摂食回復支援食について

日本咀嚼学会雑誌に「摂食回復支援用食品米飯と普通米飯がヒトの咀嚼行動に及ぼす影響の比較」(塩澤光一, 飯田良平, 森戸光彦21(1): 49-56, 2011.)が掲載されている。
 要旨は「摂食回復支援食の米飯がヒトの咀嚼行動にいかなる影響を及ぼすかについて調べるために, 健康な10名の被験者(男性7名, 女性3名, 平均年齢29.7歳)に摂食回復支援食の米飯(あいーと(R);A試料)と通常の米飯(C試料)を咀嚼させた. 被験者の咬筋から試料咀嚼時の筋電図(EMG)を導出した. 嚥下直前の米飯食塊を回収しそのテクスチャーを解析した. 咀嚼開始期の咬筋EMG振幅はA試料咀嚼のほうがC試料咀嚼に比べて有意に小さな振幅を示した. 嚥下までの咀嚼回数はA試料咀嚼(5.6±2.1回)のほうがC試料咀嚼(29.7±3.8回)に比べて有意に小さな値を示した. 嚥下直前の食塊の硬さは, A試料食塊のほうがC試料食塊に比べて有意に小さな値を示したが, 食塊の付着性と凝集性は両試料食塊間で有意な差は認められなかった. これらの結果から, 摂食回復支援食米飯(A試料)は, 通常の米飯(C試料)に比べて少ない咀嚼回数で嚥下可能な食塊が形成される咀嚼しやすい食品であることが示された. 」と述べている。
 この「あいーと(R)」は私自身夏頃から知ったが、見た目は常食であるが、試食した際すぐ口腔内でばらけ嚥下しやすく驚いた記憶がある。最近になり、医師の間でも浸透してきたらしく摂食嚥下困難者のカルテに「あいーと(R)を勧める」といった記載が散見されている。
 この文献でも述べているが摂食嚥下リハ困難さの一つに食事形態がある。嚥下機能と食事形態意欲に乖離があると拒食になることが多い。経口摂食レベルの嚥下機能は残存しているが、拒食から低栄養になり経管栄養や輸液管理になることがある。
 少しでも食事形態による拒食を改善するため金銭的に可能な範囲(あいーと(R)は値が張る)で摂食回復支援食を勧めたいと思う。

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