嚥下障害外来の必要性

日本耳鼻咽喉科学会会報に「嚥下障害に対する外来での対応法の試み」(西山耕一郎, 永井浩巳, 臼井大祐, 栗原里佳, 八尾和雄, 廣瀬肇, 113(7) : 587-592, 2010)が掲載されている。
 要旨は「耳鼻咽喉科外来における,嚥下障害患者の対応法を検討した.75歳以上の81例
に対して嚥下内視鏡検査を行うと,誤嚥群は26例(32%),全例が咽頭期に主因があると判定した.誤嚥群26例に対して,誤嚥しにくい食事内容を具体的に提示し,ペーシングや一口量を調整し,姿勢や食具を指導して,嚥下指導と間接嚥下訓練を行った.症例によっては増粘剤の使用を指導した.一年以上嚥下指導を行いながら経過観察した.一年以上嚥下指導をしながら経過観察できたのは17例(65%)であった.この17例のうち,痰が減少したのは10例(59%),痰のからみが消失したのは4例(24%)であった.ムセがあった11例中,ムセが消失したのは2例(18%)
であった.さらに体重の増加を4例(24%)に認めた.全例,気管支炎を合併し,副鼻腔炎を11例(65%),胃食道逆流症を3例(18%)合併していた.
 嚥下機能低下を早期に診断し,適切な対応策を行えば,嚥下性肺炎を軽症化させることを示した」と述べている。
 また、「嚥下障害を主訴として,耳鼻咽喉科一般外来を受診する患者はほとんどいない.ところが耳鼻咽喉科診療所において問診とスクリーニング検査を行うと,75歳以上の約3割で嚥下機能が低下して誤嚥していると報告した」と述べている。
 ポイントは外来で嚥下障害を専門に扱う病院が少ないことが挙げられる。嚥下障害により、肺炎等を合併したら入院だが、嚥下困難になったという理由で入院する例は神経疾患が併発していない限り少ない。嚥下障害の早期改善のためにも嚥下障害専門外来設置増加が望まれる。
 

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