呼吸困難および嚥下困難になった前縦靭帯骨化症の1例

整形外科と災害外科に「呼吸困難および嚥下困難になった前縦靭帯骨化症の1例」 (横須賀公章, 熊谷優, 田中邦彦, 五反田清和 62: 206-208, 2013. )が掲載されている。

要旨は「頸椎前縦靭帯骨化症(以下OALL)は外来診療において, ほとんどは無症状であることが多いが, 今回我々は前縦靭帯骨化により嚥下・呼吸困難を呈した1症例に対して外科的治療を行い, 良好な結果が得られたので若干の文献的考察を加え報告する. 【症例】 74歳男性, 嗄声を主訴に近医を受診, レントゲンにてOALLをみとめ, 経過観察するも症状増悪し, 呼吸困難および嚥下不能となり, 気管切開・経鼻胃管留置される. レントゲン・CTにて第2頸椎から第1胸椎にかけて連続性のある高度のOALLをみとめた為, 頸椎前方アプローチにてOALLを切除した. 術後早期より呼吸・嚥下機能回復し, 現在は日常生活を送っている. 【考察】 高齢者の呼吸障害の鑑別診断の1つとして念頭に置くべきであり, 患者の生活の質を考慮すると適切な時期に積極的に骨切除による除圧を行う必要があると思われる. 」と述べている。

今回の文献で参考になった箇所に気管・食道狭窄の原因として
1)二次的に生じる喉頭や食道の炎症・浮腫,かつ,食道の線維化や弾性の低下
2)突出部と輪状軟骨との摩擦による運動制限 
3)突出部による喉頭蓋の声門上への倒れこみ妨害
4)喉頭・咽頭・食道に分布する神経の変性 
と述べており、嚥下機能との関連はVF、VEにて確認しないと分からない部分である。
STが最初に嚥下機能を評価する場合、骨棘や骨変性による二次的障害は分かりにくいため、
嚥下障害を引き起こす明確な理由が出てこない場合考慮すべき内容と思われる。
また、今回は手術により嚥下機能は回復したが、病院によっては年齢や骨の状態により手術困難な場合も考えられる。この場合、リハビリテーション科、整形外科、耳鼻科とよく話合い、手術の必要性を確認しもし、現状維持の場合今後の対応を確認することが重要と考えられた。


                           
                                                       

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