投稿

肺疾患患者の摂食・嚥下スクリーニング

臨床栄養に「 肺炎をともなった肺気腫患者(COPD)の栄養管理について 」が(岩川裕美, 川見員令, 吉田理香, 三上貴子, 星野伸夫, 赤羽理也, 佐々木雅也, 大澤真, 荒木信一, 柴山将之, 116(1) : 49-55, 2010)が掲載されている。  要旨は「65歳男性 2004年, 咳・痰を主訴に気管支炎喘息の疑いにて近医で投薬治療された. 2005年9月に当院呼吸器内科を受診し, 非定型抗酸菌感染(MAC)と肺気腫 と診断され, 投薬治療されていた. 2009年3月に入ったころから労作時の呼吸困難感が増強し, 食思も低下, 胸部レントゲンで肺炎を疑われ, 3月27日に入院となった. 肺炎とMACに関して, 点滴治療・酸素療法が行われていた. 4月15日に突然呼吸困難となり, 酸素流量増量でも効果がなかった. 翌日には意識レベル低下を認め, BiPAPによる換気を行うも酸素化は悪く, 挿管され人工呼吸器管理となった . 4月21日に気管切開が施行された. その後, 経口摂取が中止され, 当分人工呼吸器での管理が続くことが予測されること, NGチューブの自己抜去を頻回に認めることにより, PEGからの栄養が検討された . 」と述べている。最終的には「嚥下機能としては普通食レベルに改善も嘔気続く」とあり、嘔気があるものの、嚥下機能改善がみられている。  この論文ではPEGによる栄養補給から摂食・嚥下リハビリテーションを進めたことで、改善が促進されたことが報告されている。PEGの適否に関してセラピストの評価がDr.の方針を決定することもあり、摂食・嚥下スクリーニングは包括的に実施する必要あると言える。   個人的には、BDTが実施できる状況かどうかが一つの嚥下スクリーニングの目安と考えられる。カフを抜くことが危険であれば、間接訓練主体で実施した方がよいのではと思う。

開口障害のリハビリテーション2

開口障害について関心があるので、脳神経疾患以外で開口障害を発症する疾患を探していたら、以下の文献が検索された。 ICUとCCU に「 誤嚥性肺炎を合併したcephalic tetanusの1例 」 ( 渡辺逸平, 佐藤一範, 下地恒毅, 20(9) : 791-796, 1996)が掲載されている。  要旨は「左眼瞼上部の受傷によって発症した68歳男性の 破傷風 を経験した. 初発症状は開口障害で, 嚥下障害に伴う誤嚥性肺炎 を併発し, 当院ICUへ搬送された. 痙攣はみられなかったため筋弛緩薬を使用せずに経過観察していたところ, 左顔面神経麻痺と右動眼神経麻痺を生じ, cephalic tetanusと診断された. 破傷風自体は第3期へは移行せず, 肺炎も治癒した. 軽度顔面神経麻痺と開口障害は残存していたが, その他の症状は順調に回復した. cephalic tetanusは希な病態 で, その発症機序について一定の見解はない.」と述べている。  実際、破傷風に対して嚥下訓練を実施した報告は少ない。これは栄養管理はN-GtubeやPEG等で管理が最優先されるためと考えられるが、破傷風自体が稀な疾患のため摂食・嚥下リハビリテーションまで回ることが少ないためと思われる。  いずれにしても、稀な疾患による摂食・嚥下リハビリテーションで介入したら、積極的な報告が望まれる。私自身も可能な限り発表し、後進の参考になるようにしたい。

Diagnosing of Dysphagia Using Acoustic Characteristics of Swallowing and Expiratory Sounds

昭和歯学会雑誌に「 嚥下音・呼気音を利用した嚥下障害の客観的評価 」(高田嘉尚, 高橋浩二, 中山裕司, 宇山理紗, 平野薫, 深澤美樹, 南雲正男, 26(1) : 68-74, 2006.)が掲載されている。  要旨は「本研究は 嚥下音と呼気音の音響特性を利用して嚥下障害を客観的に鑑別 することを目的として企画されたものである.  対象は嚥下障害を有する頭頚部腫瘍患者26名である.VF検査中嚥下音ならびに嚥下直後に意識的に産生した呼気音をわれわれの方法によって採取し,嚥下と呼気産生時の動態のVF画像とともにデジタルビデオレコーダーに記録した.嚥下音と呼気音の音響信号はわれわれの音響解析コンピュータシステムによって分析を行い,嚥下音については持続時間を計測し,呼気音については1/3オクターブバンド分析により,中心周波数63Hzから200Hzまでの6帯域の平均補正音圧レベルを求めた.嚥下音と嚥下後に意識的に産生した呼気音92サンプルずつについて,これらの分析が行われ,VF所見との比較が行われた.  結果,嚥下音の持続時間では,Abnormal群(誤嚥あるいは喉頭侵入のVF所見を示した群)はSafety群(前記のVF所見のない群)に比べ,持続時間が延長する傾向がみられ,呼気音の補正音圧レベルでは,Abnormal群はSafety群に比べ,音圧レベルが大きい傾向を示した.次に 嚥下障害を鑑別するために嚥下音の音響信号の持続時間の臨界値として0.88秒 を設定し,同様に 呼気音の音響信号の補正音圧レベルの臨界値として17.2dBを設定した .嚥下音と呼気音の分析値の両者がともにこれらの臨界値を超えた場合,そのときの嚥下は障害があると評価した.  これらの評価とVF所見との判定一致率は感度82.6%(38/46),特異度100%(46/46),陽性反応的中度100%(38/38),陰性反応的中度852%(46/54),判定一致率91.3%(84/92)となった.以上の結果より 嚥下音の持続時間と呼気音の補正音圧レベルは嚥下障害を検出するために利用できることが示唆された. 」と述べている。  嚥下音については、頸部聴診法が用いられるが、前後の呼気音についても重要である旨はこれまでの文献でも述べられている。今回の論文は嚥下音の強弱より、持続時間に重きを置いて述べられ...

口唇口蓋裂による嚥下障害

補綴について調べていたら以下の文献があった。 THE KITAKANTO MEDICAL JOURNALに「 口唇裂口蓋裂に対するチーム医療 」(根岸明秀 , 51(6) : 401-403, 2001)が掲載されている。 要旨は、口唇裂口蓋裂は出生率が低下した現在でも0.2%の割合で発生している, 本疾患に対する治療は出生時より成人にいたるまで長期にわたるものであり, 各領域の口唇裂口蓋裂専門医によるチーム医療が理想とされ, 欧米のみならず日本においても実践されつつある.初回手術までの歯科口腔外科的管理口唇裂口蓋裂児は, 出生時より審美障害のみならず吸畷障害による哺乳困難を認める. そのため, 初診時に上顎の型を採り, 直ちに Hotz床 を装着させる. 本装置は口蓋裂部を軟性レジンにより閉鎖するレジン製口蓋床であり, 哺乳時の鼻腔への漏出を防止し, 嚥下圧形成に役立つだけでなく, 粘膜面を調整することにより正常な顎発育を誘導可能 とし, さらに正しい舌位の獲得を可能ならしめる装置である」と述べている。  口唇口蓋裂による嚥下障害にはHotz床が選択され、言語聴覚士国家試験にも出題されている。口唇口蓋裂手術までの間は経管栄養になることがある。その際、管が裂傷部を押し付けたりする可能性があり、管の位置には留意を要すると考えられる。 

脳画像の見方と脳機能

 本日、昭和大学の石原健司先生講演会に参加してきた。演題は「脳画像の見方と脳機能」であった。ということで、今回は石原先生の文献を調べてみた。 Modern Physicianに「 脳の画像診断で, 脳の部位をどのように同定したらよいのですか? 」(石原健司, 30(1) : 54-57, 2010)が掲載されている。  要旨は、「病変部位を表現する際には, 大雑把には前頭葉や側頭葉などの脳葉, 細かくは脳溝または脳回を用いることが多い. ここでは代表的な脳溝, 脳回を同定する方法を提示する. 脳溝と脳回は, 脳を外表から眺めた際に, 明瞭な構造物として認識される. 脳表面に走る溝が脳溝であり, 脳溝と脳溝の間に存在する大脳皮質の隆起が脳回である. 大脳のすべての脳回と脳溝には名称が付されている. これらの名称は系統的なものであり , たとえば前頭葉では脳回が上から上前頭回, 中前頭回, 下前頭葉回の順に存在し(上前頭回を第一前頭回, 以下第二, 第三の順に接頭語を付す立場もある), それらの間に上前頭溝, 下前頭溝が存在する. また中心溝の前方を中心前回, その前方の上下に走る脳溝は前中心溝と呼ばれる. 上・中・下などの接頭語を付された脳回や脳溝は, 場所をイメージしやすいが, ほかに, 海馬傍回や縁上回も, 字面から容易に場所を想像できる .」と述べている。  本日の講演会で印象に残ったのは、やはり本文中でも述べられている 中心回の同定方法である。方法は3種類あり、組合わせて使用することで、精度が向上するとのことであった 。現在、脳血管障害以外の嚥下障害患者を担当させていただいているが、もちろん既往に脳血管障害の方もおり、脳画像を見る機会は多い。今回の講演内容を参考にし明日からの臨床に役立てたい。

人工呼吸器と摂食・嚥下リハビリテーション

JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION に「 ICUにおける呼吸管理とリハビリテーション 」( 小谷透, 19(5) : 426-432, 2010)が掲載されている。 要旨は「人工呼吸の基本戦略は, 人工呼吸による肺障害を回避するための肺保護換気と, 温存した自発呼吸を活用するために必要十分な補助を行うことである. 補助の内容を自発呼吸評価により適切に判定し実行することが重要である. 呼吸リハビリテーションも自発呼吸補助のためのより直接的な方法である. 人工呼吸を行うことになった原病の治療と適切な人工呼吸と呼吸リハビリテーションが三位一体となって行われるようチーム医療 が推進されねばならない.   人工呼吸開始から離脱までを3つのフェーズに分け, それぞれの時期における病態に合わせたリハビリテーションを行う. 具体的には, 可動域制限防止, 肺胞リクルートメントや気道クリアランスに適した体位管理, さらには車いすへの移乗や座位・歩行訓練等, 離床に向けた準備のためのリハビリテーションが行われる. 」と述べている。  急性期病院では、人工呼吸器管理下の患者にも摂食・嚥下リハビリテーションを実施することがある。その際、人工呼吸器の状態になっているか(例えばCPAPなのかSIMVなのか)や、呼吸音を確認し、摂食・嚥下リハビリテーションを進めていく。意識レベルが低下であれば、VAP予防にoral careを実施し意識が回復していれば、直接訓練が可能か主治医と相談し実施していく。  基本的に摂食・嚥下リハビリテーションは言語聴覚士の担当が多いが、人工呼吸器に関する用語、内容を理解していないと、話やカンファレンスについていけないことが考えられる。人工呼吸下の摂食・嚥下リハビリテーションに不安があるうちは、看護師や理学療法士と一緒に実践していくことが安全と言える。私自身も今後も自己研鑽していきたいと考える。

NST専門療法士とセラピスト

臨床病理レビュー   に「 栄養サポートチーム関連する資格(NST専門療法士) 」(森嶋祥之, (144) : 113-115, 2009)が掲載されている。 要旨は「栄養サポートチーム(NST:nutrition support team)に関連する学会認定資格は, 日本静脈経腸栄養学会認定の「栄養サポートチーム(NST)専門療法士」と, 日本病態栄養学会認定の「栄養サポートチーム(NST)コーディネータ」がある. 「栄養サポートチーム(NST)専門療法士」には, 日本静脈経腸栄養学会の学会員である栄養士, 薬剤師, 看護師および臨床検査技師を対象に, 主として静脈栄養・経腸栄養を用いた臨床栄養学に関する優れた知識と技能を有することを認定している. 」と述べている。 JSPENのHPに今年の NST専門療法士合格者が掲載されている。セラピストでは、理学療法士3名、作業療法士1名、言語聴覚士6名、歯科衛生士1名合格している。 言語聴覚士の合格者が多いのはNSTチームに所属している割合の多いことが影響していると考えられる。 これからの時代はセラピストが栄養状態を考えないリハビリは無くなると思われる。私自身もいずれNST専門療法士を取得して、栄養を理解した嚥下リハを実践していきたい。