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認知症高齢者の摂食・嚥下障害

老年精神医学雑誌 に「認知症高齢者の摂食・ 嚥下障害」( 枝広あや子 25: 117-122, 2014.)が掲載されている。 要旨は「高齢者の摂食・嚥下障害については脳血管障害後遺症をベースに対応法が確立されつつあるが, 認知症に対しては対応法が確立されていなかった. これまでの調査における実態把握により, アルツハイマー病(AD)の摂食・嚥下障害では"広義の嚥下障害"を引き起こす要因に着目する必要性が確認された. ADの摂食・嚥下障害には「身体機能障害」に加え, 認知症特有 の「 環境との関係性の障害 」が関係していると考えられる.」と述べている。 認知症の摂食嚥下障害というと、まず嚥下機能よりも拒食、一口量の増加、集中力の低下といった摂食環境の乱れがイメージとして出てくる。また、集中して摂食嚥下リハビリテーションを実施することは難しいため、スプーンの調整による一口量の調整や拒食に対しては代替栄養など環境調整が大事になってくる。 本文中にある、「認知症の方の食支援マニュアル」は認知症の食事への対処方法がわからない方へアプローチを示唆してくれるよいものと思う。 高齢化社会に伴い、認知症高齢者による摂食嚥下障害は増加することが予想されるため、研究の進展に期待していきたい。

新たな認知症施策の方向性

PROGRESS IN MEDICINE に「 厚生労働省が呈示した新たな認知症施策の方向性 」 (山口晴保 , 山口智晴 32: 2591-2596, 2012.)が掲載されている。   「はじめに」2012年6月18日に『今後の認知症施策の方向性について』という報告書が, 厚生労働省認知症施策検討プロジェクトチームから公表された. この報告書は, 藤田厚生労働大臣政務官を主査(チーフ)とし, 医政局, 社会・援護局, 老健局, 保険局の4局長と, 障害保健福祉部長を副査とする省内横断的なプロジェクトチームで, 過去10年間の認知症施策を再検証し, 今後目指すべき基本目標とその実現のための認知症施策の方向性 について呈示したものである. 一般病院の医療は医政局, 精神科病院は障害保健福祉部, 介護保険を担当して認知症対策部門があるのは老健局, 医療保険が保険局という縦割り行政の中で, 省内横断的なプロジェクトチームで認知症施策を議論したのは素晴らしいことだが, 一部の専門家・実践者などへのヒアリングで議論がまとめられたようで, 省内各部局の実務者からの意見や実績を基盤とした施策ではなく, 理想論のようなトップダウンの施策の色彩が強い. 」と述べられている。   認知症患者が2025年には470万人になるとの報告があり、認知症に対する施策の方向性が求められる中で、2013年より 認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン) が策定された。 今後は、初期対応を充実させることで、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD)の予防や「身近型認知症疾患医療センター」を設置し、在宅生活のサポートを充実させていく予定である。 これまでは、高齢化社会の対応でゴールドプランが策定されたが、今後は高齢化に伴う症状別の対策を立てることが重要と考えられた。また、認知症に対してセラピストの関わりも重要と思われ、更なる認知症改善に有効なリハビリテーションの開発、実施が望まれると思われた。    

失語症デイサービスのアウトカム評価

自分の住んでいる地域で失語症専門デイサービス開設の案内があったが、失語症デイサービスの具体的な内容については、知らなかったため調べてみた。 コミュニケーション障害学 に「 失語症 デイサービス のアウトカム評価 」 (阪野雄一, 中村光, 28: 159-165, 2011.)が掲載されている。 要旨は「失語症者専用デイサービス「ことのは」に通所している利用者の各種検査値の経時的変化から, 失語症デイサービスの効果について検討した. 対象は「ことのは」を1年以上継続して利用した失語症者14名. 初回利用時, およびその後は1年に1回, 言語機能(SLTAで測定), コミュニケーション機能(CADLおよびCADL質問紙で測定), 介護負担感(COM-Bで測定)に関する評価を実施した. その結果, 1年後の再検査が実施できた14名の中では, 利用開始時に比べSLTAは11名, CADLは12名, CADL質問紙は11名で成績が向上した. 2年後の再検査が実施できた8名の中では, 利用開始時に比べSLTAは7名, CADLは8名, CADL質問紙は6名で成績が向上した. 1年目から2年目の間でも, SLTAは6名, CADLは4名で成績が向上した. 失語症デイサービス は, 慢性期失語症者の言語・コミュニケーション機能の回復にとって有効な環境 の一つであると考えた. 」と述べている。   ここのデイサービスの特徴は毎週日曜日(週1回)に失語症リハビリを実施している点である。 早期退院の傾向から退院後のリハビリの充実が求められるが、デイサービスに所属している言語聴覚士はまだ少ないと考えられる。(もともとセラピスト自体も少ない可能性) このことから、週に曜日を設定し失語症リハビリを実施する内容はとても有効だと思われた。 また、デイサービスに通所している摂食・嚥下障害残存利用者についても今後、月1回からでも、医師、歯科医師が出張し摂食・嚥下障害の評価(VE、咳テスト等)をして摂食・嚥下のアドバイスをすることでデイサービス利用者の生活向上につながると考えられた。

脳機能と脳画像2

昨日、再度「脳画像の見方」について昭和大学医学部神経内科石原健司先生の講演会に参加した。普段、脳卒中によらない摂食嚥下障害を担当することが多いため、知識の再確認で大変勉強になった。 日本保健科学学会誌 に「 MRIで 淡蒼球 ・黒質に異常信号を認め高圧酸素療法が効奏した 一酸化炭素中毒 の1例 」(吉澤寿 9(4): 268-275, 2007. )が掲載されている。 要旨は「MRIの拡散強調画像で両側淡蒼球, 黒質に高信号を認め, 高圧酸素療法(hyperbaric oxygen therapy:以下HBO)が効奏した CO中毒 の1例を報告した. 症例は25歳男性で, 飲酒後灯油ストーブ前で就寝し, 翌日倒れているところを発見された. HBO目的で入院となり, 第1病日の頭部MRI検査において 両側淡蒼球に拡散強調画像で高信号 を認めた. 第13病日の頭部MRI検査では両側黒質にも拡散強調画像で高信号を認めた. 計19回のHBO を施行し, 経過良好にて第34病日退院となった. CO中毒の中枢神経病変は, 淡蒼球, 黒質, 大脳白質など脳内の鉄の分布と関連している. CO中毒の脳組織傷害は, COの還元作用でフェリチンに蓄えられた非ヘム鉄が遊離イオン化し, Femton反応およびHaber-Weiss反応によってH2O2から.OHが生成され, oligodendrocyteやミエリン鞘の傷害, 神経細胞死を引き起こしている可能性がある. 」と述べている。 CO中毒の主な症状はパーキンソン症状であり、文献中でも述べられている。また、意識レベルの浮動性も大きく、パーキンソン症状と合わせ、リハビリテーションも遅々として進まないことがある。常に症状の変化と脳画像の変化を確認しアプローチを検討していくことが大切と思う。 講演終了後、この文献を読んだ際、淡蒼球の場所がすぐ確認できた。常に知識の再確認は大事であると考える。

FTLD分類

Cognition and Dementia に「 前方型認知症の臨床症状と分類 」 (小川雄右, 橋本衛, 池田学, 7(2) : 150-158, 2008.)が掲載されている。  要旨は「前方型認知症は, 大脳の前方部すなわち前頭葉, 前部側頭葉を中心に変性をきたし, 著明な人格変化や行動異常を主徴とする認知症を包括する疾患概念である. その臨床症候の多様性ならびに臨床症候と神経病理学的なサブタイプとの不一致が, 本疾患の理解を複雑にしている. 本稿では, 前方型認知症の臨床的に最も実用的な疾患分類である前頭側頭葉変性症と, その疾患単位である 前頭側頭型認知症(FTD), 進行性非流暢性失語症(PA), 意味性認知症(SD) を紹介し, その臨床症候と背景病理について概説した.  前方型認知症は, 大脳の前方部, すなわち前頭葉, 前部側頭葉を中心に変性をきたし, 著明な人格変化や行動異常を主徴とする変性認知症を包括する疾患概念である(この疾患概念は, 前頭側頭型認知症と呼称されることもあるが, 大脳の後方領域が主として侵されるアルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)と区別する意味 において前方型認知症が用いられることも多い). 」と述べている。  FTD,PA,SDを包括してFTLDと言うが、実際臨床では単一症状で出現する機会もあれば、重複して出現することもある。FTLDに関して、高次脳機能症状に目が行きがちであるが、摂食・嚥下障害も併発しやすいことに留意する必要があると考える。

脳画像の見方と脳機能

 本日、昭和大学の石原健司先生講演会に参加してきた。演題は「脳画像の見方と脳機能」であった。ということで、今回は石原先生の文献を調べてみた。 Modern Physicianに「 脳の画像診断で, 脳の部位をどのように同定したらよいのですか? 」(石原健司, 30(1) : 54-57, 2010)が掲載されている。  要旨は、「病変部位を表現する際には, 大雑把には前頭葉や側頭葉などの脳葉, 細かくは脳溝または脳回を用いることが多い. ここでは代表的な脳溝, 脳回を同定する方法を提示する. 脳溝と脳回は, 脳を外表から眺めた際に, 明瞭な構造物として認識される. 脳表面に走る溝が脳溝であり, 脳溝と脳溝の間に存在する大脳皮質の隆起が脳回である. 大脳のすべての脳回と脳溝には名称が付されている. これらの名称は系統的なものであり , たとえば前頭葉では脳回が上から上前頭回, 中前頭回, 下前頭葉回の順に存在し(上前頭回を第一前頭回, 以下第二, 第三の順に接頭語を付す立場もある), それらの間に上前頭溝, 下前頭溝が存在する. また中心溝の前方を中心前回, その前方の上下に走る脳溝は前中心溝と呼ばれる. 上・中・下などの接頭語を付された脳回や脳溝は, 場所をイメージしやすいが, ほかに, 海馬傍回や縁上回も, 字面から容易に場所を想像できる .」と述べている。  本日の講演会で印象に残ったのは、やはり本文中でも述べられている 中心回の同定方法である。方法は3種類あり、組合わせて使用することで、精度が向上するとのことであった 。現在、脳血管障害以外の嚥下障害患者を担当させていただいているが、もちろん既往に脳血管障害の方もおり、脳画像を見る機会は多い。今回の講演内容を参考にし明日からの臨床に役立てたい。

注意障害とセラピスト

The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine, http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjrmc/-char/ja/ に 「 注意障害におけるdivided attentionの「選択的」障害の症例を通して 」 (豊倉穣, 笹尾ゆう, 48(1) : 68, 2011)が掲載されている。  掲載内容は分割的注意であるdivided attention(DA)障害患者に対し、視覚課題, 聴覚課題を同時に行うdual task(DT)を脳損傷例2例に施行し評価したものである。結果は 2例とも標準注意検査法, WAIS-IIIなどは正常範囲であったが, DTでは低成績を示した。一方, DTが正常の別の1例では, 全く問題なく就労が達成できていた。  著者らは「 認知機能としての「注意」のコンポーネントの中で, 複数の課題や入力情報の操作を同時に行う については臨床現場での評価対象としてあまり着目されていなかった.」と述べている。  ここで考えることは、注意障害患者に対するアプローチでただ、無視・注意不十分側に注意をむけさせるだけでなく、患者がどの様な思考過程をしているかを考えることである。その上で患者自身が自分で注意不足を自覚し、改善するための思考過程を組み立てることと思う。    

AD患者に対する内服ゼリー

雑誌、新薬と臨牀 http://www.iyaku.info/journals/jnrc_latest.html に「 ドネペジル塩酸塩内服ゼリーに関する医師, コ・メディカル, 患者家族のニーズおよび評価 」(羽生春夫, 藤谷順子 59(3) : 349-355, 2010) が掲載されている。   内容は、AD(アルツハイマー病)の薬物療法は,日本ではドネペジル塩酸塩(製品名:アリセプト(R))による進行抑制療法が,現在保険適応を有する唯一の手段である。ドネペジル塩酸塩には,①フィルムコート錠②口腔内崩壊錠および③細粒の3種類の剤形がある。  しかし、与薬困難なAD患者は存在するため、他の与薬と,服薬継続によりドネペジル塩酸塩が有する症状の進行抑制効果を最大限に引き出すことを目的に 内服ゼリー が設計された。と記載されている。  結果は上位から順にメリット:①薬剤の選択性が増える②食事の一環として投与できる③デザート感覚で服用できる。であり、デメリットとして①保管管理が必要②薬剤管理を行うマンパワーが必要③与薬を複数回に分ける必要があるとのことであった。  ADに限らず、高次脳機能障害を呈した患者が自宅復帰する際、薬の自己管理が必要なケースもある。その際、薬管理といった視点だけでなく、特定ゼリーの摂食といった、別な視点からの自己管理も一つの可能性ではないかと思う。  他にも工夫次第で摂食・嚥下障害改善のアプローチとして、メリットにあったデザート感覚で認知症ではなく摂食・嚥下障害を改善する可能性も考えられ、参考になる一論文であったと思う。    

Higher brain dysfunction

「高次脳機能障害とは」について http://shinkoh-igaku.jp/mokuroku/data/M3001.html で記載がなされている。 この中で「高次脳機能障害は主として連合野皮質によって営まれる機能,およびその障害ということである。」と述べられている。しかし、文章では一言で高次脳機能障害と言っても行政用語と学術用語の意味合いが違く、行政用語には失語症、失行症、失認症は含まれていない。 ここで考えさせられることは現場で働く私も脳機能損傷患者に対し簡単に「高次脳機能障害残存」と報告していないかということである。 改めて再考し臨床に活かしたい。