投稿

2月, 2012の投稿を表示しています

睡眠中の嚥下と呼吸

音声言語医学に「 睡眠中の嚥下と呼吸 」(佐藤 公則, 梅野 博仁, 千年 俊一, 中島 格52 (2011).132-140)が掲載されている。  要旨は「正常成人では睡眠中の嚥下の頻度は減少していた.その頻度は睡眠stageに関係しており, 睡眠が深くなるに従い嚥下の頻度が低くなっていた .また長時間嚥下が行われていなかった.このことから睡眠中は咽頭食道のクリアランスが低下していることが示唆された.しかし,若年成人では嚥下後吸気で再開する頻度は低く,このことは気道防御に有利であると考えられた. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者でも睡眠中の嚥下の頻度は減少していたが,88%の嚥下はrespiratory electroencephalographic arousalとともに起こることが特徴であった.70%の嚥下は嚥下後,呼吸は吸気で再開しており嚥下に関連した呼吸のパターンは特異的であった. CPAP療法は睡眠時の無呼吸・低呼吸と睡眠構築を改善させるだけではなく,睡眠中の嚥下と嚥下に関連した呼吸動態も改善させていた .」と述べている。  睡眠と誤嚥性肺炎の関連は文献で多く報告されており、摂食中の誤嚥も大切であるが非摂食時(特に夜間)の誤嚥予防はより重要である。そのため、就寝前の口腔ケアは徹底して実施する必要がある。睡眠中誤嚥とVEによる咽頭内貯留の関連について、まだ文献検索をしていないが、当然咽頭内貯留が多ければ、睡眠中の誤嚥riskは高いと思われる。しかし、SA患者で咽頭内貯留がない場合でも誤嚥性肺炎を起こす場合もあり、今後関連を調べていきたい。

JSPEN2012に参加して

昨日、今日と神戸で行われていたJSPENに参加した。初めて行く学会であったが、とにかく人の多さに驚いた。聞くと9000人以上参加とのことであった。 関連ということで、今回は開催中講演もあったNSTの第一人者である東口高志先生の記事である。 MEDICAMENT NEWS に「 低栄養 」 ( 東口高志  (2041): 1-3, 2011. )が掲載されている。 要旨は「わが国の少子高齢化は, 世界の歴史の中でもこれまでに類をみない速度で進行しており, 高齢者医療を早急に確立することがわが国の将来の医療や経済を左右する大きな鍵とされている. 一般に高齢者は潜在的な栄養障害を有しており, 若年者や壮年者と同様の医療体制では対応できないことは異論のないところであろう. そこで高齢者に対しては栄養管理を重視した医療体制の確立が必要である. そのような社会情勢を反映して, 新たな診療報酬体系として2006年には『栄養管理実施加算:12点/人/日』が, 2010年には『栄養サポートチーム加算:200点/人/週』が相次いで収載された. いずれも栄養管理に関する診療報酬であるが, 世界に先んじての試みであり, 少子高齢化の進む多くの国々から大きな注目を集めている. 一般に栄養管理はすべての疾患治療の上で共通する基本的医療の1つである . 一見当たり前のことのようであるが, これまで栄養管理は医療の外枠に置かれ, 栄養管理が治療であるとの認識は極めて薄かった. 」と述べている。       読んでみると、低栄養について分かりやすく書かれている。以前文献で、「自分の専門を相手に分かりやすく説明できることが重要」といった内容をみたが、先生の文献や講演内容も専門分野を分かりやすく説明してあり、大変参考になった。 他者に分かりやすく説明することの難しさ…。今後自分が発表する機会があったら常に留意すべき事項と言える。   

高齢者の口腔衛生と肺炎リスク

イメージ
Clinical Infectious Diseases に「 Geriatric oral health and pneumonia risk .」(Terpenning M、2005 Jun 15;40(12):1807-10)が掲載されている。以下のサイトより。 http://cid.oxfordjournals.org/content/40/12/1807.long 高齢者の口腔状態と肺炎リスクについて述べている。特に 不十分な口腔ケア と 嚥下障害 は肺炎リスクが高くそれぞれ hazard ratio, 1.55; P = .03]とhazard ratio, 1.61; P = .043 になっている。 誤嚥性肺炎治療、リハビリテーションに携わる人であれば、知られている内容であるがなぜ口腔ケアが誤嚥性肺炎予防によいか根拠を説明することは大切である。本邦の口腔ケア研究成果も大変有名であるが、多くの根拠論文に触れておくことは院内研究等で他者に説明する際重要と考えられた。                                                 Figure 1 Cases of fever and pneumonia among dentate patients and edentate patients who did or did not receive oral care. 口腔ケアをすると特に発熱発症数が減っています。                        

嚥下性肺炎患者の栄養選択

急性呼吸不全による人工呼吸患者の栄養管理ガイドラインに掲載されている論文です。 Nutritionに「 Dose enteral nutrition compared to parenteral nutrition result in better outcomes in critically ill adult patients? A systematic review of the literature 」(Gramlich L,Kichian K,Pinilla J,et al.2004.843-848.)が掲載されている。論文は下記サイトより。 http://www.criticalcarenutrition.com/docs/pubs/gramlich.pdf すでに読まれた方も多いと思われるが、enteral nutrition(EN)とparenteral nutrition (PN)を比較したSystematic Reviewである。 文中では、PNで高血糖発生率が向上することが述べられている。また、結論として感染性合併症の 点からも早期からENの方がよいとしている。 しかし、嚥下性肺炎患者に対するENにはGERDによる肺炎再発リスクがあり、一概にENだけと言えない状況がある。そのため、EN、PNの選択は患者の状態やマンパワーといった環境により選択されると思われる。 他には、文中にある「 Nutritional support is part of the standard of care for the critically ill adult patient .」は栄養の重要性を述べており、嚥下性肺炎リハビリテーションに携わるセラピストは留意する必要があると思われた。

咽頭反射再考

Archives of physical medicine and rehabilitation に「 Dysphagia: predicting laryngeal penetration . ( Linden P, Siebens AA.1983 Jun;64(6):281-4 . )が掲載されている。 要旨は「 Fifteen patients with pharyngeal stage dysphagia were studied clinically and by motion fluoroscopy. Eleven patients demonstrated laryngeal penetration during swallowing. There was high incidence of impaired pharyngeal gag and wet-hoarse voice quality among this group. Other observations were found to correlate poorly with penetration. Cough was an unreliable indicator of laryngeal penetration. Penetration was most likely when liquids were swallowed and least likely when semisolids were swallowed. Motion fluoroscopy of swallowing was necessary for detecting penetration reliably, identifying that dysphagia depends, in part, on bolus qualities, and planning a feeding approach consistent with remaining swallowing functions. 」である。 1983 年に発表された文献で、嚥下障害について咽頭反射消失と湿性嗄声が関連あることが報告されている。咽頭反射については、以前紹介文献内で嚥下障害と関連あるとも関連ないとも報告されていることが

摂食機能療法の意義

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATIONに「 オーバービュー 」(馬場尊20(2): 114-120, 2011. )が掲載されている。 要旨は「 摂食機能療法が診療報酬に新設されたのは1994年であった. 筆者が研修医を修了して2年目, 摂食・嚥下リハビリテーション(以下リハ)をようやく知り始めた頃であった. この頃, いまだ言語療法士は国家資格化されておらず(1999年に国家資格), リハの診療報酬請求を, 複雑なもの(40分, 言語は30分), 単純なもの(15分)の2つの区分のみで行っていた時代であった. このようなときに忽然と摂食機能療法が登場した. しかも, 医科のみならず歯科にもであった . このような控えめな記載で, これを行う職種, 内容は明記されていなかった. この摂食機能療法が新設された背景は知らないが, 翌年の1995年は日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が研究会として始動した年であり, 摂食・嚥下リハの萌芽期の尖刃を切った出来事であったのだと思う. 」と述べている。 ここで大事なのは、文中でもあるように、「 摂食・嚥下障害についてあまり知らないものが,漫然と食事介助をして摂食機能療法を行ったと算定することは不可能ではない.しかし,このようなことは許されるものではない 」ことである。実際一人の患者に対しSTが脳血管等疾患で、病棟看護師が摂食機能療法で算定している病院もあると思われる。その際、大切なのは、一人一人の摂食嚥下障害に対する意識と思われる。意識化を病院に根付かせることは大変と思うが、必ず取り組むべき課題であると言える。                 

誤嚥性肺炎後の摂食機能療法

 JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATIONに「 誤嚥性肺炎 後の摂食機能療法 」(寺本信嗣20(2): 121-126, 2011. )が掲載されている。 内容は 「Q1 誤嚥性肺炎の基礎疾患とはどんなものがあるか?」 誤嚥を生ずる脳梗塞等の中枢神経疾患や筋疾患と, 肺内の感染防御機構が低下している呼吸器疾患が重要になる.  「Q2 誤嚥性肺炎の実態とは?」 嚥下障害患者において口腔・咽頭の細菌を微量誤嚥して肺に感染症(肺炎)を生ずるものである.  「Q3 誤嚥性肺炎の摂食機能療法とは?」 口腔ケアにより口腔内細菌量を減少 させたうえで, 嚥下の間接訓練と直接訓練を行う.  「Q4 誤嚥性肺炎の摂食機能療法の評価のポイントは?」 摂食機能療法の評価は, 実践があって意義を有する. 患者の可能な内容を把握しながら嚥下訓練を先に進める. 「Q5 摂食開始の基準は?」 機能評価を行いながら, 水分から始めてステップアップする. 水飲み試験, 簡易嚥下誘発試験が開始の目安として役立つ. 「Q6 肺理学療法の意義は?」 肺理学療法は, 肺固有の感染防御能を高め, 肺機能を向上 し, 肺炎の予防に寄与する.」と述べられている。 繰り返し述べられているが、一度の誤嚥がすぐ、誤嚥性肺炎につながる訳でなく、自然免疫能の有無により発生が変化する。ということは、肺内の防御機能を高めるアプローチも必要になると考えられる。アプローチする側として、医師による薬剤を使用した肺炎改善とともに、歯科医療関係者による口腔ケアを中心とした、micro aspiration予防に努めることが重要と思われた。                  

誤嚥性肺炎予防における漢方・代替医療

 Geriatric Medicineに「 誤嚥性肺炎 予防における漢方・代替医療 」(海老原孝枝49(6): 635-638, 2011.)が掲載されている。              要旨は「漢方薬の 半夏厚朴湯 は高齢者の嚥下機能を改善し, 高齢者の誤嚥性肺炎を予防 する可能性がある. また, 黒コショウの匂い刺激によるアロマセラピーも嚥下反射を改善するので, 高齢者の誤嚥性肺炎を予防する可能性がある. さらに, 温度感受性受容体を刺激することも嚥下反射を改善するので, これらを組み合わせることにより, かなり効率よく高齢者の誤嚥性肺炎を予防する可能性がある.」と述べている。 半夏厚朴湯は嚥下障害関連の成書によく掲載されている薬品であり、嚥下障害に改善があることで知られている。今回の文献中にもプラセボ群との比較研究で肺炎発症率が半分に改善されたことが報告されている。また、誤嚥性肺炎患者に対する禁食中の対応から経口摂食時までのプロトコールが図3に示されている。 それぞれのステージによる改善効果は研究により示されているが、一連の流れによる改善効果について機会があれば実践、アシストしていきたいと思う。

病院内口腔ケア

看護技術 2012年1月号に「 口腔アセスメントガイドの活用と実践 」特集が組まれている。主に「 Eilers口腔アセスメント 」を活用し、アセスメントスコアによる口腔ケアの実践を報告している。 先日、看護師と入院時にこのアセスメントを活用し口腔ケアの徹底を図れないか相談したところ、「各領域のスコア2レベルであれば対応可能ではないか」とのことであった。本誌にあるカード型プロトコールは具体的方法が記載されており、例えばSTがOAGを行いスコア2領域に対しカードを渡すことで口腔ケアの徹底が図れるのではないかと考えられた。 口腔は医科歯科連携領域であるが、病院内に歯科がある所は限られており、まずはリハビリテーションと看護から連携を強め、実践し誤嚥性肺炎予防を徹底していくことが大切と思われた。

誤嚥性肺炎対応

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATIONに「 誤嚥性 肺炎 を起こしたら 」(羽田康司20(2): 159-163, 2011.)が掲載されている。 要旨は「 嚥下障害が見え隠れする患者が発熱すると, 誤嚥性肺炎の診断のもと直ちに禁食とされ抗生剤治療を開始されるのが一般的であると思う. 確かに入院患者に生じる発熱の原因として誤嚥性肺炎は尿路感染症と並んで多い. 特に高齢者では肺炎が重篤化し難治となることも珍しくないので, 不幸な転帰を防ぐためにはその診断と治療は過剰にならざるを得ない. しかし, いたずらな 禁飲食は低栄養による免疫機能の低下, 蛋白異化による筋萎縮, 褥瘡の形成や悪化の誘因となるだけでなく, 肺炎自体の治癒を妨げる. それゆえ, 誤嚥性肺炎に対する対応は肺炎自体に対する検査や治療だけでなく, 並行して「今後の水分・栄養補給をどのように行うのが一番よいのか 」ということを早期から症例ごとに考えなければならない.」と述べている。 臨床現場では、ゼリーで誤嚥したから禁食ということを聞くが、ゼリーレベルで誤嚥があるならば、不顕性誤嚥riskが大きいと思われる。実際、24時間中の摂食時間は1日totalでみても2時間あるかどうかであり、1回に2時間以上摂食時間を要するならば摂食意欲や介助方法の問題が大きいと考える。 また、嚥下訓練としてゼリーの使用が考えられるが、ゼリーに含まれているKcalは少量であり、あくまで訓練目的である。 一つの考えであるが、禁食患者に嚥下訓練目的でゼリーを使用する際、エンジョイゼリー(エンジョイゼリーは量が多いので1/3程度使用。それでも100Kcal)といった高カロリーゼリーを使用し訓練(ただ、高カロリーゼリーは 粘性や付着性、浸透圧等々、 誤嚥時リスクがあるため疾患、嚥下動態に留意) することも嚥下訓練と栄養改善を図る一つの方法と思われた。

PEG後の早期死亡因子

日本消化器病学会雑誌 に「 経皮内視鏡的胃瘻造設術後の早期死亡とその危険因子に関する検討 」(横浜吏郎, 青島優106(9): 1313-1320, 2009.)が掲載されている。 要旨は「経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)は既に確立された手技といえるが, その施行には危険をともない, 時に死亡例を経験する. われわれは術後早期死亡の危険因子を検討するため, これまで当院でPEGを施行した302例を解析した. 患者群は高齢化し, 一般全身状態の低下, るいそう, 低栄養傾向を認めた. 術後30日以内の早期死亡を7例(2.3%)認め, そのうち1例は造設にともなう合併症(誤嚥性肺炎)が原因であった. ロジスティック回帰分析の結果, 血中クレアチニン高値, 虚血性心疾患の既往および血中アルブミン低値が早期死亡の独立した危険因子 とされた. 心・腎機能の低下した症例, 重篤な栄養失調や消耗が存在する症例では, PEGの適応を慎重に判断する必要がある. 」と述べている。 候補因子の血液所見としてWBC、Hb、Alb、TP、BUN 、 Cr、CRP等を挙げており、術後早期死亡の危険因子として最終的に①高い血中クレアチニン値②虚血性心疾患の既往③低い血中アルブミン値と報告している。 ここから考えると心疾患イベントにより急性期リハビリテーションを必要とする患者は②③を合併する可能性が高く、PEGによっても栄養改善効果が乏しい可能性がある。そのため、PEG造設後も主治医やNSTと連携しリハビリテーション内容を慎重に検討する必要があると考えられた。