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老化に伴う嚥下障害の評価と予防

アンチ・エイジング医学 に 「 老化に伴う嚥下障害の評価と予防 」(二藤隆春, 山岨達也7(2): 202-207, 2011)が掲載されている。 要旨は「嚥下とは食物を口腔から胃まで移送する動作であり, 多くの筋や神経が関与し, 精巧なメカニズムにより遂行されている. その運動様式から, 随意運動による口腔期, 反射運動による咽頭期, 蠕動運動による食道期の3期に分類されている. 加齢変化により嚥下機能は低下するが, 特に口腔期から咽頭期の障害では低栄養や窒息, 誤嚥性肺炎など, 生命の危機に陥る問題が生じうるため重要である. 常に疾患別死亡原因の上位を占める肺炎は, 高齢者においてはそのほとんどが誤嚥性肺炎である. また, 米飯や餅による窒息事故も絶えることがない. 高齢者の嚥下障害に対応するためには, その病態を理解し, 正しく機能評価を行う必要がある.」と述べている よく大脳基底核障害で産生されるドーパミンが低下すると嚥下反射・咳反射の低下が文献上で示されているが、実際に私が担当する摂食・嚥下リハビリは脳血管以外疾患が多い。ここから考えられることとして文中でもあるように原疾患が肺炎でも無症候性の脳梗塞が多数いるのではと思われる。 前も述べたが、嚥下反射・咳反射の閾値を低下させるためにネブライザーを使用し希釈したカプサイシンやクエン酸を持続的に噴霧することを検討したいと考えている。単純に咳反射・嚥下反射改善= 摂食・嚥下機能改善ではないが、関連しているのではと思われる。

医学研究論文と情報リテラシー

薬学図書館に「 医学研究論文における標準スタイル, 情報提示構造, そして英語化を巡る諸問題 」(内藤 永56(1): 3-8, 2011. )が掲載されている。            要旨は「情報技術革命によりインターネットを通じて大量の情報を入手できるようになった. 情報が氾濫する中, 重要な情報をいかにやり取りするかはどのような分野でも重要な課題である. ここでは, 医学研究論文を取り上げ, IMRADと呼ばれる執筆スタイルが標準化されている様子を概観し, 情報提示構造が工夫されている様子を考察する. さらに, 日本語と英語の言語学的相違, 特に主語の役割の相違が英語化の際に問題を引き起こすことを指摘する. つまるところ, どの情報社会においても, 情報の受け手を深慮しつつ情報提供するかが重要となる.」と述べている。 医学に限らず、現代社会で情報リテラシーを高めることは重要であり、必須と言える。これは、文中でも述べているが、現代社会は玉石混交で氾濫する情報の中から必要な情報を受け取ることが非常に難しく、取捨選択できる能力を自分で磨かなくてはいけないからである。 現代社会は情報収集ツールも非常に増え、ボタン一つで情報が自動的に入手できるが、かえって必要な情報が少ないため、多くの不要な情報に埋もれてしまう可能性が考えられる。そのため、アンテナは最低限にしぼるのも必要な情報を得る一つの方法と思われた。

高齢者の嚥下障害に対する理学療法

理学療法 に「 高齢者の嚥下障害に対する理学療法 」 (新屋順子28(9): 1136 -1143 2011)が掲載されている。 要旨は「嚥下機能は, 加齢に加え, 併存疾患, 使用薬物などからさまざまな影響を受けやすく, 健常高齢者でも摂食嚥下場面で違和感を訴える場合があり, 日常からの観察が重要である. 嚥下障害を有する症例に対するリハビリテーションでは, 嚥下機能向上のための介入のみならず, 身体機能改善や環境調整など総合的な介入 が必要である. 誤嚥性肺炎を発症した症例は低栄養, 体重減少がみられることが多いため, 離床や運動療法を進める際には栄養状態にも注意する必要がある.」と述べている。 文中に摂食・嚥下リハビリテーションチームの中での理学療法士の役割として 、1)姿勢管理・ポジショニングでの介入2)誤嚥性肺炎予防での呼吸理学療法による介入3)ADL低下予防を目的とした離:床,運動機能維持のための介入4)頚部および体幹の関節可動域確保5)口腔内の保清,観察とロ腔へのアプローチ が挙げられている。 特に摂食時の姿勢は重要であり、急性期では食事をベッド上で摂食することが多い。その場合、電動ベッドの折り曲がる位置が身長や姿勢と適合していないと傾いた状態で摂食していることがある。 また、ベッドの過度な足部屈曲は腹圧上昇を誘発し食欲減退につながる可能性がある。 そのため、ベッドの機能で骨盤のすべりを予防するのではなく、アンカーサポートを活用し滑りを予防することは必要と考えられた。病院によっては、理学療法士が摂食姿勢をみる余裕のないところもあるため、言語聴覚士もシーティングから誤嚥性肺炎を予防する意識をもつことも重要と言える。

摂食・嚥下リハビリテーションと発熱

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATIONに「 摂食・嚥下リハビリテーションにおける発熱とその対応 」(重松孝, 藤島一郎, 片桐伯真, 大野友久, 北条京子, 前田広士 19(11): 1099-1103, 2010.)が掲載されている。要旨は「摂食・嚥下リハビリテーション(以下嚥下リハ)では発熱がしばしば問題となり, 嚥下リハのゴールを左右する阻害因子となることもある. 介入中に発熱を認めた場合には, その原因検索とともにリハビリテーション(以下リハ)への影響を考慮したうえでの訓練内容の検討が必要となる. 嚥下障害は, 食塊運搬機能のみならず, 喉頭内異物排除機能を有し, 気道防御をするため, 嚥下障害により呼吸器感染症をきたす. しかし, 重症の嚥下障害のみが呼吸器感染症を繰り返すとは限らない . 実際には 嚥下障害患者は誤嚥以外にも意識障害や低栄養や脱水等のさまざまな問題を有し , 一般的に全身状態不良例が多く, 呼吸器感染症以外にも発熱原因は多岐にわたる. 嚥下リハ介入時にしっかり嚥下機能評価を行ったにもかかわらず, 摂食訓練介入中に発熱をきたし訓練中止や摂食訓練を断念する症例に多く遭遇する. 」と述べられている。 嚥下リハビリテーション中に発熱すると、多くは誤嚥によるものと考えられ、禁食対応になることが多い。しかし、禁食中したにも関わらず、発熱を認めることも多い。そのため、嚥下リハ中はSAを常に疑い、唾液誤嚥の影響を減少させる必要がある。そのためにまず第一選択として口腔ケアと姿勢調整が挙げられると考える。私自身、非リハビリ時の環境設定が大事と考え周囲と協力することでSA予防に努めてきた。周囲の協力を得るためには、SAに対する理解が重要であり、これからも自己学習、周囲への啓発を行っていきたい。

Rehabilitation for Swallowing Disorders after Surgical Procedure for Head and Neck Cancer

日本気管食道科学会会報 に「 頭頸部 癌 術後嚥下障害の リハビリテーション 」( 藤本保志, 中島務62(5): 494-500, 2011. )が掲載されている。要旨は「頭頸部癌手術後の嚥下障害に対するリハビリテーションにおいては, 身体機能のみならず活動制限や参加制約に対しても取り組むことが重要である. このような多面的な取り組みのためには医師単独でなく, 言語聴覚士, 看護師らとのチームアプローチが望まれる. 機能障害は切除された部位が担当した機能から予測されるが, 予測される機能予後に基づいて術前から訓練計画を立てる. 手術前からのリハビリテーションは訓練効果をあげるのみでなく, 精神的ケアにも役立つ. 手術直後は誤嚥予防, 肺炎予防が中心となるが, 創治癒後には積極的に訓練を開始する. 訓練は基礎的訓練にひきつづき段階的摂食訓練を加えていくが, その指導においては適切な機能評価(病態診断)に基づいて, 病態に応じた訓練法の選択や, 摂取可能食品群の理解が必要 である. さらに, 代償不可能と判断される場合には喉頭挙上術や輪状咽頭筋切除術, 披裂軟骨内転術などの手術治療も考慮する. 」と述べている。 手術前からのがんリハビリテーションはADL低下や廃用症候群の予防に役立つ。特に嚥下障害は時間の経過とともに誤嚥性肺炎を引き起こすriskとなるため、手術前から摂食嚥下リハビリテーションを実施することが重要と言える。また、文中で手術前からの嚥下スクリーニンについて述べられているが、新設されたがんリハビリテーション算定に私自身積極的に取り組む姿勢が必要と思われた。

急性期非脳神経疾患に対する言語聴覚士の役割

臨牀と研究に「 非脳神経疾患緊急入院症例の嚥下障害に対する 言語療法士 の早期介入の有用性 」(末廣剛敏, 齋藤学, 黒坂升一, 村田慎一, 井上徹英, 山田宏明, 丹生竜太郎88(6): 749-750, 2011.)が掲載されている。 要旨は「当院の診療圏である北九州市八幡東区は高齢者の多い地区で, 平成20年における65歳以上の割合は北九州市の平均24.8%を大きく上回る31.0%である(全国平均22.1%). また北九州市は平成7年以降政令指定都市で最も75歳以上の高齢者の割合の多い都市であり続けており, 高齢者のみの世帯も20.2%と全国平均の15.7% に比べ非常に多くなっている. 高齢者は緊急入院が多いだけでなく重篤化しやすく嚥下障害を来たす症例も少なくない. 当科では嚥下障害が疑われる症例には言語療法士(ST)が介入し経口摂取の可否を判断し嚥下リハビリを行っている. 緊急入院症例における嚥下障害の現状について検討した.」と述べている。 私自身、急性期非脳神経疾患 を担当することが多いが、ST介入指示の多くは、誤嚥性肺炎・肺炎によるものが多い。そのため約8割近くは嚥下障害を担当しており、高次脳機能介入は2割あるかないかである。そのため、これまで述べたとおりアプローチは「嚥下障害」「栄養」「誤嚥性肺炎」を常に関連づけ実践する必要がある。嚥下障害への早期介入は重要であり、介入の遅れが入院期間の長期化につながることを病院全体で認識し協力体制をとることが必要と思われる。

栄養管理とリハビリテーション

The Japanese Journal of Rehabilitation Medicineに「 栄養管理とリハビリテーションについて 」( 稲川利光 : 5176-5176, 2010.)が掲載されている。  要旨は「【目的】当院は稼働病床数606床の急性期の総合病院である.今回,当りハ科に依頼された患者の入院中の栄養状態とリハの効果などについて報告する.【対象・方法】2008年4月~2009年3月までの間にリハを行った(1)脳血管障害283例,(2)整形外科疾患198例,(3)廃用症候群665例の3群を対象とし,各群におけるリハ介入時とリハ終了時(退院時)での血清アルブミン(ALB)の推移, ADL(Bethel index:BI)の変化,転帰などについて調査した.【結果】リハ介入時と退院時とで比較すると,ALB:3.5 mg/dl以下の患者の割合は(1)で51%から59%に,(2)で57%から84%に,(3)で72%から85%になり,3群とも入院中に低栄養となる患者が増加したが,B.1の平均値は(1)で36から66に,(2)で29から85に,(3)で43から63になり,3群ともADLは改善した.このような状況において, ALB値が向上する患者ではBIの伸びはより顕著 であった.嚥下障害を有する患者の割合は(1)で29%,(2)で1%,(3)で17%であり, 嚥下障害を有する患者ではALB値は低い状態で推移し,BIの伸びは悪く,入院期間は長期化した .自宅復帰率は(1)で51%,(2)で82%,(3)で59%であった.【考察】(1),(2),(3)群ともに栄養状態が改善している患者でADLの改善がより高かったこと,嚥下障害の有無は栄養状態やADLの変化,入院期間などに影響することなどから,リハ対象患者には積極的な栄養管理が必要と思われた.また,低栄養かっ低いADLで退院する患者が多いことから,栄養管理とADLの維持は病院と地域との連携のもとで行われるべき課題だと思われた.」とある。  嚥下障害の影響について述べられているが、嚥下障害は誤嚥性肺炎を誘発する要因であり、誤嚥性肺炎を呈することで、入院の長期化につながると考えられる。また、ALB停滞の原因として嚥下障害で入院していると食事は嚥下食になり、栄養量が増加しない(嚥下食は量の割にKcalが少ない)。その

リハビリテーション栄養と嚥下障害

先週、第1回 日本リハビリテーション栄養研究会に参加した。 リハビリテーション栄養研究会 はFacebookに登録することで入会できる斬新な研究会である。 会長は若林秀隆先生であり、先生の文献検索をしてみた。 Geriatric Medicine に「 摂食・嚥下障害の リハビリテーション栄養 の進め方 」 (若林秀隆48(12): 1677-1681, 2010. )が掲載されている。 要旨は「非経口栄養患者が少量でも経口摂取を併用できればQOLが向上するので, すべての患者に食べるチャンスを作ることが, 非経口栄養のマネジメントの原則である. その際, 経口摂取にはこだわるが, 経口摂取のみにはこだわらない . 摂食・嚥下機能はスクリーニングテストや5つの期で評価する. 誤嚥性肺炎は嚥下筋のサルコペニアと関連している. サルコペニアは狭義では加齢に伴う筋肉量の低下, 広義ではすべての原因による筋肉量と筋力の低下となる. 広義の原因には, 加齢, 活動(廃用, 禁食), 栄養(飢餓), 疾患(侵襲, 悪液質, 原疾患) がある. 誤嚥性肺炎ではすべての原因を認めることが多いため, リハビリテーション栄養の考え方が有用である.」と述べている。 重要なのは文献中で出てくる、「誤嚥性肺炎の場合、「加齢」、「活動」、「栄養」、「疾患」すべてに影響を受ける」ことであり、包括的なアプローチが必要になる。この場合、一つの職種で全てを改善することは困難なため、チーム連携が求められる。今後もリハビリテーション栄養を勉強し、嚥下障害患者における包括的アプローチの橋渡しをしていきたい。