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感染予防としての口腔ケア

日本顎咬合学会誌 に「 感染予防としての口腔ケア 」(松尾浩一郎 35(1/2): 82-87, 2015.)が掲載されている。 要旨は「1. 高齢社会の中での歯科医療の方向性」本邦では65歳以上の高齢者の人口割合が2013年についに25%に達した. 今後, 団塊の世代が後期高齢者となるいわゆる2025年問題を控え, 医療, 介護では, 高齢者対策が喫緊の課題として動いている. 今後さらに高齢化が加速していく中で, 歯科医療も疾患を持った高齢者に関わる機会が一層増えていくことは間違いない. これからの 高齢者への歯科医療は , 今までのようなう蝕や歯周病への対応から 口腔機能低下への対応へとシフトしていく ことが予想される.」と述べている。 言語聴覚士や歯科衛生士が摂食機能療法の一環で口腔ケアを行う場合、もし担当人数が多すぎて誰を優先すべきか考えた時、本文でも紹介されているOHAT(Oral Health Assessment Tool)を使用する方法もあるのではと思う。 適切な時期への介入を逃すと経口摂取が困難になりQOLの低下につながる可能性があるため、経口摂食が可能そうであるが、点数の高い(より病的)な方の改善を優先するという方法も考慮するとよいと思われた。

高齢者の摂食嚥下障害患者との関わり

Geriatric Medicine に「 高齢者の摂食嚥下障害患者との関わり 」(青山寿昭  54(1): 31-34, 2016.) が掲載されている。 要旨は「高齢化に伴い, 加齢により嚥下機能が低下した高齢者が原疾患の治療を行うことも増えている. 嚥下障害予備軍だった高齢者が入院や治療をきっかけに嚥下障害になる, もしくは嚥下障害を抱えての入院治療も増加している. 治療の妨げになる窒息や肺炎, 栄養障害を発症する前に嚥下障害を発見して関わることで, 原疾患の治療経過も良好になると考える.」と述べている。 身体的観察ポイントのところで、「口腔(乾燥・汚染・口内炎・歯牙・口臭・義歯の有無と適合・腫脹)」とあり、高齢者では唾液分泌機能低下に伴う口腔乾燥が問題になることが多い。 口腔乾燥を改善するためには、唾液マッサージや口腔内保湿があるが、唾液低下を劇的に改善するものではない。 しかも薬剤により更に唾液分泌が低下する可能性があり、今後高齢者の摂食嚥下障害を考える上で唾液分泌低下についてもより意識する必要があると思われた。

加齢に伴い増加する口腔内病変

歯学に「 加齢に伴い増加する口腔内病変 」(田中彰 103(suppl1): 11-15, 2015.)が掲載されている。 要旨は「本邦は, 本格的な超高齢化社会に突入し, 2025年には, 全人口の約30%が65歳以上の高齢者で占められると推測されている. 現在, 将来的な医療, 介護の負担増加に備え, 日常的に介護が不要で自立した生活を送ることができる「健康寿命」の延伸に向けて, 様々な分野で, 介護予防や認知症対策に加え, アンチエイジングに向けた取り組みが行われている. 歯科医学分野でも, 口腔リハビリテーションや口腔ケアをはじめとする種々の対策が進められている. 一方, 加齢による生体の生理的変化 (老化) は, 個体差や栄養, 全身状態などにより差異は生じるが, 避けることのできない現象 である. また, 高齢者は複数の疾病に罹患することが多く, 種々の薬物を適用されている. このため, 高齢者に特徴的に好発する各種病変や, 罹患疾病 (基礎疾患) に続発する合併症などは, 「健康寿命」を左右しかねない重大な因子の一つである.」と述べている。 項目4で薬剤関連顎骨壊死(Medication-related osteonecrosis of the jaw:MRONJ)が述べられている。高齢者で骨粗鬆症でBP製剤を服用している方や化学療法でこれから服用開始をされる方は少なからずいると考えられる。 そのため、問診時にBP製剤の服用をしているかを確認することは必須といえる。もし抜歯等外科的処置を行う際は処置前3カ月、処置後2カ月の計5カ月近く休薬することになり、外科的処置よりもBP製剤服用継続の方が大事であれば、検討する必要がある。 これからの高齢者歯科はタイトルの通り「加齢に伴い増加する口腔内病変」を考慮し、治療に臨むことが重要だと考えさせられた。

認知症における誤嚥性肺炎

老年精神医学雑誌 に「 認知症における誤嚥性肺炎 」(犬尾英里子, 樫山鉄矢, 齋藤正彦 27(4): 421-426, 2016.)が掲載されている。 要旨は「認知症が進行すると嚥下障害を起こし誤嚥性肺炎のリスクが増す . 誤嚥性肺炎は認知症患者の直接の死因として最も多いものである . 認知症の終末期医療と切り離せない誤嚥性肺炎に必要な予防・診断・治療認知症における治療の問題点について提示した. 認知症患者が「本人らしい最期を迎えるために」過少・過剰医療を避け, 適切な治療を受けるためには, 認知症の診断を受けたのちに, やがて発症する合併症を患者自身や家族が理解し, その時期を迎えたときの治療の選択ができることが望ましい.」と述べている。 ではなぜ、認知症が進行すると誤嚥性肺炎のリスクが増すのであろうか。 読んでみると、原因として ①認知症では昼夜逆転のために使用する睡眠薬による覚醒レベルの低下。 ②認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD)の   ために使用される抗精神病薬による過鎮静。 ③その副作用である錐体外路症状。 ④脳萎縮の進行とともにサブスタンスPの減少による咳反射,嚥下反射の機能低下。 が挙げられている。 誤嚥性肺炎を予防する方法として口腔ケアが挙げられているが、 口腔ケアと一言で言っても実施する人によりケアの程度に違いが出る可能性がある。 そのため、口腔ケアを実施する際はマニュアル化し、実施する人によりバラつきが出ないようにする必要があると思われた。

歯科からみた認知症の摂食嚥下障害

老年精神医学雑誌 に「 歯科からみた認知症の摂食嚥下障害 - 食・栄養マネジメントを目的に - 」(平野浩彦 27(3): 277-286, 2016.)が掲載されている。 要旨は「高齢期における摂食嚥下障害は, 脳卒中後遺症を中心にその対応法が検討され, ほぼ標準化されたといえよう. 一方, 認知症の摂食嚥下障害への対応の検討は緒に就いたばかりである. 本稿ではアルツハイマー病を中心に, その進行とともに「いつ」「なにが」起こるのかを歯科的な視点で概説し, さらに 新オレンジプラン (認知症施策推進総合戦略)で示された「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」における歯科の役割についても紹介した.」と述べている。 2015年に発表された新オレンジプランでは、歯科の役割として ①口腔機能向上を通した認知症予防, ②認知症の早期発見 ③認知症の進行に応じた継続的な口腔機能管理 ④認知症対応力向上研修の実施 が求められている。 今後は歯科関係者も認知症にとどまらず、高次脳機能障害全般についてもより勉強していくことが求められると考えられる。

歯科学における周術期口腔機能管理学分野の幕開け - 歯科衛生学からの発信 -

保健つるみに「 歯科学における周術期口腔機能管理学分野の幕開け - 歯科衛生学からの発信 - 」(関谷秀樹, 3-8, 2016.)が掲載されている。 要旨は 「周術期口腔機能管理学 というカテゴリーを歯科学の中の一分野として研究・教育していかなければならない. 管理が必要か否かを判断するためには, 口腔の状態と機能を簡便に評価する必要がある. 既に存在する数多くの診断ツールは個々に量が多く, 口腔管理をすべきか否かを即座に判定するには煩雑である. 簡便な評価ツールは, 歯科学の一部である歯科衛生学体系の中で形成され, 蓄積される医学的根拠に基づいて, Brush upされる必要がある. そして, 得られた成果を集約し, 発信していかなければならない. 本稿では, 鶴見大学短期大学部歯科衛生学科の東邦大学での臨床実習を前に, 当院で行われている口腔外科を軸とした3つの周術期関連チーム医療の実績を供覧し, 周術期口腔機能管理学の礎となるべく, その方向性を提示した. 」と述べている。 本文でも触れているが、周術期口腔機能管理について、漫然と行うのではなく質の向上を目指すことが大事であり、具体的に病院全体で行った結果何がどのように変化したのかデータとして示す必要がある。 医科歯科連携にも関係することであるが、医師からすれば、周術期口腔機能管理を依頼するというのはこれまでの業務にプラスして行うことであり、その手間に見合う成果を記録していくことが大切だと考える。

Diagnosis and evaluation of 100 dysphagia patients using videoendoscopy at a core hospital of a local city in Japan

Odontology に「 Diagnosis and evaluation of 100 dysphagia patients using videoendoscopy at a core hospital of a local city in Japan 」(Yonenaga K, Majima H, Oyama S, Ishibashi K, Tanno H.)が掲載されている。 Abstract  Japan has entered an era of a super-aging population, and given the importance of oral nutrition, the need to evaluate swallowing function has increased.  Herein, we contribute to continued developments in evaluating eating and swallowing functions by describing current videoendoscopy (VE) usage and trends to evaluate and diagnose causes of dysphagia. In all, 100 patients (58 men and 42 women; mean age: 79 years) with suspected dysphagia were enrolled; 15 of these were re-examinations.  Examinations were conducted according to the Japanese Society of Dysphagia Rehabilitation VE examination guidelines for swallowing.  In this study, several patients (77.8 %) with poor vocalization and a saliva reservoir were unable to eat. While evaluating the relationship betw...