咳テストと摂食嚥下障害

日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌に「不顕性誤嚥のスクリーニング検査における咳テストの有用性に関する検討」(若杉葉子, 戸原玄, 中根綾子, 後藤志乃, 大内ゆかり, 三串伸哉, 竹内周平, 高島真穂, 都島千明, 千葉由美, 植松宏2(2):109-117,2008)が掲載されている。
 要旨は「現在行われている多くのスクリーニングテストは誤嚥のスクリーニングテストであり,不顕性誤嚥(SA)をスクリーニングするこどは難しいとされている.今回,我々はクエン酸の吸入による咳テストを用いたSAのスクリーニングの有用性について検討を行った.
 対象は何らかの摂食・嚥下障害が疑われた18歳から100歳までの患者204名(男性131名,女性73名,平均年齢69.90±11.70歳).超音波ネブライザより1.0重量%クエン酸生理食塩水溶液を経口より吸入させ,1分間での咳の回数を数える.5回以上であれば陰性(正常),4回以下であれば陽性(SA疑い)と判定し,VFもしくはVEの結果を基準とし,SAのスクリーニングの感度,特異度,有効度陽性反応的中度,陰性反応的中度を計算した.
 咳テストによるSAのスクリーニングの結果は,感度0.87,特異度0.89,有効度0.89,陽性反応的中度0.74,陰性反応的中度0.95であった.次いで主要な原疾患別に咳テストの有用性を検討した.脳血管障害患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.76,特異度0.82,有効度0.79,陽性反応的中度0.73,陰性反応的中度0.84であった.頭頚部腫瘍患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度1.00特異度0.97,有効度0.98,陽性反応的中度0.93,陰性反応的中度1.00であった.神経筋疾患患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.83,特異度0.84,有効度0.84,陽性反応的中度0.56,陰性反応的中度0.95であった.呼吸器疾患患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.67,特異度0.81,有効度0.76,陽性反応的中度0.67,陰性反応的中度0.81であった.気管切開のある患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.71,特異度1.00,有効度0.78,陽性反応的中度1.00,陰性反応的中度0.50であった.認知症患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度:1.00,特異度:1.00,有効度1.00,陽性反応的中度:1.00,陰性反応的中度1.00であった.
 以上より,クエン酸吸入による咳テストはSAのスクリーニングに疾患によらず有用であると考えられた.」
と述べられており、いずれの疾患においても高い感度、特異度を示している。現在はハンディタイプのネブライザー使用による簡易版も学会で発表されている。
 SAに対しての考え方は様々な考え方があり、一概に言えないこともあるが、夜間の不顕性誤嚥リスク管理に対し咳テストは有効と考えられた。

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