胃ろう増設高齢者における口腔ケアの与える影響に関する研究

 九州歯科学会雑誌に「胃ろう増設高齢者における口腔ケアの与える影響に関する研究 」 (唐木純一, 遠藤眞美, 柿木保明  67(2): 25-32, 2013. )が掲載されている。

要旨は「近年, 日本では胃ろうを造設する患者が増加傾向にあるが, その口腔内細菌叢の菌群構成に関する解析は散見されるのみである. そこで本研究では, 栄養摂取と口腔ケアが口腔内細菌叢に与える影響を調べる目的で, 病院及び介護施設入所の胃ろう造設者を対象に, 口腔内細菌叢の解析を行った. 慢性期病院入院患者5名, 特別養護老人ホーム入所者2名の合計7名を対象とし, いずれも胃ろうによる経管栄養患者とした. 対象者の属性に加えて, 臨床検査とT-RFLP法による口腔内細菌叢の解析を行った. 口腔内細菌叢の解析を行ったところ, 残存歯数が10本以上の対象者ではOTU233(Rothia sp.)とOTU308(Streptococcus sp.)の比率が高く, Streptococcus属, Rothia属が7割以上を占めていた. 残存歯数が10本以下の対象者ではStreptococcus属, Rothia属は4割以下であった. 残存歯数が無く, 口腔乾燥が認められる対象者のうち専門的口腔ケアを受けている者と受けていない者で細菌叢を比較したところ, 専門的口腔ケアを受けている対象者ではStreptococcus属, Rothia属の割合が多くみられた. また, 口腔ケアを受けていない対象者に対し, 専門的口腔ケアの介入を行い, 細菌叢の変化の比較を行った. 口腔ケア介入後では介入前と比較してStreptococcus属, Rothia属の合計割合は増加していた. 胃ろう造設者では経口摂取の患者と比較してStreptococcus属の比率が減り, 口腔内非常在菌が増加すると報告されている. 本調査により, 胃ろう造設者の口腔内細菌叢は, 残存歯数の影響を受けるが, 専門的口腔ケアの介入により改善されることが示唆された. 」と述べている。

本文献は要旨以外は英語で書かれているため注意を要する。
ここで述べている。T-RFLP法はTerminal Restriction Fragment Length Polymorphism; 末端標識制限酵素断片多型分析法であり、多種多様で複雑な細菌群集を評価するために使用される。
Streptococcus属は口腔内に常在している菌であり、文献では胃ろう患者では口腔内常在菌が減り、非常在菌が増えると述べている。
文献で行われている専門的口腔ケアとして、スポンジブラシ、歯間ブラシ等を使用し舌、口蓋や粘膜をケアしている。
微生物学知見は専門家でないと、コメディカルスタッフには分からないことが多いが、このような文献を読むことにより、なぜ専門的口腔ケアが必要なのかを知る一助になると思われる。
               

                           
                                                      

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