医療ケア関連肺炎(HCAP)について

分子呼吸器病に「新しい肺炎の概念-「医療ケア関連肺炎」の臨床」 (進藤有一郎, 長谷川好規 15(1): 58-65, 2011. )が掲載されている。
要旨は、「 日常診療において肺炎は最もよく遭遇するcommon diseaseの1つであり, 1980年以降死因別死亡第4位のsevere diseaseである. その死亡率は近年増加傾向にあり, その適切な治療戦略をどのようにしていくべきか, 非常に重要な課題である. 肺炎のカテゴリーは今まで市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)と院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)の大きく2つのカテゴリーに分けられていたが, 2005年に改訂されたATS/IDSA(米国胸部学会/米国感染症学会)のガイドラインでは医療ケア関連肺炎(health-care-associated pneumonia:HCAP)という新しい概念が加わった. 今までこの領域では, 高齢者肺炎, 誤嚥性肺炎という言葉がよく使われるが, 本稿では, 初期抗菌治療を決定するうえでの新たな肺炎の概念としてのHCAPについて, 自験成績を中心に引用しながら解説する」と述べている。
 HCAPの位置づけは、CAPとHAPの中間に位置しているとある。HCAP患者の背景は、医療ケア関連と言うだけあり、重複含めて「過去90日以内に,2日以上の入院歴がある」が55例(39.0%),「介護施設・長期滞在型療養施設入所者」が86例(61.0%)と多く,ついで「在宅注射患者」23例(16.3%),「30日以内の維持透析歴」10例(7.1%),「在宅での創傷治療」3例(2.1%)であった.また,誤嚥,アシデミア(pH<7.35),貧血,低Na血症患者にも多いことを示している。
 リハビリテーションでは「誤嚥性肺炎」が用語としてよく用いられるが、HCAPについての理解も深めることが、結果として誤嚥性肺炎予防につながると考えられる。

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