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11月, 2011の投稿を表示しています

生理学を学習すること

今日、書店で新刊コーナーに「 マンガでわかる基礎生理学 」(著者:田中 越郎 監修 こやま けいこ 作画 ビーコム 制作 定価:2520円 ISBN 978-4-274-06871-3)が置いてあった。 手にとってみるとマンガを読みながら、生理学の基礎が分かる内容になっていた。私も最初、生理学が「シンプル生理学」を読んでも理解できなかったため、「図解入門 よくわかる生理学の基本としくみ」から入った覚えがある。しかし、本書に書かれている通り、用語の丸暗記では本当に理解しているとはいえない。 重ねて述べると理解と暗記は車の両輪であり、一方のみではoutputに支障をきたす可能性があると言える。特に生理学は医学関連職種に就けば一生関わる学問であるため、しっかり勉強する必要がある。もし、生理学にとっつきにくさを感じたらマンガや図解入門から学習すると学習意欲向上につながると思う。 私自身もこれから再度学生になるが、生理学を再学習しせめて「標準生理学」レベルの知識は身につけたい。

脳機能と脳画像2

昨日、再度「脳画像の見方」について昭和大学医学部神経内科石原健司先生の講演会に参加した。普段、脳卒中によらない摂食嚥下障害を担当することが多いため、知識の再確認で大変勉強になった。 日本保健科学学会誌 に「 MRIで 淡蒼球 ・黒質に異常信号を認め高圧酸素療法が効奏した 一酸化炭素中毒 の1例 」(吉澤寿 9(4): 268-275, 2007. )が掲載されている。 要旨は「MRIの拡散強調画像で両側淡蒼球, 黒質に高信号を認め, 高圧酸素療法(hyperbaric oxygen therapy:以下HBO)が効奏した CO中毒 の1例を報告した. 症例は25歳男性で, 飲酒後灯油ストーブ前で就寝し, 翌日倒れているところを発見された. HBO目的で入院となり, 第1病日の頭部MRI検査において 両側淡蒼球に拡散強調画像で高信号 を認めた. 第13病日の頭部MRI検査では両側黒質にも拡散強調画像で高信号を認めた. 計19回のHBO を施行し, 経過良好にて第34病日退院となった. CO中毒の中枢神経病変は, 淡蒼球, 黒質, 大脳白質など脳内の鉄の分布と関連している. CO中毒の脳組織傷害は, COの還元作用でフェリチンに蓄えられた非ヘム鉄が遊離イオン化し, Femton反応およびHaber-Weiss反応によってH2O2から.OHが生成され, oligodendrocyteやミエリン鞘の傷害, 神経細胞死を引き起こしている可能性がある. 」と述べている。 CO中毒の主な症状はパーキンソン症状であり、文献中でも述べられている。また、意識レベルの浮動性も大きく、パーキンソン症状と合わせ、リハビリテーションも遅々として進まないことがある。常に症状の変化と脳画像の変化を確認しアプローチを検討していくことが大切と思う。 講演終了後、この文献を読んだ際、淡蒼球の場所がすぐ確認できた。常に知識の再確認は大事であると考える。

咳感受性検査について

日本胸部臨床 に「 咳感受性検査 」(藤村政樹 67(増刊): 5070-5074, 2008.)が掲載されている。 要旨は「咳感受性は, 気道過敏性や気管支平滑筋トーヌスとは相互作用のない独立した気道の反応性であり, 女性の方が男性よりも4倍亢進している. また, 咳感受性検査は, 慢性咳嗽の原因疾患の診断と治療効果の判定に有用である.  「はじめに」乾性咳嗽の発生機序として, 少なくとも次の三つが考えられる. 第一は, 気道の咳感受性亢進に基づく咳嗽 であり, アトピー咳嗽, 胃食道逆流症, アンギオテンシン変換酵素阻害薬による咳嗽など, 多くの原因の乾性咳嗽の機序となる. 第二は, 気管支平滑筋の収縮がトリガーとなって発生する乾性咳嗽 であり, 咳喘息における咳嗽発生の機序となる. 第三は, 咳受容体の熱刺激による乾性咳嗽 であり, マイコプラズマ感染症や百日咳が該当する可能性がある. 咳感受性測定は, 咳嗽発症の生理学的病態として咳感受性が亢進しているか否かを評価する方法である. 咳感受性に基づいて分類した咳嗽の原因疾患を表に示した. 咳感受性測定は, これらの疾患の鑑別診断に有用である. 表に示した咳感受性亢進による咳嗽は, 治療によって咳嗽が軽快すると咳感受性も正常化するため, 咳感受性測定は咳嗽の臨床経過を定量的に評価するためにも有用である. 」と述べている。  文中で興味深かったのは、カプサイシン誘発咳嗽とクエン酸誘発咳嗽の発生機序が違うと述べられている。現在嚥下機能評価で使用される評価はクエン酸を使用したものが報告されている。今後、クエン酸使用による咳テストと、カプサイシンを使用した咳テストを比較し嚥下機能評価に違いはあるのか、誤嚥性肺炎リスクの感度・特異度の違い等の文献を調べる必要があると思われた。

「嚥下医学」創刊

日本嚥下医学会HP に学会誌「嚥下医学」創刊案内が掲示されている。日本嚥下医学会は耳鼻科医師が多いが、会長に藤島一郎先生を迎えますます充実した学会になると思われる。 この学会誌「嚥下医学」は中山書店よりの販売となり医師だけでなく、コメディカルを含む一般の方々にも手に取りやすい方式になる。  このように学会誌が書店に並ぶことは画期的であり、学会の認知度を上げるだけでなく、学会で取り上げている疾患について一般の方々にも理解が深まると思われる。今後他の学会も続く可能性に期待したい。

姿勢による咳閾値の比較検討

呼吸 に「 健常者の坐位と仰臥位での カプサイシン咳感受性試験 による咳閾値の比較検討 」 (渡邉直人, 福田健 26(6): 575-580, 2007. )が掲載されている。 要旨は「気道過敏性は体位により異なることが報告されている. 今回筆者らはそのことに着眼し, 健常者31名を対象に咳閾値を坐位と仰臥位で求め, 体位により咳閾値に差異があるか否かについて検討した.  方法:坐位にてカプサイシン咳感受性試験を行い, 咳閾値を求めた. その2週間以内に仰臥位にて同様に咳閾値を求め比較検討した. また各々の体位において, カプサイシン吸入前後のPEF, FEV1.0, FVC, V50, V25を測定し比較検討も行った.   結果:坐位における咳閾値の平均は16.71μM, 仰臥位における平均は13.99μMで有意差は認められなかった. また坐位ではカプサイシン吸入後にPEF, FEV1.0は変動しなかったが, 仰臥位では有意に低下していた. 坐位と仰臥位での比較では, カプサイシン吸入後に仰臥位でPEF, FEV1.0の有意な低下を認めた. V50, V25は仰臥位において前値より既に有意な低下を認めていた. 以上より, カプサイシン咳閾値は体位により変動しないが, 仰臥位により気道収縮の影響を受けやすいことが示唆された. 」と述べている。  著者らは文中で仰臥位のみでも、末梢気道収縮をきたす可能性を述べている。誤嚥性肺炎予防で安静時ギャッジアップで対応するが、これはGERDや不顕性誤嚥のリスクを減らす目的である。 今後、仰臥位が末梢気道収縮を起こすことが分かれば、不顕性誤嚥予防と末梢気道収縮予防に一番適したベッド角度が出てくるのではと思う。

パーキンソン病患者の口腔期障害

The International Journal of Language & Communication Disordersに「 Drooling in Parkinson's disease: a novel speech and language therapy intervention .」 (Marks L, Turner K, O'Sullivan J, Deighton B, Lees A. 2001;36 Suppl:282-7.)が掲載されている。   Abstract Drooling and difficulty swallowing saliva are commonly reported in people with Parkinson's disease (PD). Drooling in PD is the result of swallowing difficulties rather than excessive saliva production. Currently, there is little research into the effectiveness of treatments to reduce drooling. The aims of the study were to develop objective measures of saliva volume and drooling for PD and to assess the efficacy of two therapeutic strategies to control drooling, i.e. specific speech and language therapy (SLT) including a portable metronome brooch to cue swallowing and injections of botulinum toxin into both parotid glands to reduce the amount of saliva produced. This paper will describe the assessments used, including the mea

パーキンソン病の嚥下、呼吸機能評価

Journal of Neurology に「 Non-invasive assessment of swallowing and respiration in Parkinson’s disease 」(Lorraine L. Pinnington Khulood A. Muhiddin Richard E. EllisE. Diane Playford(2000) 247 : 773–777)が掲載されている。 Abstract Oro-pharyngeal dysphagia is well recognised but often underestimated in people with Parkinson's disease. Asymptomatic patients may fail to receive timely advice or therapy, thus placing them at risk. The aim of this study was to determine whether subclinical abnormalities in swallowing and discrete changes in function such as those produced by prompting can be detected by non-invasive methods. We examined 12 people with idiopathic Parkinson's disease and 14 elderly comparison subjects. Five components of respiratory synchronisation and swallowing efficiency were monitored using the Exeter Dysphagia Assessment Technique. Ten feeding trials were administered under standard quiet conditions. The patients were then restudied using verbal prompts when the spoon was

食道期の嚥下障害

日本気管食道科学会会報に「 食道期嚥下障害に対する外科治療の問題点 」(川田研郎, 太田俊介, 岡田卓也, 星野明弘, 宮脇豊, 鈴木友宜, Jirawat Swangsri, 中島康晃, 西蔭徹郎, 永井鑑, 河野辰幸 62(2): 95-96, 2011.) 要旨は「 食道期嚥下障害の基質的疾患 としては 食道悪性腫瘍, 良性腫瘍, 逆流性食道炎, 憩室, web, 異物 などがあり, それぞれの病態により治療法は異なる. 良性疾患の場合は内科的治療にて改善が見込めるものも少なくないが, 嚥下障害をきたす食道悪性腫瘍の多くは手術を必要 とする. 主に食道癌外科治療の問題点につき考察する. 切除不能食道癌へは根治的化学放射線治療後のサルベージ手術や, 食道バイパス術をいかに安全に行うかが課題であるが, 切除可能食道癌へも, 手術侵襲の大きさから, 患者背景によっては根治的化学放射線治療が選択されることもあり, 手術の安全性はもちろんのこと, QOLを考慮した術式の選択と術後の嚥下障害 にも配慮が必要である. 根治的化学放射線治療後の局所再発やリンパ節再発へもなるべく侵襲が軽い治療が許容されるようになり, サルベージESDや転移リンパ節のみの切除など, 患者背景や希望を考慮して治療を選択し, 良好な予後を得ている症例も経験する. 」と述べている。  食道期嚥下障害の影響として、メンデルソン症候群やGERDによる誤嚥性肺炎がある。特にGERDによる嚥下障害はスクリーニング上からは分かりにくい。そのため、誤嚥性肺炎患者にスクリーニングを実施し嚥下反射惹起遅延が誤嚥性肺炎の原因と考えていたら、VF上で食道蠕動運動低下によるGERDを認めることがある。そのため、誤嚥性肺炎患者がいたらGERDの可能性を疑い必ずギャッジアップ対応を実施することで、GERDによる誤嚥性肺炎を予防することができる。