嚥下障害と誤嚥性肺炎


医歯薬出版より「誤嚥性肺炎-抗菌薬だけに頼らない肺炎治療」(藤谷順子・鳥羽研二編著)が出版されている。
 序文で「誤嚥性肺炎は,症状が非定型的で,発熱,気道症状がないことがある一方,予後が不良である.したがって,誤嚥性肺炎を生じやすい嚥下障害を早期に検出し,摂食・嚥下リハビリテーションや誤嚥対策を行うことが,高齢者肺炎の予防・治療の点から重要と考えられる.誤嚥の正確な評価については,嚥下造影が現状のゴールデンスタンダードであり,その後の治療方針の決定のために有用である.しかし,高齢者では,多数例が誤嚥リスクを有すると考えられ,これら全員に嚥下造影を行うことは,時間,労働力,医療費の諸点で無駄が大きい.現段階で,多数例の高齢者に実施可能な有用な嚥下スクリーニング方法は確立されていない.」と述べている。
 最後に「本書が,嚥下障害のチーム医療には熱心だが,一旦肺炎を起こすと内科,呼吸器科,老年科などに任せきりにしている嚥下訓練関係者や,嚥下障害は医師の関わることではないと誤解している多くの臓器別医師への啓蒙の一書になれば幸いである.」と述べ嚥下障害への関心を高める啓発をしている。
 ここから考えられることとして、病院に入院する高齢者は誤嚥性肺炎リスクが高いということである。極論をすれば入院高齢者は最初は他疾患で入院しても入院中に誤嚥性肺炎を起こすと疑って発症前から摂食嚥下リハビリテーションや運動アプローチを実施することが求められるのではないかと思う。
 もちろん入院患者全員にアプローチすることはマンパワーの面で無理があるため、病棟看護師やNSTと連携し高齢者の誤嚥性肺炎予防が重要なことを知識のある先生方が啓発することが大切と考える。
 いずれ私自身も自己研鑽を積み啓蒙の一書の一端になりたいと思う。

コメント

このブログの人気の投稿

気管挿管後の反回神経麻痺

国家試験問題からの嚥下復習

大脳基底核と運動の関わり