誤嚥性肺炎パスの有効性の検討

日本クリニカルパス学会誌に「包括的かつ個別化介入を主眼とした誤嚥性肺炎パスの有効性の検討」(岡本真紀乃, 荒幡昌久, 森河尚江, 田中正康, 南眞司 14(1): 5-10, 2012. )が掲載されている。
要旨は「高齢者誤嚥性肺炎は, 多様な病態に起因する難治性疾患であり, 肺炎治療のみでは不十分である. 当院では, 2007年に本症に対して「スクリーニングシート」を用いたチームによる包括的かつ個別化された介入を行い, その予後を改善し得た. 検証の結果, (1)患者の問題点を多職種で綿密に把握する, (2)情報を共有して問題点を整理する, (3)重点化した対策を行う, というオーダーメイド的治療(個別化介入)が重要であることが判明した. そして, 2009年にスクリーニングシートを改良し, これを中心とした誤嚥性肺炎パスを作成し, チームによる運用を行ってきた. 今回, 誤嚥性肺炎パスの効果を検証するため, DPC病名が誤嚥性肺炎である当院の入院例110件を対象に, パス使用群(55件)と非使用群(55件)の間で比較検討を行った. 退院時転帰は両群間に有意差はなかったが, パス使用群で在院日数の短縮(25.5±15.2日対37.2±34.2日, P=0.045)と在宅復帰率の改善傾向(96.8%対80.8%, P=0.083)を認めた. また, 入院14日目までの診療報酬点数の検討では, リハビリテーションに係る点数のみがパス使用量で有意に高かったが, 総点数には差がなかった. この結果は, 誤嚥性肺炎の診断直後からパスに従って各職種が効率的に介入し, リハビリテーションをはじめとする個別化介入が奏功したことを反映しており, パスの有効性が証明された.」と述べている。
誤嚥性肺炎パスの検討であり、大変興味深く読むことができた。以前PEG造設パスの文献を参照したことがあるが、リハビリテーション介入を含む誤嚥性肺炎パスの有効性に関する報告はあまり多くない印象である。 着目は、パスの使用による在院日数減少も重要であるが、医師・看護師・セラピスト・栄養士が記載することで、誤嚥性肺炎治療への参加、アプローチを明確にしている点と考える。また、パスの記載内容が多すぎると治療・介入に影響を及ぼすことから、記載内容はある程度厳選している。誤嚥性肺炎治療は他職種アプローチのため、今後もこのようなパスに関する報告を調べ参考にしていきたい。

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