dysarthriaに対するfacilitation効果

音声言語医学に「構音器官の運動性から考えるその評価法と新しいDysarthria治療の可能性」 (三枝英人, 48(3) : 231-236, 2007)が掲載されている。
要約は「現在のところ,すべての運動障害性構音障害(以下,dysarthria)に対して有効な構
音訓練法はいまだに確立されていないというのが実情である.一方,嚥下障害の患者に対して,
構音訓練を行うと嚥下が改善するといったことがしばしば経験される.このことから,ある同
じ器官を使用する別の反射性運動を誘発することで障害された機能が促通
されうるということ
が示唆される.また,構音運動そのものに反射性制御機構が存在するならば,それを誘発する
ことでより有効な機能訓練が行える可能性が高い.今後,そういった観点も含めたdysarthria,
構音機能,構音器官に対する臨床的および基礎的な研究が必要である.」
 文中で「舌根の高さにおいて横舌筋が上咽頭収縮筋・舌咽頭部と太い筋線維をもって
連続し,リング状の形態を呈している.上咽頭収縮筋と椎体前面との癒合は比較的強いので,リング状の筋肉が収縮することで,舌が後方に移動し,同時に咽頭の収縮が起こる.舌前方運動は,オトガイ舌筋の舌根へ向かう筋線維の筋活動が主体となる.両者は,舌根付近で両筋の筋線維間に存在する筋紡錘により,互いに拮抗的に,また反射性に制御されうる.」と述べ姿勢による発音の比較をし、「母音/a/発声時には後屈位で有意にオトガイ舌筋の筋活動が増強し,母音/i/発声時では前屈位になると両者の筋活動が有意に減少することが判明した」と述べている。
 筆者はdysarthriaに対し姿勢による構音変化や咀嚼運動における舌と下顎の反射性運動等の存在を報告することにより、より解剖生理学的なアプローチの展開を述べている。
 dysarthriaに対しつい障害されている発音や構音器官のみを対象にアプローチしているが、もっと広い視野からアプローチする必要性を感じた。

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