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autoimmune disease and dysphagia

日本臨床免疫学会会誌 に「 特定疾患対策研究事業における強皮症の臨床調査個人票の疫学集計 」 (坂内文男, 森満, 石川治, 遠藤秀治, 新海浤, 26(2) : 66-73, 2003)が掲載されている。 [Summary]We conducted an epidemiological study of systemic sclerosis in Japan using the records of patients who had been registered to receive public financial aid. A total of 10,956 patients were registered as having systemic sclerosis in 1999. We statistically analyzed the data on the patients, including sex, age, major symptoms, and laboratory findings. We also made contingency tables in order to evaluate the correlations of the data. Our study estimated that the male/female ratio was 1:7.3. The mean ages of male and female patients were 58.8 and 58.5 years old, respectively. The major symptoms were as follows:Raynaud's phenomenon 92.4%, skin sclerosis 94.7%, dyspnea 29.9%, and dysphagia 32.2%. With respect to specific antibodies, antinuclear antibody was present in 92.2%, antitopoisomerase I antibody in 27.5%, anticentromere antibody in 37.7%, and antiribonucleoprotein antib...

elderly's ingestion and swallowing traning

日本胸部臨床 に「 高齢者の摂食と嚥下訓練 」 (藤谷順子, 69(5) : 407-417, 2010)が掲載されている。 要旨は、「高齢者は加齢により, および疾患や廃用症候群より低栄養・嚥下障害・誤嚥を来しやすく, 複合病態により悪循環に陥りやすい. 高齢者の嚥下障害の対応にあたっては, 嚥下訓練のみに頼らず, 栄養や全身体力, また夜間の唾液誤嚥や胃食道逆流への対応, 口腔ケアも含めた幅広い対応が必要である. 主治医には, 全体を見てマネージメントをし, 患者や家族の意向も尊重した臨床決定をしていく必要がある.」と述べている。  文章中に注目した箇所として、「高齢者の加齢に伴う嚥下障害,しかもすでに誤嚥性肺炎を起こして消耗・衰弱している症例や,低栄養や呼吸予備能が破綻している症例において,「 訓練」だけで短期間で嚥下障害が劇的に改善することには限界がある。 このような症例では,療法士に「訓練」を処方する傍ら,「訓練以外」の諸条件のマネージメントを行って,トータルに,嚥下障害のその症例に与える悪影響を最小にすることを目指すということが必要である。また, 食事の禁止や再開の方針,非経口摂取の選択など,命とQOLに関わる決断に携わるのも医師であり,訓練をスタッフに任せたとしてもその決断まで任せることはできない。」  臨床現場では、セラピストに食事形態だけでなく中断後再開を即断でアドバイスを求められることも少なくない。しかし、職域をわきまえた対応をすることが重要であり、嚥下障害は生命に直結する障害であるため、軽々しい判断をしないことが重要と言える。

嚥下内視鏡使用による咽喉頭所見

The Japanese Journal of Rehabilitation Medicineに「 嚥下内視鏡から見た摂食・嚥下の運動学 」(藤島一郎, 47(10) : 699-703, 2010)が掲載されている。  要旨は「摂食・嚥下は食物の認知から口への取り込み,咀噛・食塊形成,咽頭への送り込み(口腔期),咽頭通過(咽頭期),食道通過(食道期)という一連の流れに沿って行われる.嚥下内視鏡(以下VE)はそのうちの咽頭期評価に絶大な威力を発揮する.咽頭期は外から見えず,VEは臨床場面で手軽に検査ができ,誤嚥や咽頭残留といった重要な所見を評価できる.」と述べている。  内容でVEでしか分からない内容として、「内視鏡で上から見た喉頭蓋の形状には大きく分けて 平型とΩ型 がある.」ということである。更に、「筆者の臨床経験では,NGチューブを入れるときに 平型では感覚が鋭敏な喉頭蓋喉頭面にチューブが当たりやすく違和感が強く 、Ω型喉頭蓋ではチューブが喉頭蓋喉頭面に当たりにくい」と述べている。  実際、VEを観察する時は、骨棘による咽頭狭窄に眼がいきがちであったが、喉頭蓋の形態も留意してみる必要を学ぶことができた。

頸部聴診法の臨床応用

歯界展望 に「 頸部聴診法の臨床応用 」(清水良昭, 116(2) : 358-359, 2010)が掲載されている。 要旨は「頸部聴診法(cervical auscultation)は, 食塊を嚥下する際に咽頭部で生じる嚥下音ならびに嚥下前後の呼吸音を頸部より聴診し, 嚥下音の性状や長さ, 呼吸音の性状や発生するタイミングを聴取して, 嚥下障害を判定する方法である. 頸部聴診法は非侵襲的に, 聴診器1つで誤嚥や喉頭侵入の疑いをスクリーニングできることから, 在宅や施設入所要介護高齢者の普段の嚥下状態のモニタリングに適している.」と述べている。  文中で「研究のほとんどは加速度ピックアップやマイクロフォンを用いたものであり, それらを 使用して録音した嚥下音は実際に聴診器から聞こえる音と違っているという指摘 もある. 」と述べ、機械と実測の差異について述べている。  特に重要な点として「 加速度ピックアップを用いた音響分析では, 嚥下音ははっきりとした特徴的な2つのクリック音 , すなわちIDS(Initial Discrete Sound:最初のクリック音)と, FDS(Final Discrete Sound:最後のクリック音), およびその間の食塊の流れの音BTS(Bolus Transit Sound)に分けられるが, 3つの音は非常に短い時間に発生するので, 聴診器では1つの音に聞こえる . 」と述べている。  実際、臨床では嚥下音の強弱や異常な音(バブリングサウンド等)で判断することが多い。 以前も述べたが、嚥下音のみで判断するのではなく、嚥下の前後の音も確認することが重要と言える。今回の報告では、その重要性を再認識させてくれたと言える。  

気管挿管後の反回神経麻痺

ナーシング・トゥデイに「 事例紹介とCNからのアドバイス(3) 術後の反回神経麻痺に伴う嚥下障害 」 (安江友世 24(8) : 35-38, 2009)が掲載されている。 要旨は「反回神経麻痺とは、 声帯運動に関与する神経・筋・関節などの障害により, 声帯が動かなくなってしまうことを「声帯麻痺」と言います.  このうち反回神経の障害が原因とされる「声帯麻痺」を, 「反回神経麻痺」としています. 反回神経は迷走神経の分枝で, その長い走行の途中で障害を受ける機会が多く, 特により長い左側に障害が多いと言われています. また反回神経麻痺には, さまざまな原因がありますが, なかでも多く遭遇するのが胸部大動脈瘤や肺がんなどの縦隔病変, 甲状腺などの頭頸部がん, 食道がんの手術, 気管挿管 によるものです.    一側性の麻痺では気息性嗄性や嚥下障害が主体 ですが, 両側の反回神経麻痺では呼吸困難に陥ることがあり, 気管切開による気道確保が必要 となることも多く, 呼吸の観察も重要です. 「反回神経麻痺による摂食・嚥下障害」 私たちは, 食物を飲み込む時, 声帯を内転し声門を閉鎖させることによって食物や唾液が肺に入るのを防いでいます. 」と述べている。  実際に一側性の反回神経麻痺で、VF・VEがない施設では、嚥下時の左右差で判断することになることが多いと考えられる。この場合、左右差は嚥下機能のスクリーニングで判断できるが、回復までの期間は、予測が難しいことがある。また、左右差にしても、どちらに優位に起こりやすいかは、もしかしたら文献に記載されているかもしれないが、まだ読んでいない。  今後統計をとってみるのも、一つの研究かと考えられた。

医科歯科連携2

  Geriatric Medicine に「 高齢者医療現場での歯科医科連携 」(渡邊裕, 47(12) : 1569-1574, 2009)が掲載されている。 要旨は、「最近, 摂食・嚥下障害への対応や様々な疾患の治療を行っている患者への口腔管理を行うことで医科と連携し, 存在を示してきている病院歯科がある. 摂食・嚥下障害への対応は誤嚥や低栄養を防ぎ, 誤嚥性肺炎やそのほかの疾病の予防や治療に貢献し, 合併症なく早期退院を達成させることができる. また, がんや糖尿病など様々な疾患において, 歯科による口腔管理の有用性 も明らかになってきており, 医療が高度になるほど, 歯科医科の連携は重要となってきている. 今後, 歯科がその専門性をもって医科と連携していくことは, 医師や看護師の負担を軽減し, 高齢者に安全と安心の医療を提供し, その生活と生命を支えることにつながると思われる」と述べている。  文中で関心を持ったのは、歯科は「う蝕や歯周病,義歯の治療といった 形態回復医療から ,摂食・嚥下機能などの 機能回復医療へ転換 することを促されたのである.」とある。  ここで、考えられることは、例えば病院内で実施される摂食機能療法について、院内歯科医師が指導、管理することで機能療法に貢献できるのではないかということである。  極端な話をすれば、評価・実施計画書を歯科医師が作成し、実施は言語聴覚士や看護師が実践し歯科医師はマネジメントするのも一つの方法である。  自分が歯科医師になる頃の医科歯科連携に注目していきたいと思う。

気管切開患者への摂食・嚥下リハビリテーション

柳川リハビリテーション学院・福岡国際医療福祉学院 紀要に「 気管切開患者への嚥下に対する訓練および評価上の問題点* ―脊髄小脳変性症における検討 ―」(佐藤伸宏, 6 : 66-70, 2010)が掲載されている。 要旨は「今回, 気管切開をしている脊髄小脳変性症の症例に対して, 気管切開孔の閉鎖を念頭にいれた嚥下訓練を実施した. 口唇・舌の運動機能の低下による食塊形成の不良, および, 食塊の保持に障害がある本症例において, 気管切開による影響で, 咽頭期嚥下に障害が生じた症例を経験した. また, 下気道保護の目的でカフなしカニューレからカフ付きカニューレへの変更が余儀なくされた. 本症例の問題点は(1)気管切開が嚥下やコミュニケーションに多大な影響をおよぼす, さらに, (2)検査, 訓練内容の制限, (3)誤嚥や呼吸困難の危険性, などである. 気管切開の症例に対し評価・訓練を行う上での言語聴覚士の役割, および今後の課題について検討を加えた.」と述べている。  内容は症例報告とカフなし、カフ付カニューレの特徴が記載されている。実際、臨床例では何らかの理由により声帯正中固定となり、気管切開術が施行される例もある。今回の記載には無いが、カニューレ装着後の症例では、痰量の増加もみられる。痰の咽頭貯留対応も気管切開患者への嚥下リハビリテーションにおいて重要と考える。