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セラピストと胸部画像

臨床研修プラクティス に「 胸部単純X線写真の読み方 」(佐藤雅史, 5(8) : 6-15, 2008)が掲載されている。 要旨は「胸部単純X線写真の読影は, まさに単純写真と呼ばれるだけあって単純かつ簡便な臨床業務ですが, 甘く考えて仕事をしていると, 時に痛い目にあってしまいます. しかし, 見落としを恐れるあまり慎重になりすぎてしまうのも問題です. 胸部単純X線写真の読影に自信がないからといって, 胸部CTを安易に依頼するような態度は慎むべきだと思います. そして, 明らかな「見落とし病変」と, 後で見直して初めて病変の存在が分かる「見直し陽性病変」とは分けて考えるべきであり, 絶対に見落としをしない完壁な読影レベルにまで到達することは, どんなに経験を積んでもまず不可能と思っていた方がよいでしょう. 」と述べている。  文中で、覚えやすい視線の追い方として「 小三J読読法 」が紹介されている。 内容は「まず,気管透亮帯と 左右の肺尖部 を「小」の字を書くように視線を追い、次に「 三 」で左右の肺野を上肺野・肺門・下肺野と視線を動かしながら観察する。最後の「 J 」の字で縦隔や心臓,そして横隔膜下に隠れている肺癌などを見落とさないために必要」と述べている。  嚥下障害、特に誤嚥性肺炎患者を担当するセラピストは、胸部画像内容全てに精通している必要はないと思うが、肺炎の有無、場所は画像より読めるようになりたい。肺炎の箇所や程度により、摂食・嚥下リハビリテーションの内容も違ってくると考えられるからである。  今回の「小三J読読法」はセラピストにも応用できる内容であり、ぜひ臨床の場で使用していきたい。

ACLS受講

 本日、AHA ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)を受講してきた。更新だったため、1日で終了したが、本来は2日間のコースである。   今回はメガ・コードメンバーが私以外、全員医師のため「この薬用意しますか」「そろそろモニター確認時間が近付いています」といった、実技試験で本当にありがたいアシストをしていただいた。おかげで、メガ・コード実技試験も通り何とか更新できた。  セラピストは投薬やチームリーダーになることが、まずないためACLS受講は必要ないと考えるかもしれないが、気管挿管や緊張した場面での心電図変化を体験することは大変勉強になると考える。    

頸部聴診について

臨床栄養 に「 食べる機能の検査法 」 (高橋浩二, 111(4) : 450-458, 2007)が掲載されている。  要旨では「咀嚼機能の検査法には,大別して黙黙試料や摂取可能食品より直接判定する方法と,咀嚼に関与すると思われる顎運動,筋活動,咬合などより間接的に測定する方法とがある.現状では,咀嚼機能を総合的に評価する唯一の方法はない.」と述べている。  本文の中で頸部聴診について触れており、手技として「判定精度を上げるためには聴診に先立ち,患者の口腔,咽頭あるいは喉頭内の貯留物を排除しておく.貯留物の排除後,聴診器の接触子を喉頭下方の頸部に接触させ, 患者に呼気を出させ,このときの呼気音を聴診 する.次に準備した嚥下試料を与え,試料が嚥下されるときに産生される嚥下音を聴診する.嚥下が終了したら, 咳漱などの排出行為は行わずに呼気を出させ,呼気音を聴診し,嚥下前に貯留物を排出させた状態で聴診した呼気音と比較する. 指示に従えない患者では貯留物を吸引した後,自発呼吸の呼吸音を聴診し,嚥下試料を口に運んで嚥下させ,嚥下音を聴診してから嚥下後の自発呼吸の呼吸音 を聴診する.」と述べている。  言語聴覚士が嚥下スクリーニングで聴診器を使うかはスクリーニング実施者がどこまで、呼吸音を重視しているかによると言える。水やゼリーの嚥下音のみを聴くのではなくスクリーニング前後の呼吸音や唾液の嚥下音も聴取するとよりスクリーニングの精度も上がるのではと考えられる。

Evaluation of swallowing in acute ischemic stroke patients using both a simple swallowing provocation test and a water swallowing test

脳卒中 に「 簡易嚥下誘発試験と水飲み試験を用いた脳梗塞急性期の嚥下評価 」(神谷雄己, 市川博雄, 栗城綾子, 清水裕樹, 齋藤悠, 笠井英世, 鈴木衛, 佐藤温, 河村満, 32(3) : 254-260, 2010)が掲載されている。 要旨は「【目的】脳梗塞急性期患者に簡易嚥下誘発試験(SSPT)と水飲み試験(WST)を施行し, 嚥下性肺炎発症との関連について検討した.  【対象・方法】急性期脳梗塞患者127例に対し, 食事開始前の入院翌日までにSSPT, WSTを連続して施行した.  【結果】18例(14.2%)が肺炎を発症した. WSTは14例(11.0%)に施行不能であったが, SSPTは全例に施行可能であった. SSPT, WSTいずれかの検査において異常反応, もしくは施行不能であった場合を“嚥下スクリーニング検査異常”とした場合, その他の因子から独立して肺炎発症と有意な関連を認め(p=0.012, オッズ比9.79, 95%信頼区間1.64-58.43), 感度88.9%, 陰性反応的中率97.5%であった. 【結論】 SSPT, WST両検査を併用したスクリーニング法は脳梗塞急性期の嚥下性肺炎発症リスクの評価に有用である . 」と述べている。  急性期で、不顕性誤嚥による肺炎リスクが高いことは、多くの論文で明らかになっている。介入側のポイントとしては、肺炎リスクが高いことが分かった患者にどの段階から経口摂食を開始するかということである。極端に言えば、SSPTを毎日測定し、一定基準値(例えば1秒以内)になったら摂食を開始する等何らかの基準と結びつけられるとよいのではと考える。  実際、研究も進んでいると考えられるが、自分でも考えながら日々の業務に臨んでいきたい。  

Risk management in tracheal suction

理学療法 に「 気管吸引におけるリスク管理 」 (俵祐一, 28(2) : 353-356, 2011)が掲載されている。  要旨は「気管吸引は盲目的に行われるため, 実施の際は, 低酸素血症や不整脈, さらには感染や呼吸困難などさまざまな合併症が発生するリスクがある.そのため, 気管吸引実施前後に適切な評価を行う必要があり, ガイドラインで推奨する手順を遵守し, 実施中のモニタリングおよび観察の徹底も重要となる. 」と述べている。   内容のポイントは「 気道分泌物の除去が不十分な場合に無気肺を起こす可能性がある. これが中枢気道で起こると窒息の恐れがあり,分泌物の移動が不十分な場合には局所的な無気肺を来す.しかし,これ以外に, 過度な吸引にて無気肺を招く可能性もある .吸引により高度の陰圧が生じると肺内ガスを大量に吸ってしまい,肺胞の虚脱を来すためである.よって,適切な吸引行為の徹底はもちろんのこと, 吸引行為を含めた排痰法実施 の前後で聴診による評価を徹底 することが重要である.」  嚥下訓練を実施すると咽頭貯留音がある場合、聴診から痰貯留があると、吸引を容易に依頼・実施しがちであるが、無気肺にさせてしまうリスクを考慮することも大切である。重ねて話すが、言語聴覚士はカリキュラムでCCAは学習するが、胸部聴診の学習は多くないと考えられる。そのため、勤務場所で胸部聴診に詳しい理学療法士等がいたらぜひ、教わることを勧めたい。  もちろん私自身も学習したいと思う。

Review of the Usefulness of lndividual Assessment by Yanagihara’s Grading System

FACIAL NERVE RESEARCH JAPANに「 柳原40点法における各評価項目の検証 」(塚原桃子, 濱田昌史, 小田桐恭子, 飯田政弘, 30 : 32-33, 2010)が掲載されている。 要旨は、「顔面神経麻痺の重症度評価法として 柳原40点法 は長く使用されており, 日本顔面神経研究会でもその使用を推奨している. われわれは昨年の本研究会において, 麻痺初期治療での予後診断における柳原40点法の有用性について報告した. すなわち, 発症3日目以後にスコアが10点以上の不全麻痺であればプレドニゾロン60mg内服治療を行う限り, 麻痺の予後は良好であった. しかしながらこの評点法にも, 評価者によるばらつきが多い, 後遺症の評価ができないなど種々の問題が存在する. そこで今回, 顔面神経麻痺の国際的評価基準の確立を目指し, 柳原40点法のregional systemのどこに利点が存在するのかを突きとめるため, 各評価項目の有用性を検証したので報告する.」と述べている。  対象は、発症後14日以内に受診した16歳から85歳(平均49歳)の顔面神経麻痺新鮮例(Bell麻痺またはHunt症候群)146例を対象としている。  結果は、「 額のしわ寄せ、強閉眼、鼻翼、イー、への字 の5項目においては、3日以内初診群では不全麻痺が多いのに対し、4日以後初診群では高度麻痺の割合が多く、病日とともに麻痺が進行することを反映した合計スコアと同様の結果となった。」と述べている。  時折であるが、hunt症候群の嚥下障害を担当することがある。その際、顔面神経麻痺の評価も実施するが、柳原40点法がカルテに記載されていることがあり参考になる。今回の論文から「額のしわ寄せ、強閉眼、鼻翼、イー、への字」の項目については、よく観察し予後の推察につなげたい。

中学生に対するBLS教育の普及と課題

来月AHA BLSヘルスケアプロバイダー更新の時期を迎える。何か情報をと探していたら以下の文献をみつけた。 日本臨床救急医学会雑誌 に「 中学生に対するBLS教育の普及と課題 」 (大野裕一, 豊田麻里, 京野俊二, 三浦徹, 大久保真, 山本隆, 椎名義明, 峯岸和夫, 榎本幹雄, 木津雅晟, 14(1) : 45-52, 2011)  要旨として「応急手当普及啓発活動は, 全国各地で行われている. しかし, 中学生に対して, 継続的に行っている自治体は少ない. そこで当市では, 平成20年度より市教育委員会と消防本部が協力して, 市内すべての中学校に対するBLS教育を継続事業として始めた. 対象は, 市内すべての中学2年生としている. 生徒にとって, 命の現場で働く者から教育を受けることは, 新鮮であり有意義である. しかし, 教育という観点からすると, 教諭との協力は不可欠である. また, 学校教育におけるBLS教育は, 技術体得だけが目的ではない. BLS教育を通じて, 道徳的教育を担っている . 従来の成人対象の各種救命講習を行うのではなく, 対象者の特徴をよく理解し, 工夫する必要がある. 伝統ある消防が行ってきた普及活動のノウハウを生かしつつ, 教諭と協力して質の高いBLS教育を組織的に行っていくことが, これからの本国の課題である. 」と述べている。  この文献の中で、「中学生は周囲が声をかけないとき自分も声をかけない意見が多かった」ことを述べている。理由として,中学生は「他の人が声をかけないから,自分も声をかけにくいがもっとも多く,声をかけられないと答えた190人中72%(137人)であった」と述べている。  タイトルをみた感想として、中学生からBLS教育を開始するのは時期尚早と考えたが、文献を読んでみると、中学生といった早期から人格形成や生命の大切さを感じることは重要と考えられた。  私自身、急変時の患者生命を守るため、適切に周囲へ声かけできるBLSヘルスケアプロバイダーでありたい。