Diagnosing of Dysphagia Using Acoustic Characteristics of Swallowing and Expiratory Sounds

昭和歯学会雑誌に「嚥下音・呼気音を利用した嚥下障害の客観的評価」(高田嘉尚, 高橋浩二, 中山裕司, 宇山理紗, 平野薫, 深澤美樹, 南雲正男, 26(1) : 68-74, 2006.)が掲載されている。
 要旨は「本研究は嚥下音と呼気音の音響特性を利用して嚥下障害を客観的に鑑別することを目的として企画されたものである.
 対象は嚥下障害を有する頭頚部腫瘍患者26名である.VF検査中嚥下音ならびに嚥下直後に意識的に産生した呼気音をわれわれの方法によって採取し,嚥下と呼気産生時の動態のVF画像とともにデジタルビデオレコーダーに記録した.嚥下音と呼気音の音響信号はわれわれの音響解析コンピュータシステムによって分析を行い,嚥下音については持続時間を計測し,呼気音については1/3オクターブバンド分析により,中心周波数63Hzから200Hzまでの6帯域の平均補正音圧レベルを求めた.嚥下音と嚥下後に意識的に産生した呼気音92サンプルずつについて,これらの分析が行われ,VF所見との比較が行われた.
 結果,嚥下音の持続時間では,Abnormal群(誤嚥あるいは喉頭侵入のVF所見を示した群)はSafety群(前記のVF所見のない群)に比べ,持続時間が延長する傾向がみられ,呼気音の補正音圧レベルでは,Abnormal群はSafety群に比べ,音圧レベルが大きい傾向を示した.次に嚥下障害を鑑別するために嚥下音の音響信号の持続時間の臨界値として0.88秒を設定し,同様に呼気音の音響信号の補正音圧レベルの臨界値として17.2dBを設定した.嚥下音と呼気音の分析値の両者がともにこれらの臨界値を超えた場合,そのときの嚥下は障害があると評価した.
 これらの評価とVF所見との判定一致率は感度82.6%(38/46),特異度100%(46/46),陽性反応的中度100%(38/38),陰性反応的中度852%(46/54),判定一致率91.3%(84/92)となった.以上の結果より嚥下音の持続時間と呼気音の補正音圧レベルは嚥下障害を検出するために利用できることが示唆された. 」と述べている。
 嚥下音については、頸部聴診法が用いられるが、前後の呼気音についても重要である旨はこれまでの文献でも述べられている。今回の論文は嚥下音の強弱より、持続時間に重きを置いて述べられている。実際、長い嚥下音は嚥下機能低下所見の一つであるが、正常嚥下時間より長いかどうかで判断していたが、今回の論文で時間設定があったことは今後臨床の参考になると言える。

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