嚥下に関する神経

音声言語医学に「神経機序からみた嚥下とその病態」(進武幹, 41(4) : 320-329, 2000)が掲載されている。
要約は「咽頭期嚥下の神経機序は嚥下の惹起に必須である咽喉頭粘膜の知覚受容給血は自由神経終末,味蕾,数珠状神経終末が広く分布し,これらの神経の起源は上喉頭神経および舌咽神経である.これらの両神経の中枢投射は延髄の弧束核の間質亜核に収束されている.咽頭期嚥下は反射性に惹起されるが,これらは延髄のパターン形成により制御され,嚥下関連ニューロンは弧束核のtypeⅠニューロン,小細胞性網様体のtypeⅡニューロン,疑核のtypeⅢニューロンに
分類された.神経機序からみた嚥下障害の病態は皮質延髄路の障害による嚥下惹起遅延型,脳幹の障害すなわち嚥下のパターン形成障害による嚥下停滞型,咽頭期嚥下惹起不全型に分類し病態について考察を加えた.」
 いくつかのポイントは本文で述べられているが一つピックアップした。
 「咽喉頭粘膜に分布する神経終末には形態的および機能的性質によりいくつかの異なるタイプに分類され,それらのもつ機能にふさわしい形態をとり嚥下や気道防御反射に合目的な分布様式をもっている.これらの神経の起源は舌咽神経および迷走神経から分枝した上喉頭神経下枝および迷走神経の咽頭枝の知覚神経終末が部位によって異なった密度で広く分布する.これらの終末が食塊などにより刺激されるとこの知覚情報は延髄弧束核に伝達され脳幹から末梢へと反射回路を形成している.」
 とあり、逆にいえば、上喉頭神経や迷走神経の知覚が障害されると嚥下をしても感覚低下から惹起遅延を引き起こす可能性があることである。嚥下評価では、喉頭挙上や舌骨の動きに注目しがちであるが、食塊通過の感覚も確認する必要があることを考えさせられた。
 

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