舌癌と摂食嚥下障害

日本口腔科学会雑誌に「舌癌切除後の口腔機能に関する臨床的検討」(金城亜紀, 大部一成, 白砂兼光, 55(3) : 153-161, 2006)が掲載されている。
内容は「口腔癌の治療成績は著しく向上しており,当施設における口腔癌患者の5年生存率は80%を上回るようになってきている。ゆえに今日の口腔癌治療は延命を目的とするのみならず,患者のQuality of Life(QOL)を十分に考慮したものへと進歩している。特に口腔癌の治療においては手術を主体とするため,術後の口腔機能の重要性がクローズアップされるようになってきた。このような背景から最近多くの施設で術後の口腔機能を積極的に評価している。
 しかしその基準や評価法については確立されていない。今回われわれは2002年から2005年までに当科にて切除を行った舌癌症例のうち術前術後にわたり経時的に口腔機能を評価しえた症例を分析した。また症状が固定したと考えられる術後1年以上経過した症例について患者へのアンケートを行い,患者の満足度を把握するのと同時に客観的評価との関連性を検討した。」
 と述べ、機能評価については1舌運動機能2口腔機能全般3嚥下機能について評価している。
 1舌運動機能、松永らによる舌運動機能評価法を用いた。2口腔機能、口腔機能全般に関してはRogersらによる評価方法、3嚥下機能窪田らによる30ml水飲みテスト,才藤らによる反復唾液嚥下テスト,嚥下造影(VF)検査によって嚥下機能を評価した。結論は、「本研究により切除範囲に応じた口腔機能低下から回復に至るまでの詳細な過程が明らかとなった。本研究に用いた機能検査のうち反復唾液嚥下テスト以外の検査は,舌癌切除症例の機能検査法として有用であった。」と述べており、舌癌の評価は口腔期から咽頭期まで全般に評価が必要な旨が示されている。
 今回、舌癌をテーマにしたもので嚥下評価に関する報告は多いが、嚥下リハを実施した報告は少ない。舌癌への嚥下リハ報告が多く望まれる。

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