高齢で嚥下障害のある患者における栄養経路の決定

心身医学に「高齢で嚥下障害のある患者における栄養経路の決定に関する臨床倫理的検討」 (鈴木智, 中野弘一, 坪井康次, 筒井末春51(7): 650-658, 2011.) が掲載されている。
要旨は「医療行為を行うかどうかの決断において, 多くの医師は決断の中で臨床倫理的検討をしているが, 記述のフォームや習慣がなく, それを記載していない. 医学を医療に適応させるだけでなく, 心理, 社会面に対してさまざまな配慮をし, 患者の改善を目指しているという医療の多面性を伝えるためにも, 臨床倫理学的な検討をし, 倫理学的用語を用いて記載することは今後の医療の中で必要となろう.
  この研究の目的は, 嚥下障害のある高齢者の栄養経路選択における臨床倫理的問題を抽出することである. このため, われわれは高齢の嚥下障害のある2症例に対しJonsenらによる症例検討シートを作り, 検討を行った. 治療方針は症例1では経鼻経管栄養を, 症例2では経口摂取を選択した. 2例とも意思決定能力はないと判断し近親者を代理として相談した. 代理の決断が自己決定によるように配慮した. 方針の決定に際し, 代理は決断に責任を感じていることなどが判明した.」と述べている。
 この論文でのポイントは「臨床倫理的検討の結論はその医療行為をやっていいか,悪いかを決めるということではなく,意思決断に至る過程で自律的決断をするために選択しやすい説明をしたり,家族の感じている重圧感に配慮しつつよいコミュニケーションを目指すといった配慮をしてきたかというプロセスが重要であるという印象を得た.」という内容と思う。
 栄養管理について、急性期であれば経口・EN・PPNといった方法があり主治医が適切な方法を選択するが、経口摂食困難患者の御家族に対し経口摂食困難理由を見聞することがある。その際、セラピストは主治医とともに経口摂食困難患者の御家族意思決定過程負担を少しでも軽減する協力体制が求められると改めて考えさせられた。

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