誤嚥と誤嚥性肺炎について考える

日本外科感染症学会雑誌に「誤嚥と誤嚥性肺炎について考える」(大下慎一郎, 志馬伸朗  13(3): 185-191, 2016.)が掲載されている。

要旨は「本邦における肺炎の死亡者数は年々増加しており, 現在, 悪性新生物, 心疾患に続き, 死亡原因の第3位を占める. 肺炎のうち, 咽喉頭部や胃内の物質を下気道へ吸入することによって発症する肺炎を, 誤嚥性肺炎とよぶ.
誤嚥性肺炎には, 大きく分けて, (1)口腔・咽頭内容物の誤嚥による誤嚥性肺炎, (2)胃食道逆流物の誤嚥による化学性肺炎の2種類がある. 誤嚥性肺炎は発見が遅れることが多く, また再発・再燃を繰り返すことも多いため, 耐性化・難治化を惹起しやすい. 従来の認識と異なり, 誤嚥性肺炎の起炎菌は嫌気性菌のみではなく, グラム陰性桿菌が大部分を占めるようになっている. 誤嚥性肺炎では治療のみならず予防も重要であるため, アンギオテンシン変換酵素阻害剤による誤嚥予防を含め, 頭位挙上・口腔ケア・適切な鎮静・制酸薬・深部静脈血栓予防・栄養状態改善・リハビリなど, 包括的な全身管理が重要である.」と述べている。

本文では、高齢者における誤嚥性肺炎リスクに関するシステマティックレビューでは,
①高齢
②男性
③慢性肺疾患
④嚥下障害
⑤糖尿病
⑥認知症
⑦口腔内の不衛生
⑧栄養不良
⑨パーキンソン病
⑩抗精神病薬・プロトンポンプ阻害剤の使用
⑪ACE阻害剤の未使用
等があると誤嚥性肺炎にかかりやすいとある。この中で摂食嚥下リハビリテーションによる介入ができるのは主に④と⑦であると考える。
他はリハビリというより、薬による治療の範囲であるため、治療担当医師との連携が重要になる。
④は言語聴覚士、⑦は歯科が介入すれば、より効果が期待でき誤嚥性肺炎治療促進につながると思われた。

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