高齢者の嚥下障害の特徴

音声言語医学に「高齢嚥下障害の特徴」(大前由紀雄 54(3): 167-173, 2013.)が掲載されている。                     
                          
要旨は「高齢者のQOL向上が求められるなか, 嚥下障害を抱えた高齢者の診療を実践する機会が増えている. 高齢者の嚥下障害は, さまざまな原因疾患に関連した嚥下動態の異常に応じて発症するが, 高齢者の抱える身体的・精神的・社会的要因が複雑に絡み合っている. さらに, 加齢に伴う生理的な嚥下機能の低下がその病態を修飾している. 一般的に, 高齢者の嚥下機能検査では, 嚥下反射の惹起遅延や咽頭残留の増加に伴う喉頭流入・誤嚥, ならびに気道防御反射の低下に伴う喀出低下が高頻度に観察される. こうした異常所見には, 加齢に伴う嚥下のメカニズムの変化として, (1)嚥下に関連する筋力低下や構造の変化, (2)嚥下に関連する感覚神経や運動神経の機能低下, (3)嚥下運動を制御する中枢機構の低下, (4)身体機能や精神機能ならびに呼吸機能の低下, が指摘されている. 本稿では, 嚥下機能検査で観察される異常所見を呈示し, 加齢に伴う高齢者の嚥下機能とそのメカニズムを概説し, 高齢者の嚥下障害の特徴と高齢化社会に向けての嚥下障害の取り扱いを解説する. 」と述べている。
 
今回の文献で参考になったのは、喉頭蓋谷への残留が舌根運動の低下や喉頭蓋の倒れ込み障害であると述べているところである。通常嚥下前に喉頭蓋谷に食塊があれば、嚥下反射惹起遅延、嚥下後であれば喉頭拳上の低下を考えてしまいがち(私自身が)であったが、舌根運動や倒れ込み障害まで考慮する必要があることを学ぶことができた。stageⅡtransportとの関連からも高齢者の舌根の動きを注意深く観察することが重要と思われた。
 

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