日本歯科衛生学会雑誌に「
手術直前に実施したプラークフリー法による食道癌術後肺炎予防の有効性」(森川知昭, 木崎久美子, 河田尚子, 花岡宏美 2(2): 43-47, 2008. )が掲載されている。
要旨は「手術後の合併症には種々のものがあるが, 肺炎は最も重篤な合併症のひとつである. 中でも人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia;VAP)は致死率が高く, VAPへの対策は大侵襲手術後管理を担うICUにおいてきわめて重要な課題である. VAP予防対策のひとつとして, 米国CDCのガイドラインにおいては, 口腔ケアの重要性が示されている. しかしながら, 経口的に気管内挿管された人工呼吸管理中の患者に対する口腔ケアは, 必ずしも効果的に行われているとは言い難い. その理由はいくつかあり, まずチューブがあるためケアに使用する器具の到達性が悪く, 誤抜管の危険性もあり, 技術的に容易ではない. また, ケア時の出血や, 菌血症が恐れられる傾向にある. さらに, 時間とマンパワーが慢性的に不足しており, 口腔ケアは後回し, あるいは不充分になりがちである. そして, 絶食中であることに加え, 鎮静剤, 利尿剤などの薬剤の副作用で唾液分泌が著明に低下する. 」と述べている。
プラークフリー法とは、歯垢を完全に除去できれば、再形成には時間を要するため次からの口腔ケア実施時間が短縮できる方法である。そのため、逆に絶食中でも歯垢が残存していると、歯垢中の微生物は病原性の高い菌叢へ移行する可能性がある。プラークフリー法は、医科歯科連携において大変有用な方法と思われるが、多くの病院は院内に歯科がないのが現状である。そのため、プラークコントロールを誰が実施するのかが、問題になる。現在スケーリング等予防処置は歯科衛生士が行っているが、病院内では研修を受けた看護師や言語聴覚士が実施できると業務の効率化につながりよいと思われた。それが難しければ病院内歯科衛生士の配置義務等定めてもよいのではと考えられた。
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