9本の者では15.61 (2.89~84.26), 0本の者では15.11 (2.84~80.44) であった. 年齢階級別に要介護者群と対照者群の残存歯数の差をみると, 要介護者群の方が対照者群より, 65~69歳では約14本, 70~79歳では約12本少なく有意差がみられた. しかし, 80歳以上では有意な差はみられなかった. 結論として, これらの結果から, 残存歯数の少ない者では要介護になるリスクが高くなることが示唆された. また, 要介護になるリスクは中壮年期の比較的若い時期に歯牙喪失を起こし, 残存歯数が減少した者に顕著であると考えられた. 」と述べられている。    私は、要介護度が高くなれば残存歯も減ると漫然と考えていたが、この論文では残存歯が少なくなるほど要介護になるリスクが高まると述べており、介護予防の観点から考えさせられた論文である。   この論文を読んで考えたことは、現在、8020運動が展開されているが、若いうちから歯牙欠損をさせない工夫をすることで、要介護者の減少につながる可能性があるということである。  もしかしたら若いうちからどの程度歯科通院しているかで、将来の要介護も変化するかもしれないと思われた。  

整理・連携・報告が求められる嚥下障害のリハビリテーション外来診療

The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine に「 整理・連携・報告が求められる 嚥下 障害のリハビリテーション外来診療 」( 藤谷 順子 51: 187-190, 2014.)が掲載されている。 要旨は、「リハビリテーション(以下, リハ)外来診療のあるべきすがたを, 嚥下障害のリハ外来を通して論じることになった. 嚥下障害の外来診療には, 入院症例の退院後の継続診療の場合や, 外来で初診する場合がある. 今回はパネルディスカッションのテーマにより近い, リハ科専門医としてコンサルテーションを受けている場合を中心に述べる. 嚥下障害のある症例が在宅生活を送る場合の医師の仕事として, 主治医となる, 薬を処方する, 介護保険主治医意見書を書く, 訪問看護ステーションへの指示を書く, 嚥下機能の評価と検査を行う, 嚥下訓練を提供する(自分の施設の療法士に処方をする), 嚥下訓練以外の訓練(理学療法や作業療法)を提供する(自分の施設の療法士に処方をする), 緊急入院を受ける, などの種類の仕事がある. 」と述べている。  文中で述べられているが、外来患者、家族が直接訓練を希望していても、本人の能力、社会環境、マンパワーの問題等ですぐに直接訓練を実施できるとは限らない。また、重要なのが主治医との連携である。リハ科が主治医ということは少ないので、主治医の意向を確認する必要がある。  もし、病院が嚥下外来を開設しているのであれば、関係者の時間の都合のつく時に通院時確認していただければと思うが、すべての病院が嚥下外来を開設しているとは限らない。  今後も外来の嚥下障害者が増加することが予想されることを考えると自分の関係する地域での嚥下外来設置の有無についてリサーチし連携をとることも重要だと考えられる。  いろいろな制約があるとは思われるが、以前も述べた通り、嚥下評価、リハビリ専門の診療所の増加が望まれる。

日本理学療法士学会、栄養・嚥下理学療法部門増加について

 少し前の話になるが、 日本理学療法士学会 で「栄養・嚥下理学療法部門」が増加になった。 他に増加になったものとして 1)ウィメンズヘルス・メンズ ヘルス理学療法部門 2)学校保健・特別支援教育理学療法部門 3)がん理学療法部門 4)動物に対する理学療法部門 がある。  これらの部門は今後の医療において重要な役割を果たすと考えられ、先駆的と思われた。 特に「栄養・嚥下理学療法部門」は栄養のみならず、嚥下をうたっているところで興味深い。 現在、嚥下評価、リハビリについては言語聴覚士が担っているところが大きいと思われるが、 今後は理学療法士も嚥下評価、リハビリを主体的に行っていくことが期待される。  言語聴覚士協会で専門分野を検索すると認定言語聴覚士制度があり、 1)摂食・嚥下障害領域 2)失語・高次脳機能障害領域 3)言語発達障害領域 4)聴覚障害領域 がある。  これらは言語聴覚士の基本となる分野であり、まずは基本の中核を担う人材を育成しようという考えと思われる。  私見であるが、もし、理学療法士学会のように隣接領域から拡げていくのであれば、「栄養・呼吸・歯科」領域から拡げていければと考えられた。