感染症対策としての口腔ケアを考える

難病と在宅ケアに「感染症対策としての口腔ケアを考える」 (渡邊裕 20(6): 53-56, 2014.)が掲載されている。
要旨は「2012年の日本の総死亡者数は約120万人で, うち65歳以上の高齢者の死亡者数は約100万人, 総死亡者数に占める65歳以上の高齢者の割合は8割以上となっている. 一方, 肺炎のよる死亡者数は全死亡者の1割の約12万人で, うち96.8%が65歳以上の高齢者となっている. 日本の高齢者の肺炎の80%以上が誤嚥性肺炎との報告から推計すると, 65歳以上の高齢者の約1割は誤嚥性肺炎で死亡しているということになる. 誤嚥とは, 病原性微生物を含む唾液などの口腔・咽頭内容物, 食物, まれに胃内容物を気道内に吸引することで生じる肺炎を誤嚥性肺炎という. 誤嚥性肺炎の多くは, 不顕性誤嚥(無意識のうちに細菌を含む口腔・咽頭分泌物を微量に誤嚥する現象)による細菌性肺炎である. 不顕性誤嚥の危険因子としては大脳基底核の脳血管障害, 神経筋疾患および認知症などの脳疾患, 寝たきり状態, 口腔内不衛生, 胃食道逆流, 抗精神病薬の多剤使用などが挙げられる. 」と述べている。

文中に「歯や補綴物の観察では、動揺が無くても、歯の頸部(歯肉に近い部分)に大きなう蝕がある場合、ケア中にう蝕の部分で破折し、歯冠部(歯の頭の部分)が脱落、誤嚥する可能性がある。さらに大きな歯冠補綴物(クラウンやブリッジなど)の場合、歯が金属に覆われおり、中の状況が判別できず、動揺など前触れもなく脱落することもあり、これら大きな歯冠補綴物には十分な注意が必要であり、可能な限り歯科専門職の診査を受けるべきである。」と述べている。
これまで、言語聴覚士として勤務していた時は、歯の動揺については、「揺れているな」としか感じていなかったが、歯学部に通い歯の動揺度があることを知り、また歯周検査も行うようになった。
ベッドサイドでの歯科職種による口腔内スクリーニングは口腔ケアを実施していくうえで必要になるであろうし、誤嚥予防アプローチの幅が広がる可能性につながると思われた。

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