嚥下機能と体力関連の検討

嚥下医学に「嚥下機能と体力関連の検討」 (西山耕一郎, 杉本良介, 戎本浩史, 大田隆之, 酒井昭博, 永井浩巳, 粉川将治, 廣瀬裕介, 河合敏, 足立徹也, 大上研二, 折舘伸彦, 飯田政弘, 廣瀬肇
3(1): 67-74, 2014.)が掲載されている。

要旨は「嚥下機能は全身状態に大きく左右される. 嚥下機能が低下してくると誤嚥を生じ, 誤嚥を繰り返して肺炎になる. 嚥下機能と呼吸機能と体力と肺炎との関連性について検討した. 西山耳鼻咽喉科医院を嚥下障害にて受診した62例を誤嚥あり群と誤嚥なし群に分類し, 呼吸機能として一回呼気流量と, 体力の指標として握力を測定し, 肺炎症状等を調べた. 誤嚥あり例は33例, 誤嚥なし例は29例であった. 誤嚥あり群の一回呼気流量は132.4±66.7 L/minで, 誤嚥なし群の一回呼気流量は218.1±73.8 L/minで, 誤嚥あり群は有意に(p<0.05)少なかった. 誤嚥あり群の握力は15.6±5.4 kgであり, 誤嚥なし群の握力は21.9±7.2 kgで, 誤嚥あり群は有意に(p<0.05)低かった. 誤嚥あり群のCRP値は, 誤嚥なし群に比べて有意に高かった. 末梢白血球数, BMI値, 血清アルブミン値は, 誤嚥あり群と誤嚥なし群の有意差は認められなかった. 誤嚥あり群は, 痰咳の症状例, 36.7度以上の微熱例, 杖歩行例が多かった. 以上の結果より嚥下機能は, 呼吸機能, 体力(握力), 炎症症状と関係することが推察された. 」と述べている。

本文中で「嚥下性肺炎発症のリスクは,誤嚥の有無だけでなく咳の最大呼気流速(peak cough flow:PCF)も関係し,咳噺やハフィングは術後の気道内分泌物の喀出と肺合併症を予防するために非常に重要」とあり、嚥下障害により誤嚥したとしても、喀出能力を高めることで、誤嚥性肺炎を防止できると考えることができる。エビデンスに乏しい摂食嚥下リハビリテーションであるが、嚥下障害を直接改善するためにアプローチする直接、間接訓練と誤嚥性肺炎を予防するために行う訓練を普段の摂食嚥下リハビリテーションに組み合わせて行うことが、エビデンス構築に役立つのではないかと思われた。

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