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誤嚥と誤嚥性肺炎について考える

日本外科感染症学会雑誌 に「 誤嚥と誤嚥性肺炎について考える 」(大下慎一郎, 志馬伸朗  13(3): 185-191, 2016.)が掲載されている。 要旨は「本邦における肺炎の死亡者数は年々増加しており, 現在, 悪性新生物, 心疾患に続き, 死亡原因の第3位を占める. 肺炎のうち, 咽喉頭部や胃内の物質を下気道へ吸入することによって発症する肺炎を, 誤嚥性肺炎とよぶ. 誤嚥性肺炎には, 大きく分けて, (1)口腔・咽頭内容物の誤嚥による誤嚥性肺炎, (2)胃食道逆流物の誤嚥による化学性肺炎の2種類がある. 誤嚥性肺炎は発見が遅れることが多く, また再発・再燃を繰り返すことも多いため, 耐性化・難治化を惹起しやすい. 従来の認識と異なり, 誤嚥性肺炎の起炎菌 は嫌気性菌のみではなく, グラム陰性桿菌が大部分を占める ようになっている. 誤嚥性肺炎では治療のみならず予防も重要であるため, アンギオテンシン変換酵素阻害剤による誤嚥予防を含め, 頭位挙上・口腔ケア・適切な鎮静・制酸薬・深部静脈血栓予防・栄養状態改善・リハビリなど, 包括的な全身管理が重要である.」と述べている。 本文では、高齢者における誤嚥性肺炎リスクに関するシステマティックレビューでは, ①高齢 ②男性 ③慢性肺疾患 ④嚥下障害 ⑤糖尿病 ⑥認知症 ⑦口腔内の不衛生 ⑧栄養不良 ⑨パーキンソン病 ⑩抗精神病薬・プロトンポンプ阻害剤の使用 ⑪ACE阻害剤の未使用 等があると誤嚥性肺炎にかかりやすいとある。この中で摂食嚥下リハビリテーションによる介入ができるのは主に④と⑦であると考える。 他はリハビリというより、薬による治療の範囲であるため、治療担当医師との連携が重要になる。 ④は言語聴覚士、⑦は歯科が介入すれば、より効果が期待でき誤嚥性肺炎治療促進につながると思われた。

ネーザルハイフローの口腔加湿の有効性について

ICUとCCU に「 ネーザルハイフローの口腔加湿の有効性について 」(新福留理惠, 篠崎正博 39(4): 251-254, 2015.)が掲載されている。 要旨は「ネーザルハイフローとNPPV・呼吸器, 中濃度マスク・カヌラ装着前後での□腔内水分量の比較およびROAGスケールでの比較を行った. □腔内水分量は, NHFとNPPV, 呼吸器, 中濃度マスク, カヌラのそれぞれの間で有意に高かった. しかしながら, 口腔内環境の改善には有意差が認められなかった. NHFは他の酸素デバイスと比較し, 口腔内水分量が増加し口腔ケアに有効であることを示唆した. 」と述べている。  今回の論文では、NHF(Nasal High Flow)はNPPV、呼吸器、中濃度マスク、カヌラよりも口腔内水分量は有意であったが、ROAGでは有意差を認めなかったとのことであった。  口腔内の水分量がある程度保たれているのであれば、ROAG全体では有意差がなかったにもしても、項目ごとにみれば何かしらの差がある可能性も考えられる。  現在、ベッドサイドで口腔ケアを実施する機会があるため、NHF、他の呼吸器を装着している方の口腔内の違いについて意識していきたいと思う。

第109回歯科医師国家試験復習

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ようやく歯科医師国家試験が終了した。 受験した感想としては、考える問題が多く、難しかったと思われた。 合否発表(3月18日)まで時間があるため、少し今回の問題を復習しようと考えた。 下の写真は今回の問題で使用されたものである(D-20)。 「矢印のチューブが破損したときに考えられるものはどれか」が問われている。 a 換気不全 b 胃液の排出 c 吸入酸素濃度の低下  d 麻酔ガス濃度の上昇 e 口腔内分泌物の気管内への侵入 とあった。答えはa、eであるが、要はカフ圧が低い場合どうなるかということを聞いている。 昨年は、カフの留置位置が問われており、カフについての問題が続いている。 となると、来年あたりは、カフ圧が強すぎるとどうなる(反回神経圧迫による嗄声を誘発)とか、サイドチューブの役割(カフ上部の分泌物等の吸引)とか聞かれる可能性もある。 また、今年は気管切開の切開線の位置が問われたりと、音声障害に関する知識が段々増えている印象を受けた。

嚥下機能と体力関連の検討

嚥下医学 に「 嚥下機能と体力関連の検討 」 (西山耕一郎, 杉本良介, 戎本浩史, 大田隆之, 酒井昭博, 永井浩巳, 粉川将治, 廣瀬裕介, 河合敏, 足立徹也, 大上研二, 折舘伸彦, 飯田政弘, 廣瀬肇 3(1): 67-74, 2014.)が掲載されている。 要旨は「嚥下機能は全身状態に大きく左右される. 嚥下機能が低下してくると誤嚥を生じ, 誤嚥を繰り返して肺炎になる. 嚥下機能と呼吸機能と体力と肺炎との関連性について検討した. 西山耳鼻咽喉科医院を嚥下障害にて受診した62例を誤嚥あり群と誤嚥なし群に分類し, 呼吸機能として一回呼気流量と, 体力の指標として握力を測定し, 肺炎症状等を調べた. 誤嚥あり例は33例, 誤嚥なし例は29例であった. 誤嚥あり群の一回呼気流量は132.4±66.7 L/minで, 誤嚥なし群の一回呼気流量は218.1±73.8 L/minで, 誤嚥あり群は有意に(p<0.05)少なかった. 誤嚥あり群の握力は15.6±5.4 kgであり, 誤嚥なし群の握力は21.9±7.2 kgで, 誤嚥あり群は有意に(p<0.05)低かった. 誤嚥あり群のCRP値は, 誤嚥なし群に比べて有意に高かった. 末梢白血球数, BMI値, 血清アルブミン値は, 誤嚥あり群と誤嚥なし群の有意差は認められなかった. 誤嚥あり群は, 痰咳の症状例, 36.7度以上の微熱例, 杖歩行例が多かった. 以上の結果より 嚥下機能 は, 呼吸機能, 体力(握力), 炎症症状と関係 することが推察された. 」と述べている。 本文中で「嚥下性肺炎発症のリスクは,誤嚥の有無だけでなく咳の最大呼気流速(peak cough flow:PCF)も関係し,咳噺やハフィングは術後の気道内分泌物の喀出と肺合併症を予防するために非常に重要」とあり、嚥下障害により誤嚥したとしても、喀出能力を高めることで、誤嚥性肺炎を防止できると考えることができる。エビデンスに乏しい摂食嚥下リハビリテーションであるが、嚥下障害を直接改善するためにアプローチする直接、間接訓練と誤嚥性肺炎を予防するために行う訓練を普段の摂食嚥下リハビリテーションに組み合わせて行うことが、エビデンス構築に役立つのではないかと思われた。...

高齢者誤嚥性肺炎予防の新戦略

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATIONに「 高齢者 誤嚥性肺炎 予防の新戦略 」(大類孝 22(1): 78-81, 2013.)が掲載されている。 要旨は「抗菌薬の開発が目覚ましい現在でも肺炎による入院および死亡者数は増加傾向にあり, これまでわが国の疾患別死亡の第4位を占めてきたが, 厚生労働省の2011年度の報告によれば, ついに脳血管障害を抜いて第3位になり, まさに現代病の様相を呈している. また, 2010年度の人口動態統計によれば, 肺炎による死亡者のなかで65歳以上の高齢者が占める割合は96.6%と極めて高い. 本稿では, 初めに 高齢者肺炎の大部分を占める誤嚥性肺炎の発症の現状について明らかにし , 次にその発症機序を解説し, 最後にその予防策についてこれまでの筆者らのエビデンスを紹介しながら解説したい. 「誤嚥性肺炎の概念」 近年, 外来で対処できる肺炎の患者数は横ばい状態にあるが, 入院を要する肺炎の患者数は年々増加傾向にある. 諸家の報告により異なるが, 高齢者の肺炎のおよそ70%以上が誤嚥性肺炎 であるといわれている.」 文中に「65歳以上の健常人の約2割に大脳基底核近傍のロイコアライオーシス等の脳虚血所見が認められる」と述べられている。 大脳基底核障害が嚥下機能を低下させ、誤嚥性肺炎誘発につながることはこれまでも多く述べられている。では脳血管障害発症以前に大脳基底核の機能低下、もしくは大脳基底核を活性化させる方法はないのであろうか。これから検討していきたいと考える。

リハビリ病棟における呼吸障害と呼吸リハの必要性

リハビリナース に「 リハビリ病棟における 呼吸 障害と 呼吸 リハの必要性 」 (高橋博達  6(2): 120-125, 2013. )が掲載されている。                                                                             要旨は、「リハビリテーション(以下, リハビリ)病棟に入院となる症例について, 起こり得る呼吸障害の種類と呼吸リハビリの適応について考えてみます. 本稿では, 脳血管障害・脊髄損傷・廃用症候群の症例にしばしば見られる呼吸障害について解説します. 「脳血管障害などによる片麻痺例の呼吸障害」1 片麻痺例にも呼吸障害があるのか? 脳血管障害 などによる片麻痺例(以下, 片麻痺例)では, 上下肢の運動麻痺や感覚障害は生じますが, 呼吸 に直接かかわ る横隔膜や体幹筋の麻痺は生じません . このため, 後述の頚髄損傷のような明確な呼吸障害を生じる根拠は乏しいと思われますが, 実際には 嚥下障害 ・片麻痺・高次脳機能障害・廃用症候群などの影響によって, 種々の 呼吸障害を呈します . 片麻痺例のリハビリ進行に影響を与える呼吸関連の合併症のなかから, (1)嚥下障害 (2)誤嚥性肺炎 (3)呼吸機能障害について解説し...

睡眠時無呼吸と嚥下機能の新たな関連

日本臨床生理学会雑誌 に「 睡眠時無呼吸と 嚥下 機能の新たな関連 」(山口泰弘, 石井正紀, 寺本信嗣 43(2): 71-76, 2013. )が掲載されている。 要旨は「 呼吸調節 と 嚥下活動 の神経支配は, 延髄網様体 において密接に関わりあっている. また, 上気道の筋群への神経活動の低下は, 睡眠時無呼吸を増悪させる因子の一つである. 我々の検討では, 嚥下誘発試験における 嚥下反射の潜時 が, 睡眠時無呼吸症候群の患者において有意に延長 していた. そのほか, 睡眠時無呼吸症候群の患者において, 咽頭粘膜の知覚の低下も報告されている. さらに, 無呼吸に伴う強い胸腔内の陰圧は, 消化液の逆流を増強し, この逆流が不顕性誤嚥を助長する可能性がある. 我々の研究では, 経管栄養を受ける要介護高齢者では, 無呼吸低呼吸指数の増加と3ヵ月間の発熱日数の増加や呼吸器感染症の発症に有意な相関がみられた. 睡眠時無呼吸症候群 は, 心血管疾患への影響のみならず, 上気道防御システムにも影響を与え, 要介護高齢者での肺炎リスクの増加をもたらす 可能性が示唆される.」と述べている。 高齢者は老年症候群にみられるように複数のリスク因子を持ち容易に、廃用症候群に陥る可能性が大きい。今回は嚥下機能低下を睡眠時無呼吸の観点からリサーチした論文である。興味深かったのは睡眠時無呼吸によりGARDが誘発されることであり、高齢者の夜間睡眠状況も確認する必要があると思われた。 嚥下機能低下に関連する因子は多く、一つの原因だけでは述べることは難しいが、メカニズムを一つ一つ解析していくことで、誤嚥性肺炎予防につながっていくと考えられた。                                   ...

呼吸困難および嚥下困難になった前縦靭帯骨化症の1例

整形外科と災害外科 に「 呼吸困難および 嚥下 困難になった前縦靭帯骨化症の1例 」 (横須賀公章, 熊谷優, 田中邦彦, 五反田清和 62: 206-208, 2013. )が掲載されている。 要旨は「 頸椎前縦靭帯骨化症(以下OALL) は外来診療において, ほとんどは無症状であることが多いが, 今回我々は前縦靭帯骨化により嚥下・呼吸困難を呈した1症例に対して外科的治療を行い, 良好な結果が得られたので若干の文献的考察を加え報告する. 【症例】 74歳男性, 嗄声を主訴に近医を受診, レントゲンにてOALLをみとめ, 経過観察するも症状増悪し, 呼吸困難および嚥下不能となり, 気管切開・経鼻胃管留置される. レントゲン・CTにて第2頸椎から第1胸椎にかけて連続性のある高度のOALLをみとめた為, 頸椎前方アプローチにてOALLを切除した. 術後早期より呼吸・嚥下機能回復し, 現在は日常生活を送っている. 【考察】 高齢者の呼吸障害の鑑別診断の1つとして 念頭に置くべきであり, 患者の生活の質を考慮すると 適切な時期に積極的に骨切除 による除圧を行う必要があると思われる. 」と述べている。 今回の文献で参考になった箇所に気管・食道狭窄の原因として 1)二次的に生じる喉頭や食道の炎症・浮腫,かつ,食道の線維化や弾性の低下 2)突出部と輪状軟骨との摩擦による運動制限  3)突出部による喉頭蓋の声門上への倒れこみ妨害 4)喉頭・咽頭・食道に分布する神経の変性  と述べており、嚥下機能との関連はVF、VEにて確認しないと分からない部分である。 STが最初に嚥下機能を評価する場合、骨棘や骨変性による二次的障害は分かりにくいため、 嚥下障害を引き起こす明確な理由が出てこない場合考慮すべき内容と思われる。 また、今回は手術により嚥下機能は回復したが、病院によっては年齢や骨の状態により手術困難な場合も考えられる。この場合、リハビリテーション科、整形外科、耳鼻科とよく話合い、手術の必要性を確認しもし、現状維持の場合今後の対応を確認することが重要と考えられた。     ...

NHCAPにおける誤嚥性肺炎のマネジメント

治療 に「 NHCAPにおける 誤嚥性肺炎 のマネジメント 」(寺本信嗣 94: 49-54, 2012.)が掲載されている。 要旨は「医療・介護関連肺炎(NHCAP)は, あらたに定義された介助・介護を要する人に発症した肺炎であり, これらの患者では誤嚥のリスクが高い. そのため, NHCAPでは誤嚥性肺炎の頻度が高く, 治療についても, 肺炎治療と誤嚥治療を併用する必然性が高い. 抗菌薬治療は入院であれば, 誤嚥に関連する病原体に抗菌活性を有する SBT/ABP Cを中心に投与戦略を検討する. NHCAPには外来治療症例もあるため, この場合は レスピラトリーキノロン が有力な選択肢となる. これ以外に, 嚥下障害への対策と経口摂取への対応が必要になる. 肺炎予防には, 誤嚥内容物の細菌量を減少させる口腔ケアが有効である. また, 嚥下障害を悪化 させる, 喫煙, 抗コリン性薬剤 などの減量・中止も考慮する. 肺結核後遺症, COPDなどの基礎疾患を治療して, 肺機能を最善にしておく必要がある. さらに脱水の補正と栄養改善を図る. 肺炎球菌はNHCAPでも主要な起因菌であり, 肺炎球菌ワクチン接種が誤嚥性肺炎の予防 にも寄与する.」と述べている。 文中で、①嚥下機能は使われないと退化すること、②発声の筋肉群と嚥下の筋肉群はオーバーラップしているため,積極的に発声を促し,会話をすることが嚥’ド機能の回復に役立つことを述べている。 これは、誤嚥しても肺炎を起こさせないため、食前・食後に口腔ケアを実施してから早期に嚥下リハ&経口摂取を実施する必要性を述べている。また、喀出能力向上を高める必要性も述べている。しかし、患者が虚弱な状況では、意欲や発声が弱く十分な喀出につながらない可能性がある。 リハ栄養の概念を導入しながらも並行して喀出能力を高め、かつ適切な抗菌薬選択がNHCAP患者治療に求められると思われた。

嚥下と呼吸の神経調節機構

嚥下医学 に「 嚥下と呼吸の神経調節機構 」(越久仁敬 2: 47 -52 2013)が掲載されている。 要旨は「淡路島で在宅診療を行っていた時に, 忘れえない患者さんを診させていただいた. 突然に全く嚥下ができなくなったという. 往診した時には唾液も飲み込めずに洗面器に吐き出していた. 延髄外側の梗塞が原因であったが, 球麻痺以外はWallenberg症候群の症状は何もなく, 睡眠時に中枢性の周期性無呼吸を認めた症例 であった. この方は特殊なケースであったが, 嚥下障害を訴える, あるいは家人に指摘される高齢者は非常に多い. その多くは, 原因はわからないが嚥下反射が起こりにくかったり, 遅延が認められたりするケースである. このような嚥下障害患者に対するアプローチは, 専門性や立場によってさまざまであろうが, 本稿では主として嚥下と呼吸の神経生理学の視点から嚥下障害の病態生理と治療法について考察する. 呼吸の中枢パターン生成機構(CPG:Central Pattern Generator)は, 下部脳幹(橋~延髄)に存在する. 」と述べている。  文中で、「大脳皮質嚥下関連領域の活性化は、嚥下閾値を下げて嚥下を促通させる方向に働くものと考えられる。」と述べている。ということは大脳皮質が嚥下CPGと組み合わせて嚥下活動を行っていると考えられる。そのため、大脳皮質嚥下関連領域の活性化も併せて行う必要があり、今後は具体的方法が求められる。 大がかりな機械に頼らない、一般病院でも可能な大脳皮質関連領域の賦活化方法として、刺激物の使用や座位、立位姿勢への変更などが考えられるが、まだ分からないことが多い。しかし、考慮として、同じ体位の持続は脳活動の賦活化につながらないため、介入最初に何らかの姿勢変更は行うことは有効と考えられた。

誤嚥性肺炎の臨床的特徴

Medical Technology に「 誤嚥性肺炎 の臨床的特徴 」(青木洋介 40: 1094-1097, 2012.)が掲載されている。  要旨は「誤嚥性肺炎は, 市中発症と院内発症とで原因菌が異なる. 前者においては一般の市中肺炎とは異なり口腔内連鎖球菌属が主体となるが, 後者では通常の院内肺炎と同じくグラム陰性菌が主体となる. 誤嚥性肺炎の多くは不顕性誤嚥により発症するため , 正しい診断のためには発症のリスク因子を認識しておくことが必要である. 「はじめに」誤嚥性肺炎という診断名を日常臨床で耳にする機会は非常に多い. 高齢患者が多いことがその理由の1つであると思われるが, 「意識障害(変調)」+「肺炎」を認める患者が誤嚥性肺炎であるとは限らない. たとえば, レジオネラなど重症市中肺炎に起因する意識障害をきたす病態を誤嚥性肺炎と診断することを避けるには, 誤嚥性肺炎を一定の尺度で正しく診断できる必要がある. 「誤嚥性肺炎とは」肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)やインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)のような気道親和性が高い病原菌による肺炎は狭義の市中肺炎とよばれ , これらの病原菌が呼吸とともに下気道に吸引されることで, 健常成人においても肺炎が成立する . 」と述べている。 これまでの研究より、口腔内の不衛生により、口腔内連鎖球菌や口腔内偏性嫌気性菌が増殖することが分かっている。口腔内連鎖球菌を誤嚥することにより嚥下性肺炎を誘発する可能性が高齢者になるほど高くなる。嚥下性肺炎予防の一つとして唾液分泌能向上が考えられる。その理由として、文中にもあるように唾液にはanti-microbial作用があるためである。 文中でも、長期療養患者の誤嚥性肺炎予防には口腔ケアが推奨されているが、本文を読み嚥下性肺炎予防になぜ口腔ケアが重要なのか微生物学的知見より考察することが重要と思われた。  

高齢者に対する呼気筋トレーニングが随意的咳嗽力に及ぼす効果

理学療法科学に「 ケアハウスの高齢者に対する呼気筋トレーニングが随意的咳嗽力に及ぼす効果 」( 山下弘二, 柿崎彩加, 26: 777-780, 2011.)が掲載されている。 要旨は「本研究では, 施設入居中の高齢者に対し EMST(Expiratory muscles strength training) プログラムが随意的咳嗽力に及ぼす効果について明らかにすることを目的とした. 〔対象〕対象者はケアハウスに入居している高齢者21名とし, EMSTプログラムを行ったEMST群10名(年齢80.6±8.6歳)と対照群11名(年齢76.7±9.3歳)に分けた. 〔方法〕EMSTのプロトコールは, 呼気筋訓練器( Threshold(R)PEP )を用い, 最大呼気圧の50%の圧力に設定し, 15回2セットを1日に2回, 5週間実施した. 測定項目は最大呼気圧, 最大吸気圧, 努力性肺活量, 一秒量, 最大呼気流速, 最大咳嗽流速とした. 〔結果〕5週間後に, 対照群は全ての測定項目で有意な変化は認められなかったが, EMST群は 最大呼気圧, 最大呼気流速, 最大咳嗽流速に有意な増加が認められた . 〔結語〕本研究により施設入所の高齢者に対するEMSTは, 呼気筋力が大きく関与している随意的咳嗽力を高めるための効果的なプログラムであることが示唆された. 」と述べられている。 以前、吹き矢トレーニングによる呼気筋トレーニングについて紹介したが、今回は随意的咳嗽力向上のためにThreshold PEPを使用しEMSTを実施している。 嚥下性肺炎予防のためにEMSTは有効と考えられるが、今回対象群、コントロール群ともMNAが平均して25点以上もあり、十分な栄養状態で実施されている。そのため最大呼気圧の50%と15回2セットという高い負荷で実施可能と思われた。そのため、嚥下性肺炎予防のメニューとして有効と考えられた。 急性期の嚥下性肺炎発症後の摂食・嚥下リハとしてEMSTは有効かリサーチしていきたい。

誤嚥性肺炎の予防対策

難病と在宅ケア に「 誤嚥性肺炎の予防対策 」( 大類 孝 18: 37-41, 2012.)が掲載されている。 要旨は「肺炎は抗菌薬の開発が目覚ましい現在でも, 日本での疾患別死亡の第4位を占めています. また, 2009年度の人口動態統計によれば, 肺炎による死亡者の中で65歳以上の高齢者が占める割合は96%と極めて高いのです. 高齢者の肺炎は, 近年, 難治例が増加しつつあると言われています. 本稿では初めに, 高齢者肺炎の大半を占める誤嚥性肺炎についてその発症の要因を解説し, 次に 予防策として嚥下反射や咳反射を改善させる薬物や食品および口腔ケアが有効 である事について述べ, 最後に高齢者肺炎予防のためのワクチンの有用性について解説します. 「高齢者の肺炎の成因」 高齢者の肺炎は近年複雑化し, 難治例が増加しつつあると 言われています. その背景には, 超高齢社会を迎えさまざまな基礎疾患を抱えた易感染状態の患者様が増加している点や, 加齢に伴う免疫能の低下のために弱毒性の病原微生物によっても肺炎を発症し得る点, また, 抗菌薬に耐性を有する細菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌やペニシリン耐性肺炎球菌など)の出現が挙げられます. 」と述べている。 文中で述べられている嚥下性肺炎予防法について、 カプサイシン、ACE阻害薬、塩酸アマンタジン等について述べているが、興味深い内容として、葉酸欠乏が嚥下障害を引き起こすため葉酸の補充を挙げている。 まだ、文献検索していないが、嚥下性肺炎患者の葉酸値や実際にどの程度の葉酸補充により嚥下機能の改善がみられたか興味がある。 投薬はセラピストには難しいが、葉酸であればゼリー等直接訓練の範囲内で実施できる可能性がある。今後のリサーチに期待したい。

NHCAPと歩行能力

日本呼吸器学会雑誌に「 歩行不能な市中肺炎患者は介護医療ケア関連肺炎( NHCAP )として分類すべきである 」(白井佐和, 高瀬直人, 芥川茂, 橋本重樹 49(suppl.1-1): 134-134, 2011. )が掲載されている。 内容は、「医療ケア関連肺炎(HCAP)について,過去の肺炎患者をCAP/HCAPに分類し,その問題点を検討するとともに,介護の必要度による臨床像の差異について比較した.【方法】2009年4月から1年間に当科に肺炎で入院した患者184人をCAP群(125人)とHCAP群(59人)に分類し,ADL,起炎菌,重症度,予後などについて検討した.【結果】CAP/HCAPでの比較では,耐性菌比率,重症度に有意差を認めるものの(p〈0.05),死亡率には差がなかった(p=0.064).在宅で介護を受けている患者の指標に歩行能力を用い歩行不能なCAP群(31人)をHCAP群に加えNHCAP群(90人)として再検討した,その結果,耐性菌比率,重症度,死亡率すべてに有意差を認めた(p<0,05),【結論】 日本における肺炎の新しい概念には,HCAPよりもNHCAPの方が適切と思われ,その指標として歩行能力は有用と考える .」と述べている。 CAPとNHCAPの比較にADL等を使用した報告である。NHCAPに当てはまる患者の多くは誤嚥性肺炎をきたしADLが低下していることが予想される。そのため、NHCAP患者にも摂食嚥下リハビリテーション適応者がいると考えられる。今後、NHCAP患者における誤嚥性肺炎の割合、重症度について検索していきたい。

NHCAP:Nursing and Healthcare-associated pneupneumonia

Geriatric Medicineに「 高齢者肺炎 」(関雅文, 河野茂, 楽木宏実 49(1): 115-120, 2011.)が掲載されている。              要旨は「日本における肺炎診療は, 高齢者社会の到来による誤嚥性肺炎の増加や, 膠原病や腎不全などの基礎疾患による感染リスクの増大など新たな問題に直面している. 高度先進医療, すなわち臓器移植や侵襲の大きい手術による日和見感染の増加は大きな問題となっている. また, 多くの抗菌薬の登場が, 抗菌薬の過剰使用につながり, 数々の耐性菌を生じさせることとなった.」と述べている。                    文中でNHCAPについて述べられている。元々は医療ケア関連肺炎(Health care-associated pneumonia:HCAP)と呼ばれ,米国よりその概念が紹介された一連の肺炎群であり、単に市中肺炎と院内肺炎の中台に位置する概念と考えられていた。しかし、市中肺炎の形式で,救急外来などから入院することも多くみとめられている。そのため、院内肺炎に準じて治療すべきものと考えら れている。しかし、日本独自の高齢化に伴う肺炎が問題になり、 NHCAP(医療・介護関連肺炎:Nursing and Healthcare-associated pneumonia )ができた。今後、NHCAPによる治療・リハビリ研究が進んでくると考えられた。

睡眠中の嚥下と呼吸

音声言語医学に「 睡眠中の嚥下と呼吸 」(佐藤 公則, 梅野 博仁, 千年 俊一, 中島 格52 (2011).132-140)が掲載されている。  要旨は「正常成人では睡眠中の嚥下の頻度は減少していた.その頻度は睡眠stageに関係しており, 睡眠が深くなるに従い嚥下の頻度が低くなっていた .また長時間嚥下が行われていなかった.このことから睡眠中は咽頭食道のクリアランスが低下していることが示唆された.しかし,若年成人では嚥下後吸気で再開する頻度は低く,このことは気道防御に有利であると考えられた. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者でも睡眠中の嚥下の頻度は減少していたが,88%の嚥下はrespiratory electroencephalographic arousalとともに起こることが特徴であった.70%の嚥下は嚥下後,呼吸は吸気で再開しており嚥下に関連した呼吸のパターンは特異的であった. CPAP療法は睡眠時の無呼吸・低呼吸と睡眠構築を改善させるだけではなく,睡眠中の嚥下と嚥下に関連した呼吸動態も改善させていた .」と述べている。  睡眠と誤嚥性肺炎の関連は文献で多く報告されており、摂食中の誤嚥も大切であるが非摂食時(特に夜間)の誤嚥予防はより重要である。そのため、就寝前の口腔ケアは徹底して実施する必要がある。睡眠中誤嚥とVEによる咽頭内貯留の関連について、まだ文献検索をしていないが、当然咽頭内貯留が多ければ、睡眠中の誤嚥riskは高いと思われる。しかし、SA患者で咽頭内貯留がない場合でも誤嚥性肺炎を起こす場合もあり、今後関連を調べていきたい。

咳感受性検査について

日本胸部臨床 に「 咳感受性検査 」(藤村政樹 67(増刊): 5070-5074, 2008.)が掲載されている。 要旨は「咳感受性は, 気道過敏性や気管支平滑筋トーヌスとは相互作用のない独立した気道の反応性であり, 女性の方が男性よりも4倍亢進している. また, 咳感受性検査は, 慢性咳嗽の原因疾患の診断と治療効果の判定に有用である.  「はじめに」乾性咳嗽の発生機序として, 少なくとも次の三つが考えられる. 第一は, 気道の咳感受性亢進に基づく咳嗽 であり, アトピー咳嗽, 胃食道逆流症, アンギオテンシン変換酵素阻害薬による咳嗽など, 多くの原因の乾性咳嗽の機序となる. 第二は, 気管支平滑筋の収縮がトリガーとなって発生する乾性咳嗽 であり, 咳喘息における咳嗽発生の機序となる. 第三は, 咳受容体の熱刺激による乾性咳嗽 であり, マイコプラズマ感染症や百日咳が該当する可能性がある. 咳感受性測定は, 咳嗽発症の生理学的病態として咳感受性が亢進しているか否かを評価する方法である. 咳感受性に基づいて分類した咳嗽の原因疾患を表に示した. 咳感受性測定は, これらの疾患の鑑別診断に有用である. 表に示した咳感受性亢進による咳嗽は, 治療によって咳嗽が軽快すると咳感受性も正常化するため, 咳感受性測定は咳嗽の臨床経過を定量的に評価するためにも有用である. 」と述べている。  文中で興味深かったのは、カプサイシン誘発咳嗽とクエン酸誘発咳嗽の発生機序が違うと述べられている。現在嚥下機能評価で使用される評価はクエン酸を使用したものが報告されている。今後、クエン酸使用による咳テストと、カプサイシンを使用した咳テストを比較し嚥下機能評価に違いはあるのか、誤嚥性肺炎リスクの感度・特異度の違い等の文献を調べる必要があると思われた。

姿勢による咳閾値の比較検討

呼吸 に「 健常者の坐位と仰臥位での カプサイシン咳感受性試験 による咳閾値の比較検討 」 (渡邉直人, 福田健 26(6): 575-580, 2007. )が掲載されている。 要旨は「気道過敏性は体位により異なることが報告されている. 今回筆者らはそのことに着眼し, 健常者31名を対象に咳閾値を坐位と仰臥位で求め, 体位により咳閾値に差異があるか否かについて検討した.  方法:坐位にてカプサイシン咳感受性試験を行い, 咳閾値を求めた. その2週間以内に仰臥位にて同様に咳閾値を求め比較検討した. また各々の体位において, カプサイシン吸入前後のPEF, FEV1.0, FVC, V50, V25を測定し比較検討も行った.   結果:坐位における咳閾値の平均は16.71μM, 仰臥位における平均は13.99μMで有意差は認められなかった. また坐位ではカプサイシン吸入後にPEF, FEV1.0は変動しなかったが, 仰臥位では有意に低下していた. 坐位と仰臥位での比較では, カプサイシン吸入後に仰臥位でPEF, FEV1.0の有意な低下を認めた. V50, V25は仰臥位において前値より既に有意な低下を認めていた. 以上より, カプサイシン咳閾値は体位により変動しないが, 仰臥位により気道収縮の影響を受けやすいことが示唆された. 」と述べている。  著者らは文中で仰臥位のみでも、末梢気道収縮をきたす可能性を述べている。誤嚥性肺炎予防で安静時ギャッジアップで対応するが、これはGERDや不顕性誤嚥のリスクを減らす目的である。 今後、仰臥位が末梢気道収縮を起こすことが分かれば、不顕性誤嚥予防と末梢気道収縮予防に一番適したベッド角度が出てくるのではと思う。

言語聴覚士の呼吸リハビリ考察

昨日、本日と チームCE研究会 講習会に参加した。  呼吸療法認定士の単位講習になっていることもあり、参加職種は看護師、理学療法士、臨床工学技士が多かった。内容は「血液ガスと酸塩基平衡」、「呼吸療法における画像診断のコツ」や「呼吸ケアサポートチームにおける栄養管理の基礎と運営」等、臨床で役立つ内容であった。  参加して考えさせられたこととして、何度も繰り返すが言語聴覚士は呼吸器、栄養について学ぶ機会がほとんどない。しかし、入職すると嚥下障害をみる機会が高次脳機能よりも多い病院が多いと思う。これは、高齢化に伴う誤嚥性肺炎増加による影響が大きいと言える。  そうなると嚥下障害を担当する言語聴覚士は呼吸器、栄養に関する知識を覚えることは必須となる。呼吸理学療法を学習することで、摂食時の誤嚥を予防する姿勢調整が可能となり、結果として誤嚥性肺炎予防に役立つ。特に理学療法士取得後、頭頸部だけでなく、姿勢による影響を考慮した呼吸リハ的(あくまで的)アプローチも実践してきた。  「嚥下障害」、「誤嚥性肺炎」、「栄養」。今後、この3つを結びつけたリハビリテーションに関する研究を実践していきたい。

肺炎予防とワクチン

日本胸部臨床 に「 老人科の立場から―予防と治療― 」( 山谷 睦雄, 久保裕司 68(9): 809-818, 2009. )が掲載されている。  要旨は「高齢者肺炎は若年者肺炎と病態が異なる場合が多いため, 治療や予防の方法も異なる. 脳血管障害による神経機能低下, ADLの低下や寝たきりによる口腔内細菌の増加, 胃食道逆流などが肺炎の原因になる. 嚥下改善効果・脳梗塞再発抑制効果を有するACE阻害薬, アマンタジン, シロスタゾールなどに加え, 口腔ケア, 食後の座位保持が肺炎予防に有効である. 治療は中等度以上の肺炎として複数の抗菌薬で治療し, 絶食と補液管理を行う. 」と述べている。  今回の文献で関心があったのは「ワクチン」についてである。「 インフルエンザワクチンは高齢者においても肺炎予防効果を認めている 。また,海外の調査で, 肺炎球菌ワクチン接種群では高齢者肺炎による死亡率低下 が報告されている。冬季の調査において,肺炎予防に対じてインフルエンザワクチンは肺炎球菌ワクチンの肺炎予防効果を増強する。両方のワクチン接種が肺炎防止に一層の効果がある」と述べている。データとして、筆者らはCOPD2症例を挙げており、「 肺炎球菌ワクチン接種後,発熱日数,増悪頻度,肺炎頻度,入院回数,入院経費が減少した 」と述べている。  誤嚥性肺炎患者は肺炎を繰り返す確率が高いことが知られている。誤嚥性肺炎と肺炎ワクチンを同一視したらよいかは分からない。しかし、誤嚥性肺炎が一度改善したら、ワクチン接種を勧めることも重要だと考えられた。嚥下障害は嚥下機能だけの問題ではなく、全身の障害に関わる問題である。そのため、様々な視点からアプローチが述べられているが、ワクチン摂取はこのアプローチの一つと考えられた。