摂食・嚥下障害患者への対応を考える前に必要な知識の整理

日本補綴歯科学会誌に「摂食・嚥下障害患者への対応を考える前に必要な知識の整理―摂食嚥下の生理学を中心に― 」(井上誠, 5: 254-264, 2013.)が掲載されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/ajps/5/3/_contents/-char/ja/ここから雑誌のHPへ行きFreeで論文が読めます。
要旨は「摂食・嚥下障害に対する臨床を行う上で, 歯科や口腔機能のもつ可能性を考慮することは非常に重要である. 本稿では, 周知の摂食・嚥下リハビリテーションにおける機能評価や訓練内容についてではなく, 食べることを全身機能と考えること, 歯科独自の視点の必要性を理解するための基礎的知識について解説する. また, これまでのほとんどの機能研究が咀嚼または嚥下のみに特化していたが, 口腔機能・咀嚼機能と嚥下機能の機能連関に注目することの面白さを考え, 臨床への足掛かりとするためのヒントにする. 最後に, 口腔ケアをどのように考えるかについての更なる知識の整理をしたい. 」と述べている。
 文中で、食塊形成を目的とする咀嚼運動を担う中枢部位は,
(1)食べ物を口にいれて臼歯部に送り込み,咀嚼運動を開始させる準備をする大脳皮質や連絡する大脳基底核などの皮質下領域
(2)咀嚼などのリズミカルな運動を行うための指令を出力する大脳皮質咀嚼野
(3)リズムを直接作り出している脳幹の働きによる.
と述べている。
摂食・嚥下過程は以前は、5期モデル、今はプロセスモデルと言われ、連続的に捕食から嚥下とつながっていくため、問題解決は多職種を必要とする。特に脳血管疾患は文献のように中枢神経が損傷しやすく、従命も入りにくく、麻痺も存在するため、解決困難になる可能性が高い。
臨床に出ると、なぜ嚥下困難になるかを現象で判断しる場合もあるが、時折なぜ嚥下困難になるかその原因を解剖・生理学的考察することも必要と思われた。

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