肺炎予防とワクチン

日本胸部臨床に「老人科の立場から―予防と治療― 」(山谷睦雄, 久保裕司 68(9): 809-818, 2009. )が掲載されている。
 要旨は「高齢者肺炎は若年者肺炎と病態が異なる場合が多いため, 治療や予防の方法も異なる. 脳血管障害による神経機能低下, ADLの低下や寝たきりによる口腔内細菌の増加, 胃食道逆流などが肺炎の原因になる. 嚥下改善効果・脳梗塞再発抑制効果を有するACE阻害薬, アマンタジン, シロスタゾールなどに加え, 口腔ケア, 食後の座位保持が肺炎予防に有効である. 治療は中等度以上の肺炎として複数の抗菌薬で治療し, 絶食と補液管理を行う. 」と述べている。
 今回の文献で関心があったのは「ワクチン」についてである。「インフルエンザワクチンは高齢者においても肺炎予防効果を認めている。また,海外の調査で,肺炎球菌ワクチン接種群では高齢者肺炎による死亡率低下が報告されている。冬季の調査において,肺炎予防に対じてインフルエンザワクチンは肺炎球菌ワクチンの肺炎予防効果を増強する。両方のワクチン接種が肺炎防止に一層の効果がある」と述べている。データとして、筆者らはCOPD2症例を挙げており、「肺炎球菌ワクチン接種後,発熱日数,増悪頻度,肺炎頻度,入院回数,入院経費が減少した」と述べている。
 誤嚥性肺炎患者は肺炎を繰り返す確率が高いことが知られている。誤嚥性肺炎と肺炎ワクチンを同一視したらよいかは分からない。しかし、誤嚥性肺炎が一度改善したら、ワクチン接種を勧めることも重要だと考えられた。嚥下障害は嚥下機能だけの問題ではなく、全身の障害に関わる問題である。そのため、様々な視点からアプローチが述べられているが、ワクチン摂取はこのアプローチの一つと考えられた。

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