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認知症における誤嚥性肺炎

老年精神医学雑誌 に「 認知症における誤嚥性肺炎 」(犬尾英里子, 樫山鉄矢, 齋藤正彦 27(4): 421-426, 2016.)が掲載されている。 要旨は「認知症が進行すると嚥下障害を起こし誤嚥性肺炎のリスクが増す . 誤嚥性肺炎は認知症患者の直接の死因として最も多いものである . 認知症の終末期医療と切り離せない誤嚥性肺炎に必要な予防・診断・治療認知症における治療の問題点について提示した. 認知症患者が「本人らしい最期を迎えるために」過少・過剰医療を避け, 適切な治療を受けるためには, 認知症の診断を受けたのちに, やがて発症する合併症を患者自身や家族が理解し, その時期を迎えたときの治療の選択ができることが望ましい.」と述べている。 ではなぜ、認知症が進行すると誤嚥性肺炎のリスクが増すのであろうか。 読んでみると、原因として ①認知症では昼夜逆転のために使用する睡眠薬による覚醒レベルの低下。 ②認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD)の   ために使用される抗精神病薬による過鎮静。 ③その副作用である錐体外路症状。 ④脳萎縮の進行とともにサブスタンスPの減少による咳反射,嚥下反射の機能低下。 が挙げられている。 誤嚥性肺炎を予防する方法として口腔ケアが挙げられているが、 口腔ケアと一言で言っても実施する人によりケアの程度に違いが出る可能性がある。 そのため、口腔ケアを実施する際はマニュアル化し、実施する人によりバラつきが出ないようにする必要があると思われた。

歯科からみた認知症の摂食嚥下障害

老年精神医学雑誌 に「 歯科からみた認知症の摂食嚥下障害 - 食・栄養マネジメントを目的に - 」(平野浩彦 27(3): 277-286, 2016.)が掲載されている。 要旨は「高齢期における摂食嚥下障害は, 脳卒中後遺症を中心にその対応法が検討され, ほぼ標準化されたといえよう. 一方, 認知症の摂食嚥下障害への対応の検討は緒に就いたばかりである. 本稿ではアルツハイマー病を中心に, その進行とともに「いつ」「なにが」起こるのかを歯科的な視点で概説し, さらに 新オレンジプラン (認知症施策推進総合戦略)で示された「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」における歯科の役割についても紹介した.」と述べている。 2015年に発表された新オレンジプランでは、歯科の役割として ①口腔機能向上を通した認知症予防, ②認知症の早期発見 ③認知症の進行に応じた継続的な口腔機能管理 ④認知症対応力向上研修の実施 が求められている。 今後は歯科関係者も認知症にとどまらず、高次脳機能障害全般についてもより勉強していくことが求められると考えられる。

歯科学における周術期口腔機能管理学分野の幕開け - 歯科衛生学からの発信 -

保健つるみに「 歯科学における周術期口腔機能管理学分野の幕開け - 歯科衛生学からの発信 - 」(関谷秀樹, 3-8, 2016.)が掲載されている。 要旨は 「周術期口腔機能管理学 というカテゴリーを歯科学の中の一分野として研究・教育していかなければならない. 管理が必要か否かを判断するためには, 口腔の状態と機能を簡便に評価する必要がある. 既に存在する数多くの診断ツールは個々に量が多く, 口腔管理をすべきか否かを即座に判定するには煩雑である. 簡便な評価ツールは, 歯科学の一部である歯科衛生学体系の中で形成され, 蓄積される医学的根拠に基づいて, Brush upされる必要がある. そして, 得られた成果を集約し, 発信していかなければならない. 本稿では, 鶴見大学短期大学部歯科衛生学科の東邦大学での臨床実習を前に, 当院で行われている口腔外科を軸とした3つの周術期関連チーム医療の実績を供覧し, 周術期口腔機能管理学の礎となるべく, その方向性を提示した. 」と述べている。 本文でも触れているが、周術期口腔機能管理について、漫然と行うのではなく質の向上を目指すことが大事であり、具体的に病院全体で行った結果何がどのように変化したのかデータとして示す必要がある。 医科歯科連携にも関係することであるが、医師からすれば、周術期口腔機能管理を依頼するというのはこれまでの業務にプラスして行うことであり、その手間に見合う成果を記録していくことが大切だと考える。

Diagnosis and evaluation of 100 dysphagia patients using videoendoscopy at a core hospital of a local city in Japan

Odontology に「 Diagnosis and evaluation of 100 dysphagia patients using videoendoscopy at a core hospital of a local city in Japan 」(Yonenaga K, Majima H, Oyama S, Ishibashi K, Tanno H.)が掲載されている。 Abstract  Japan has entered an era of a super-aging population, and given the importance of oral nutrition, the need to evaluate swallowing function has increased.  Herein, we contribute to continued developments in evaluating eating and swallowing functions by describing current videoendoscopy (VE) usage and trends to evaluate and diagnose causes of dysphagia. In all, 100 patients (58 men and 42 women; mean age: 79 years) with suspected dysphagia were enrolled; 15 of these were re-examinations.  Examinations were conducted according to the Japanese Society of Dysphagia Rehabilitation VE examination guidelines for swallowing.  In this study, several patients (77.8 %) with poor vocalization and a saliva reservoir were unable to eat. While evaluating the relationship betw...

サルコペニアとフレイルの違い

入職時に配布された、「 フレイルハンドブック―ポケット版― 」を読んでみた。 サルコペニアとフレイルの違いについて、下記のように記載されている。 フレイル(日本老年医学会): 加齢に伴い、外的ストレスに対し、脆弱性を示す状態。フレイルの定義・診断基準は世界的に定まったものがない。 サルコペニア(欧州サルコペニアワーキンググループコンセンサス): 筋の量的低下と機能的低下(筋力、歩行速度)の双方を含めた概念である。 サルコペニアはフレイルの重要な一因であり、低栄養、活動量の低下などのフレイルの要素と互いに悪循環を形成する。 フレイル予防のためにはサルコペニアを改善することも大事であるということであろうか。 また、加齢に伴う変化にロコモティブシンドロームがある。 ロコモティブシンドローム(日本整形外科学会): 加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまったり、そのリスクの高い状態。 ちなみに認知症予防のための運動と脳活動の組み合わせをコグニサイズという。 加齢に伴う状態に関する用語はここ最近増えている印象であるが、正しく捉え、使用内容に間違いのないようにしていきたい。

ネーザルハイフローの口腔加湿の有効性について

ICUとCCU に「 ネーザルハイフローの口腔加湿の有効性について 」(新福留理惠, 篠崎正博 39(4): 251-254, 2015.)が掲載されている。 要旨は「ネーザルハイフローとNPPV・呼吸器, 中濃度マスク・カヌラ装着前後での□腔内水分量の比較およびROAGスケールでの比較を行った. □腔内水分量は, NHFとNPPV, 呼吸器, 中濃度マスク, カヌラのそれぞれの間で有意に高かった. しかしながら, 口腔内環境の改善には有意差が認められなかった. NHFは他の酸素デバイスと比較し, 口腔内水分量が増加し口腔ケアに有効であることを示唆した. 」と述べている。  今回の論文では、NHF(Nasal High Flow)はNPPV、呼吸器、中濃度マスク、カヌラよりも口腔内水分量は有意であったが、ROAGでは有意差を認めなかったとのことであった。  口腔内の水分量がある程度保たれているのであれば、ROAG全体では有意差がなかったにもしても、項目ごとにみれば何かしらの差がある可能性も考えられる。  現在、ベッドサイドで口腔ケアを実施する機会があるため、NHF、他の呼吸器を装着している方の口腔内の違いについて意識していきたいと思う。

検索内容、回数まとめ

2011年から開始してきた、このブログもようやく240件目に入った。 そのため、一度整理する意味で、検索内容、回数を多い順から並べていく。    1  咳テストと摂食嚥下障害   2011/04/16 3253回 2  口腔アセスメント(ROAG)について   2012/05/05 1682回 3  気管挿管後の反回神経麻痺   2011/06/20 1532回 4  国家試験問題からの嚥下復習   2012/01/03 1383回 5  側孔付き気管カニューレの発声工夫   2011/08/27 1027回 6  気管切開患者への摂食・嚥下リハビリテーション   2011/06/18 830回 7  高齢者の嚥下障害に対する理学療法   2011/12/29 549回 8  人工呼吸器と摂食・嚥下リハビリテーション   2011/07/17 532回 9  誤嚥性肺炎パスの有効性の検討   2012/04/10 374回 10  病院内口腔ケア   2012/02/05 310回  こうして整理してみると、臨床で働いていた時の課題を調べ記載したものが多く検索されている。 これは現場で同じ悩みや問題を抱えている人が多いともとれる。 特に、気管切開や人工呼吸器をしている方への摂食嚥下訓練は最初とまどいがあるかもしれない。  私自身は現在歯科口腔外科に所属しており直接、摂食嚥下訓練に携わる機会は多くないが、摂食嚥下障害のリハビリテーションができる歯科医として、知識・技術のup to dateは行っていきたいと思う。