睡眠時無呼吸と嚥下機能の新たな関連

日本臨床生理学会雑誌に「睡眠時無呼吸と嚥下機能の新たな関連」(山口泰弘, 石井正紀, 寺本信嗣 43(2): 71-76, 2013. )が掲載されている。

要旨は「呼吸調節嚥下活動の神経支配は, 延髄網様体において密接に関わりあっている. また, 上気道の筋群への神経活動の低下は, 睡眠時無呼吸を増悪させる因子の一つである. 我々の検討では, 嚥下誘発試験における嚥下反射の潜時が, 睡眠時無呼吸症候群の患者において有意に延長していた. そのほか, 睡眠時無呼吸症候群の患者において, 咽頭粘膜の知覚の低下も報告されている. さらに, 無呼吸に伴う強い胸腔内の陰圧は, 消化液の逆流を増強し, この逆流が不顕性誤嚥を助長する可能性がある. 我々の研究では, 経管栄養を受ける要介護高齢者では, 無呼吸低呼吸指数の増加と3ヵ月間の発熱日数の増加や呼吸器感染症の発症に有意な相関がみられた. 睡眠時無呼吸症候群は, 心血管疾患への影響のみならず, 上気道防御システムにも影響を与え, 要介護高齢者での肺炎リスクの増加をもたらす可能性が示唆される.」と述べている。

高齢者は老年症候群にみられるように複数のリスク因子を持ち容易に、廃用症候群に陥る可能性が大きい。今回は嚥下機能低下を睡眠時無呼吸の観点からリサーチした論文である。興味深かったのは睡眠時無呼吸によりGARDが誘発されることであり、高齢者の夜間睡眠状況も確認する必要があると思われた。
嚥下機能低下に関連する因子は多く、一つの原因だけでは述べることは難しいが、メカニズムを一つ一つ解析していくことで、誤嚥性肺炎予防につながっていくと考えられた。



               


                         

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