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介護老人施設に入所している高齢者の摂食・嚥下機能にかかわる状況と施設の対応

新潟歯学会雑誌に「 介護老人施設に入所している高齢者の摂食・嚥下機能にかかわる状況と施設の対応 」(中山富子, 伊藤加代子, 井上誠 43(2): 119-127, 2013.) が掲載されている。                                                  要旨は「介護老人施設入所者の摂食・嚥下機能にかかわる状況と施設の対応を明らかにする目的で, 東京都内にある特別養護老人ホーム3施設, 老人保健施設2施設を対象とし, 独自に作成したアンケート用紙を事前に郵送後, 訪問した. アンケートの回答を確認しながら, インタビューにより内容の補足や追加を行った. 平均年齢や平均介護度 が高い施設に摂食・嚥下障害がある入所者が多い傾向であった. これらの施設は非 経口摂取者も多かった . 経口摂取者では, 常食を食べている人の割合が少なく, 食事摂取量も少ない傾向であり, 食事介助を必要とする人数が多かった. 入所者の食事摂取への対応で, 食事介助や食事時間, 食事場所については, 看護・介護する職員の高齢者の食に対する思いや 考えが反映されている結果であった. 」と述べている。 論文中で、「口腔ケアについては,全施設,歯科医師・歯科衛生士による専門的な口腔ケアを実施していた。施設により,週2回から月1回まで回数にバラツキはあったが,入所者個々に適した口腔ケアを実施してもらうほか,職員に磨き方の指導をしてもらっていた。」とあり施設に歯科医師、歯科衛生士が介入する機会は増加している印象を受けた。 口腔ケアが誤嚥性肺炎発症予防につながることは...

リハビリ病棟における呼吸障害と呼吸リハの必要性

リハビリナース に「 リハビリ病棟における 呼吸 障害と 呼吸 リハの必要性 」 (高橋博達  6(2): 120-125, 2013. )が掲載されている。                                                                             要旨は、「リハビリテーション(以下, リハビリ)病棟に入院となる症例について, 起こり得る呼吸障害の種類と呼吸リハビリの適応について考えてみます. 本稿では, 脳血管障害・脊髄損傷・廃用症候群の症例にしばしば見られる呼吸障害について解説します. 「脳血管障害などによる片麻痺例の呼吸障害」1 片麻痺例にも呼吸障害があるのか? 脳血管障害 などによる片麻痺例(以下, 片麻痺例)では, 上下肢の運動麻痺や感覚障害は生じますが, 呼吸 に直接かかわ る横隔膜や体幹筋の麻痺は生じません . このため, 後述の頚髄損傷のような明確な呼吸障害を生じる根拠は乏しいと思われますが, 実際には 嚥下障害 ・片麻痺・高次脳機能障害・廃用症候群などの影響によって, 種々の 呼吸障害を呈します . 片麻痺例のリハビリ進行に影響を与える呼吸関連の合併症のなかから, (1)嚥下障害 (2)誤嚥性肺炎 (3)呼吸機能障害について解説し...

高齢者の嚥下障害の特徴

音声言語医学に「 高齢 者 の 嚥下 障害の特徴 」(大前由紀雄 54(3): 167-173, 2013.)が掲載されている。                                                 要旨は「高齢者のQOL向上が求められるなか, 嚥下障害を抱えた高齢者の診療を実践する機会が増えている. 高齢者の嚥下障害は, さまざまな原因疾患に関連した嚥下動態の異常に応じて発症するが, 高齢者の抱える身体的・精神的・社会的要因が複雑に絡み合っている. さらに, 加齢に伴う生理的な嚥下機能の低下がその病態を修飾している. 一般的に, 高齢者の嚥下機能検査では, 嚥下反射の惹起遅延や咽頭残留の増加に伴う喉頭流入・誤嚥, ならびに気道防御反射の低下に伴う喀出低下が高頻度に観察される. こうした異常所見には, 加齢に伴う嚥下のメカニズムの変化として, (1)嚥下に関連する 筋力低下 や構造の変化, (2)嚥下に関連する感覚 神経 や運動神経の機能 低下 , (3)嚥下運動を制御する中 枢機構の低下 , (4)身体機能や精神機能ならびに 呼吸機能の低下 , が指摘されている. 本稿では, 嚥下機能検査で観察される異常所見を呈示し, 加齢に伴う高齢者の嚥下機能とそのメカニズムを概説し, 高齢者の嚥下障害の特徴と高齢化社会に向けての嚥下障害の取り扱いを解説する. 」と述べている。   今回の文献で参考になったのは、喉頭蓋谷への残留が舌根運動の低下や喉頭蓋の倒れ込み障害であると述べているところである。通常嚥下前に喉頭蓋谷に食塊があれば、嚥下反射惹起遅延、嚥下...

睡眠時無呼吸と嚥下機能の新たな関連

日本臨床生理学会雑誌 に「 睡眠時無呼吸と 嚥下 機能の新たな関連 」(山口泰弘, 石井正紀, 寺本信嗣 43(2): 71-76, 2013. )が掲載されている。 要旨は「 呼吸調節 と 嚥下活動 の神経支配は, 延髄網様体 において密接に関わりあっている. また, 上気道の筋群への神経活動の低下は, 睡眠時無呼吸を増悪させる因子の一つである. 我々の検討では, 嚥下誘発試験における 嚥下反射の潜時 が, 睡眠時無呼吸症候群の患者において有意に延長 していた. そのほか, 睡眠時無呼吸症候群の患者において, 咽頭粘膜の知覚の低下も報告されている. さらに, 無呼吸に伴う強い胸腔内の陰圧は, 消化液の逆流を増強し, この逆流が不顕性誤嚥を助長する可能性がある. 我々の研究では, 経管栄養を受ける要介護高齢者では, 無呼吸低呼吸指数の増加と3ヵ月間の発熱日数の増加や呼吸器感染症の発症に有意な相関がみられた. 睡眠時無呼吸症候群 は, 心血管疾患への影響のみならず, 上気道防御システムにも影響を与え, 要介護高齢者での肺炎リスクの増加をもたらす 可能性が示唆される.」と述べている。 高齢者は老年症候群にみられるように複数のリスク因子を持ち容易に、廃用症候群に陥る可能性が大きい。今回は嚥下機能低下を睡眠時無呼吸の観点からリサーチした論文である。興味深かったのは睡眠時無呼吸によりGARDが誘発されることであり、高齢者の夜間睡眠状況も確認する必要があると思われた。 嚥下機能低下に関連する因子は多く、一つの原因だけでは述べることは難しいが、メカニズムを一つ一つ解析していくことで、誤嚥性肺炎予防につながっていくと考えられた。                                   ...

要介護高齢者に対する機能的口腔ケアと血漿中活性型グレリン値の関連性

 九州歯科学会雑誌に「 要介護高齢者に対する機能的 口腔ケア と血漿中活性型グレリン値の関連性 」 (木村貴之, 遠藤眞美, 永富絵美, 久保哲郎, 林田裕, 柿木保明  66(2): 29-38, 2012. )が掲載されている。                                                                               要旨は「わが国では要介護高齢者が増加しており, 非経口摂取者も増加していると考えられる. 近年, 要介護高齢者に対して日常生活の維持・向上にもつながる機能的口腔ケアを行うことが重要とされ, 歯科医療従事者が非経口摂取者を含む要介護高齢者に関わる機会が増加してきた. グレリン は, 主に胃から産生されるペプチドホルモンで, 成長ホルモン分泌促進や摂食亢進を担うとされており, 老年医学やリハビリテーションの分野において, これらの生理作用が期待され, 近年注目されてきた. 咀嚼時の口腔刺激は消化管運動を誘発 するとされることから, 口腔ケアによる口腔感覚や唾液分泌がグレリン分泌改善 につながると考えられた. そこで, 非経口摂取の入院中要介護高齢者に対して機能的口腔ケアを実施し, 血漿中活性型グレリン動態との関連性について検討した. 実施...

舌骨上筋群に対する経皮的電気刺激と運動療法の併用治療が嚥下障害患者に及ぼす影響

日本物理療法学会会誌 に「 舌骨上筋群に対する経皮的電気刺激と運動療法の併用治療が嚥下障害患者に及ぼす影響 」(北裏真己, 松井有史, 今井教仁, 杉下周平, 野田哲哉, 三谷剛洋, 庄本康治, 村田和弘, 角谷直彦, 20:27-34, 2013.)が掲載されている。   要旨は「本研究の目的は舌骨上筋群のみに電極を貼付した VitalStim(VS)とShakerEx(SE)の併用治療(CT) が嚥下機能に及ぼす影響を調査することとした. 【方法】 対象は, 3施設に入院中の嚥下障害患者28名(平均年齢: 78.97±10.27歳)とし, VSとSEの併用治療(Combination Therapy: CT)群14名とSE群14名の2群に分けた. 介入は両群ともに30分/日, 5回/週, 4週間実施した. また, 通常嚥下訓練を30分追加し, 合計60分とした. 評価項目は嚥下機能スクリーニングテスト(MASA, FOIS, RSST, MWST), 嚥下造影(定性評価, 定量評価, 舌骨移動距離)とし, 介入前後に測定した. 【結果】 MASA, FOISは両群において, 介入前後で改善していた. 舌骨上方移動距離 の変化率は CT群のほうが大きかった. 【結論】 CTは舌骨上方移動距離を延長させる傾向があったが, 嚥下機能についてはSEと同等であった. 」と述べている。 本研究の考察として、CTで嚥下機能がSEと同等の理由として舌骨前方移動が改善しなかったことを述べている。となると嚥下の改善に関しては舌骨挙上よりも舌骨前方運動を改善することが重要になる。舌骨を前方移動させる舌骨上筋群といえば、オトガイ舌骨筋が出てくる。 今後、オトガイ舌骨筋を刺激して舌骨前方移動を促すアプローチを調べてみたい。              

胃ろう増設高齢者における口腔ケアの与える影響に関する研究

 九州歯科学会雑誌に「 胃ろう増設高齢者における 口腔ケア の与える影響に関する研究 」 (唐木純一, 遠藤眞美, 柿木保明  67(2): 25-32, 2013. )が掲載されている。 要旨は「近年, 日本では胃ろうを造設する患者が増加傾向にあるが, その口腔内細菌叢の菌群構成に関する解析は散見されるのみである. そこで本研究では, 栄養摂取と口腔ケアが口腔内細菌叢 に与える影響を調べる目的で, 病院及び介護施設入所の胃ろう造設者を対象に, 口腔内細菌叢の解析を行った. 慢性期病院入院患者5名, 特別養護老人ホーム入所者2名の合計7名を対象とし, いずれも胃ろうによる経管栄養患者とした. 対象者の属性に加えて, 臨床検査とT-RFLP法による口腔内細菌叢の解析を行った. 口腔内細菌叢の解析を行ったところ, 残存歯数が10本以上 の対象者ではOTU233( Rothia sp.)とOTU308( Streptococcus sp.)の比率が高く, Streptococcus 属, Rothia 属が7割以上を占めていた. 残存歯数が10本以下 の対象者では Streptococcus 属, Rothia 属は4割以下であった. 残存歯数が無く, 口腔乾燥が認められる対象者のうち専門的口腔ケアを受けている者と受けていない者で細菌叢を比較したところ, 専門的口腔ケアを受けている 対象者では Streptococcus 属, Rothia 属の割合が多くみられた. また, 口腔ケアを受けていない対象者に対し, 専門的口腔ケアの介入を行い, 細菌叢の変化の比較を行った. 口腔ケア介入後では介入前と比較して Streptococcus 属, Rothia 属の合計割合は増加していた. 胃ろう造設者 では経口摂取の患者と比較して Streptococcus 属の比率が減り, 口腔内非常在菌が増加すると報告されている. 本調査により, 胃ろう造設者の口腔内細菌叢は, 残存歯数の影響を受けるが, 専門的口腔ケアの介入により改善 されることが示唆された. 」と述べている。 本文献は要旨以外は英語で書かれているため注意を...