急性期における嚥下スクリーニング

日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌に「急性期病院における嚥下障害患者の予後予測 ―初回スクリーニング検査からみた帰結と不顕性誤嚥の検討」 (前田葉子, 柴田斉子, 符田かおり, 菅俊光, 吉田清和, 14(3) : 191-200, 2010)が掲載されている。
「要旨 【目的】急性期病院における嚥下障害患者の初回嚥下スクリーニング検査から経口摂取の帰結が予測できるか否かを検討した.また,スクリーニング検査では見落としが問題とされる不顕性誤嚥(以下SA)についても考察を加えた.
対象と方法】対象は,2 年間に言語聴覚士(以下ST)が嚥下リハを施行し初回評価時に反復唾液嚥下テスト(以下RSST)と改訂水飲みテスト(以下MWST)を行った入院患者314 名(平均年齢67.1 歳).ST介入終了時の栄養摂取方法から,経口摂取確立群と補助栄養群の2 群に分け,初回RSST 回数と初回MWST点数より経口摂取の帰結を調べた.また,開始時意識レベル,嚥下造影検査(以下VF)結果,嚥下内視鏡検査(以下VE)結果,顕性誤嚥およびSA の有無,気管切開の有無,臨床的重症度分類の変化について,カルテより後方視的に調べた.
結果】経口摂取確立群は187 名(59.6%),補助栄養群は127 名(40.4%)であった.経口摂取確立群は年齢が若く,開始時に意識清明である者が多かった.RSST 3 回以上かつMWST 3 点以上の患者の87.9% が経口摂取を確立することができた.しかし,MWST 実施者中4 点の7.5%,5 点の6.8% にSA の見落としが生じていた.SA 患者の疾患・病態には仮性球麻痺,開胸術後,頭頸部癌化学放射線治療後,脳幹病変,神経変性疾患,皮膚筋炎等があり,ST 介入前の肺炎発症例25 名,反回神経麻痺例14 名,気管切開例16名が含まれていた.
考察】急性期病院の限られた入院日数の中では,適切な予後予測に基づいた効率的な嚥下リハの提供が不可欠である.RSST およびMWST は嚥下障害のスクリーニングに有効とされるが,経口摂取確立の予後予測にも有用であることがわかった.しかし,スクリーニングに際しては,SA の見落としに十分注意を払い,SA を起こしうる疾患や病態にはVF・VE で精査を行う必要がある.」
 実際現場で勤務すると急性期病院ではVF・VEが不十分な体制下でも嚥下リハビリテーションを実施しなければいけない状況がある。今回の論文ではMWSTでプロフィールが高くても過信せずSAの可能性を考慮する必要がある旨を述べている。SA検出には現在実施されているものとして
咳テストやSSPTがあるが、組み合わせて評価することも一つの方法と考えられた。

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