食道期の嚥下障害

日本気管食道科学会会報に「食道期嚥下障害に対する外科治療の問題点」(川田研郎, 太田俊介, 岡田卓也, 星野明弘, 宮脇豊, 鈴木友宜, Jirawat Swangsri, 中島康晃, 西蔭徹郎, 永井鑑, 河野辰幸 62(2): 95-96, 2011.)
要旨は「食道期嚥下障害の基質的疾患としては食道悪性腫瘍, 良性腫瘍, 逆流性食道炎, 憩室, web, 異物などがあり, それぞれの病態により治療法は異なる. 良性疾患の場合は内科的治療にて改善が見込めるものも少なくないが, 嚥下障害をきたす食道悪性腫瘍の多くは手術を必要とする. 主に食道癌外科治療の問題点につき考察する. 切除不能食道癌へは根治的化学放射線治療後のサルベージ手術や, 食道バイパス術をいかに安全に行うかが課題であるが, 切除可能食道癌へも, 手術侵襲の大きさから, 患者背景によっては根治的化学放射線治療が選択されることもあり, 手術の安全性はもちろんのこと, QOLを考慮した術式の選択と術後の嚥下障害にも配慮が必要である. 根治的化学放射線治療後の局所再発やリンパ節再発へもなるべく侵襲が軽い治療が許容されるようになり, サルベージESDや転移リンパ節のみの切除など, 患者背景や希望を考慮して治療を選択し, 良好な予後を得ている症例も経験する. 」と述べている。
 食道期嚥下障害の影響として、メンデルソン症候群やGERDによる誤嚥性肺炎がある。特にGERDによる嚥下障害はスクリーニング上からは分かりにくい。そのため、誤嚥性肺炎患者にスクリーニングを実施し嚥下反射惹起遅延が誤嚥性肺炎の原因と考えていたら、VF上で食道蠕動運動低下によるGERDを認めることがある。そのため、誤嚥性肺炎患者がいたらGERDの可能性を疑い必ずギャッジアップ対応を実施することで、GERDによる誤嚥性肺炎を予防することができる。
 

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